大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)は残すところあと2回となった。三谷幸喜氏の脚本が冴えわたる同ドラマで、役者としての円熟味を存分に発揮した小栗旬にインタビュー。ダークヒーローへと変貌していった北条義時をどのように演じたのか。また、姉・政子役の小池栄子ら共演者について話を聞いた。
平安末期から鎌倉前期において、源平合戦や鎌倉幕府誕生、執権政治に至るまでの権力争いを描いてきた『鎌倉殿の13人』。最初は平凡で心優しい若者に過ぎなかった義時が、源頼朝(大泉洋)との出会いを経て、時代の激流にもまれながら、武士の頂点へと上り詰めていった。
容赦ない粛清劇にて、ダークヒーローへと変貌していった義時。「大河に入る前は、北条義時という人を名前しか知らなかった」という小栗は、「『吾妻鏡』にもある通り、義時がやってきたことはなかなかすごくて、悪者に思えるかもしれないけど、今回の大河を経て、実は義時って孤独な男だったというイメージを新たに受け取ってもらえたのではないか」と語る。
小栗は義時の変化を見事なグラデーションを持って演じてきた。「前半ではものすごく明るくて真っ直ぐな義時を見せました。でも、本当は何も変わってないのに、彼は執権という立場になったことで、大きな矛盾を抱えたまま、前に進まなければいけなかった。だからこそ、面白い人間像に育てあげることができたんじゃないかとも思います」
「闇堕ちした」とネットで騒がれた義時だが、小栗は「鎌倉時代に、自分と自分の家族のことしか考えない人たちが多いなか、どういう風に政を進めていけば、鎌倉幕府が上手く成り立っていくのかを、ずっと考えてきたのは義時だけだったんじゃないかと。僕自身は強くそう思っていました」と擁護する。
本日11日放送の第47回「ある朝敵、ある演説」では、後鳥羽上皇(尾上松也)が義時追討を命じ、承久の乱が勃発。そして、尼将軍・政子が御家人たちに向けて行う、歴史的に有名な大演説が描かれる。
思えば義時と政子の姉弟は、一蓮托生とまではいかなくても、鎌倉のために尽力してきた同志でもある。
「義時にとって政子は、良いことは良い、悪いことは悪いという基準が、昔から変わってない人なんです。だから、義時が最後の最後まで守りたかったものは一体なんだろうと考えた時、今回の『鎌倉殿の13人』においての話ですが、政子の純粋さと、昔の自分を見ているような息子・泰時(坂口健太郎)だったのではないかと思います」
確かに、野心の塊だった頼朝の洗礼を受けた義時が、頼朝亡きあと、だんだん“頼朝化”していく一方で、政子や泰時は、ある意味、常に人として正しい道を選ぼうとしてきた。
「義時も本来ならそういう考え方だったけど、執権となって以降はそんな風にいられなくなってしまいました。泰時は義時にたてついたりもしますが、義時としては息子を100%守りたい、ここで屈折させるわけにはいかないという思いが強かったのではないかと。義時を演じていくなかでも、そこは肝だったかもしれない。また、そういう役を真っ直ぐに演じてくれた栄子ちゃんと坂口くんが、非常に頼もしかったです」