歴史的金星を再びもぎ取った余韻が残る取材エリア。日付が2日に変わったなかで、逆転勝利に抱く率直な思いを求められた吉田は「すごくうれしいです」と語った後に声を途切れさせた。

「……何か語彙力がなくてすみません。ただ、今日は夜も遅いので、しっかりと休んで明日から。ただ、またみんなと一緒にサッカーができるのは本当にうれしいですよね」

吉田のサイズは身長189cm体重87kgとフィールドプレーヤーでは最も大きい。豪快なイメージを抱かせるようで性格はきめ細かく、常に周囲への配慮も忘れない。だからこそ前任者の長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)から、代表のキャプテンを託された。

「自信を持っていい勝利だと思いますけど、自分たちの目標はあくまでもベスト8の壁を破ることなので。ここで気を緩めず、そしてここで満足せずにもうひとつ勝って、自分たちの手で新しい景色を見たい。それが日本のサッカー界の発展に、必ずつながると思っている」

勝って兜の緒を締めよ、とばかりに吉田はまだ通過点だと表情を引き締めた。それでも、夜が明けたばかりの日本国内の状況を思い浮かべながら、ワイルドな風貌をちょっぴり緩めた。

「例えば10年後ぐらいに代表へ新しく入ってきた選手たちのなかで、子どものころに『ドイツやスペインとの試合を見たから』というケースが増えれば、それも日本のサッカー界の進歩だと思う。そのときには僕がベテランたちの首を切りたいなと思います」

補足が必要な言葉を最後に残しながら、吉田は足早に去っていった。要は10年後には自分が代表監督を務め、子どものころにテレビ越しに見たカタールでの激闘に触発され、将来の夢を描いた日本代表選手たちの居場所を作るために、ベテラン選手を整理すると言いたかったのだろう。

吉田のジョークには追加すべき点もある。ドイツやスペインに続いて、前回ロシア大会準優勝の難敵クロアチア代表との決勝トーナメント1回戦でも日本が勝てば――初めてのベスト8進出をかけた4度目の挑戦は、5日18時(日本時間6日0時)にキックオフを迎える。