不完全燃焼に終わったドイツ戦を淡々と振り返った久保は、連勝が期待されながら0-1で返り討ちにあったコスタリカ代表との第2戦を出番がないまま終えている。それでもポジティブな姿勢を失わないのは、独特の思考回路を常にフル稼働させているからだ。

「サッカーはミスをして当たり前なので、いちいち落ち込まない方がいいと僕は思っている。ミスをしちゃったと試合中に何度思い出しても、自分にとって得なことは何もないので」

日本特有の減点方式ではなく、外国人によく見られる加点方式でものごとを考える姿勢は、強豪バルセロナの下部組織で心技体を磨いた十代前半に導かれたものといっていい。たくましさを感じさせる視線は、久保にとっての第二の母国となるスペインとの最終戦へすでに向けられている。

「いまの日本の顔ぶれなら、チャンスがない試合はないと思うので。決定力と言うとちょっとありきたりの表現になっちゃうけど、そのチャンスをしっかり決め切るところを大事にしていきたい。多少ボールを握られても奪える力が日本にはあるし、たとえボールを奪えなくても、相手も全部を繋ぐのは無理なので。そのなかで本来の自分というのを出し切れるようにしたい」

カタール入り後はしばらく、久保としては珍しく無精髭姿で練習へ臨んでいた。

「チームのみんなにもよく言われるんですけど、最近、生えてくるようになって、剃るのが面倒くさいというだけですね。あまり似合っていないと個人的には思うし、大会前になったらちゃんと剃ります。このまま伸ばしていこうとか、特には考えていないですけどね」

ちょっぴり照れくさそうに無精髭の理由を説明した久保は、メディアから「似合っていますよ」と言われると「じゃあ伸ばしますか」と無邪気に笑った。対照的にゴールを決めれば日本のW杯史上における最年少得点記録を更新する、と向けられたときにはとこんな言葉を返している。

「世界的に見れば全然若くないので。そんなことを気にしても、どうしようもないと思っている」

これまでの最年少得点者は、2002年日韓共催大会で2ゴールを決めたMF稲本潤一(当時アーセナル、現南葛SC)の22歳だった。実力と可能性をスペインリーグで常に見ているだけに、日本の誰を警戒するのか、とスペイン代表の選手たちへ聞けば、決まって「クボ」と返ってくる。

チーム最年少の21歳は純粋無垢な少年の面影と、ちょっぴり大人びた大人の思考回路を同居させながら、スペインとのキックオフを待っている。