主要18作がそろった2022年の秋ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、主要新作の初回放送をウォッチし、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(『silent』『アトムの童』『クロサギ』『PICU』…なぜ主演俳優が急激に若返ったのか? 2022年秋ドラマ18作の傾向分析)において2022年秋ドラマの主な傾向を【[1]主演俳優に若返りの波 [2]女性スタッフのさらなる躍進】の2つと分析。

おすすめドラマとして、『silent』(フジテレビ系 木曜22時)、『最初はパー』(テレビ朝日系 金曜23時15分)、『ファーストペンギン!』(日本テレビ系 水曜22時)、『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジ系 月曜22時)、『アトムの童』(TBS系 日曜21時)の5作を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。


『PICU 小児集中治療室』 月曜21時~ フジ系

出演者:吉沢亮、安田顕、高梨臨ほか
寸評:厳しい現実から逃げない作風は『朝顔』チームらしいが、「PICU」が知られてない以上、北海道である必然性は感じず。完結する『Dr.コトー』の代替という意味なのか。主人公のキャラは応援せずにいられない。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

  • 吉沢亮


『エルピス―希望、あるいは災い―』 月曜22時~ カンテレ・フジ系

出演者:長澤まさみ、眞栄田郷敦、鈴木亮平ほか
寸評:佐野亜裕美、渡辺あや、大根仁の思いがにじみ出た今秋最大の意欲作。仕事の質は高いが、「WOWOWか」という骨太なテーマだけに、思いの強さが視聴者層を限定した感も。「テレビ局が舞台」は令和に古い?!
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 長澤まさみ


『つまらない住宅地のすべての家』 月~木曜22時45分~ NHK

出演者:井ノ原快彦、夏川結衣、吉行和子ほか
寸評:「逃亡犯の見張り」と「各家庭の問題」という2つのテーマに連動性が薄く、主人公の魅力が一向に見えてこないのが帯ドラマとしては厳しい。『あなたのブツが、ここに』の後だけに期待されたが……。
採点:【脚本☆ 演出☆ キャスト☆ 期待度☆】


『警視庁考察一課』 月曜23時6分~ テレ東系

出演者:船越英一郎、名取裕子、内藤剛志ほか
寸評:「2サスアベンジャーズ」の呼び声通り、これ以上ない顔ぶれが集結。“考察”だけに会話ばかりの省エネな上に、事件解決への道筋も拙速という感が。深夜より金曜20時枠で中高年層に見せてあげたい。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆】


『君の花になる』 火曜22時~ TBS系

出演者:本田翼、高橋文哉、宮世琉弥ほか
寸評:本田の演技が酷評されがちだが、「各事務所から若手俳優を集め、レッスンを積ませてデビューさせる」というプロジェクトは、それだけで称えられるべき。しかし、なぜ放送が夏でなく秋なのか理解不能。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

  • 本田翼


『ファーストペンギン!』 水曜22時~ 日テレ系

出演者:奈緒、堤真一、梅沢富美男ほか
寸評:すでに各局の番組で扱われた実話だが、「ドラマ」という発想は素晴らしい。森下佳子の脚本でハートフルに仕上がり、物語には不安なし。ただ演出のメリハリに欠ける分、感動が伝わりにくいのがもったいない。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆☆】

  • 奈緒 撮影:蔦野裕