フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、18日に放送された『あの日 僕を捨てた父は ~孤独な芸人の悲しき人生~ 前編』。ゲーム芸人・フジタ(本名=藤田真也)と、かつて自分を捨てた父との再会を追った作品で、30日に後編が放送される。

父親に対して恨みを持って生きてきたフジタだが、番組で描かれるのは、認知症になった父に本気で寄り添い、支えていく姿。密着した朝川昭史ディレクター(NEXTEP)は、この変化の背景として、「お父さんの愛情に飢えていたんだと思います」と語る――。

  • ゲーム芸人・フジタ(右)と父親 (C)フジテレビ

    ゲーム芸人・フジタ(右)と父親 (C)フジテレビ

■同級生の母と恋仲になって家を出た父

幼い頃から没頭してきたゲームの腕でファンを魅了するフジタは、小学校入学直前に母親がクモ膜下出血でこの世を去り、父親と2人で暮らすことになった。しかしその父が、内縁の妻となる同級生の母と恋仲になって家を出てしまい、小学2年生で独り暮らしを始めることに。自分をこんな目に遭わせる父を憎み、その苦しさと寂しさを紛らわすために、ゲームに熱中してきたのだ。

それから約35年が経った2021年、突然フジタを呼び出した81歳(当時)の父親は「自分が死んだら全財産をお前に遺す」といい、遺言状を書きたいと言い出す。だがその直後、父親が認知症であることが判明。フジタは憎んでいた父を世話することになるが、そこに内縁の妻の誤解も生じてしまい、関係が悪化してしまう…。

  • ゲームに囲まれた生活を送るフジタ (C)フジテレビ

■遺産相続争いがテーマになると思っていた

フジタに密着することになったのは、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で、“ザ・ノンフィクションでよく見るようなシーン”を披露して優勝し、その後、本家でナレーションも務めた番組ファンの芸人・小出真保からの紹介。フジタの壮絶な生い立ちを聞いた西村陽次郎チーフプロデューサーは、『52歳でクビになりました。~クズ芸人の生きる道~』(20年4月19日放送)で“クズ芸人”こと小堀敏夫に密着し、芸人の取材に実績のある朝川Dに声をかけた。

そのとき朝川Dは、父親が認知症になることなど、全く想像していなかったという。

「フジタさんの過酷な生い立ちがあり、その彼を苦しめていたお父さんが遺産をフジタさんに譲りたいという話があったのですが、そこに父親の違うお兄さん、そして内縁の妻という存在があったので、遺産相続争いのドキュメンタリーになるのかな、と思っていました。そもそもフジタさんは、お父さんがそんな簡単に遺産を譲るとは思えないと話していたのですが、すんなりと遺言状を書いたので、フジタさんも意外だと言っていましたね」