藤井聡太竜王に広瀬章人八段が挑戦する、第35期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)の第1局が、10月21・22日(金・土)に京都府京都市「総本山仁和寺」で行われています。

本シリーズの開幕戦は、先手番の広瀬八段の誘導で角換わりに進み、2日目に入って広瀬八段がペースをつかむと、そこから会心の指し回しで一分のスキも見せない快勝譜を作り上げました。

第2局は後手番の広瀬八段。第1局と同じ角換わりに進むかと思いきや、早くも10手目に用意の作戦を披露します。「3三金型角換わり」というものです。

通常の角換わりに比べ、金が3三に上がった形はひと目逆形で違和感がありますが、そのぶん1手の手得を生かそうという考え方です。この形を生かして速攻を掛ける「3三金型早繰り銀」という新戦法があり、これは2021年度の升田幸三賞を受賞しています。

ところが広瀬八段は、3三金型に構えたあとに速攻型の早繰り銀ではなく、じっくりとした戦いになりやすい腰掛け銀に構えました。これは過去に実戦例が少ない新構想。広瀬八段が練りに練って思い切った作戦をぶつけてきたという印象です。

この広瀬八段の新構想はさすがの藤井竜王も予想していなかったと思われますが、それでも藤井竜王の着手はよどみなく、さほど時間を使うこともなく駒組みを進めていきます。

そして59分の熟慮の末、藤井竜王は敢然と仕掛けます。類例の少ない形であるにもかかわらず、1日目の午前中から目の離せない激しい戦いが始まりました。

本局は2日制で持ち時間は各8時間。終局は翌22日の午後以降になる見込みです。

大石祐輝(将棋情報局)

対局開始前に気息を整える藤井竜王(左)と広瀬八段(提供:日本将棋連盟)
対局開始前に気息を整える藤井竜王(左)と広瀬八段(提供:日本将棋連盟)