• 『ぽかぽか』のMCを担当するハライチ(左)と神田愛花

――来年1月に、お昼の情報番組『ポップUP!』を、バラエティの『ぽかぽか』に改編することを発表されました。帯番組の1月改編というのはかなりイレギュラーなことですが、この決断の背景は何でしょうか?

『ポップUP!』は、4月から出演者の皆さんもスタッフも頑張って作ってくれています。ただ、残念ながら期待していた結果に結びついていないので、やはり手を打たなければならない。『ポップUP!』は情報制作局が作っていますが、『バイキング』の最後の1年とこの半年、タイムテーブルの面積をたくさん持っている中で頑張ってくれました。もともとあそこは『笑っていいとも!』の栄光の枠ですから、次はバラエティ制作センターが満を持して「よし、やるぞ」というタイミングが来たということです。

――港さんは『夕やけニャンニャン』もやっていましたが、やはり帯の生バラエティが元気だと、局内の空気が活気づくものなのでしょうか?

そうですね。『夕ニャン』は平日の夕方、「おニャン子クラブ」の女子高校生たちが30人くらいフジテレビに通っていましたし、出演者はMCをはじめ、いろんなキャストの方たちの力を借りてやっていくわけですから、芸能事務所や広告代理店の方など、多くの人が集まってきて賑わいますよね。「賑わう」ってとても大事なことで、その番組だけではなく、派生して「新しいことをやろうか」と、次に広がっていきます。生放送の帯番組の人が集まる賑わいの力というのは、とても大きいと思っています。

それぞれの曜日を担当するクリエイターたちも、他の曜日と張り合いますし、タレントさんとつながりができて、「何か大きいことをやろうか」と、ここからも広がっていきますから、先ほど言った看板番組につながる可能性もとてもあると思っています。

――実際にそれを体験されてきたからこそ、期待が大きいんですね。

それと、こういう生のバラエティは新しいスターを作るという機能もあります。『オールナイトフジ』や『夕やけニャンニャン』から、女子大学生のオールナイターズや女子高校生のおニャン子クラブが出て、とんねるずもここからスターになっていきました。『いいとも』もそうですが、スターを生み出して一緒に育っていくというのは、番組を作る大きな意義の1つなのです。『ぽかぽか』もそういう番組になってほしいですし、そこを中心にいろんな番組に派生していくといいなと思っています。

そういえば、『ぽかぽか』のイントネーションはどっちなのか、ちょっと揉めていますよ(笑)

――最初の「ぽ」にアクセントが付くのか、平板なのか、ですね(笑)

「体がぽかぽかする」って言うし、「ぽかぽか陽気」とも言うじゃないですか。最初に現場から「『ぽかぽか』に決めました! 良いタイトルでしょ!」って自信満々で報告が来たから、「おお、いいなあ!」って言ったのですが、「ちょっと待て。アクセントはどっちに付けるのか?」って聞いたら、「えっ!?」となって。しばらく議論して、そのとき結論は出なかったのですけど、今は頭にアクセントが付く『ぽかぽか』が優勢です(笑)

――50歳以上の社員の早期退職募集を行いましたが、これによって若手・中堅にチャンスが巡って、活性化するという流れはありますか?

ネクストキャリア支援希望退職制度を実施して、今年3月、多くの仲間が去りましたが、彼らからバトンを渡されたという気持ちで、みんな奮起してくれています。もちろん若手・中堅のチャンスは増えていくと思いますし、増やしていこうと思っています。

――『ぽかぽか』の各担当曜日ディレクターも、若いスタッフの方が起用されることになると。

総合演出の(鈴木)善貴より若くなりますし、グループの制作会社に優秀なスタッフがいることは、自分も共テレにいたのでその力量が分かります。そういうチームも入れて、バラエティ制作センターとグループの力を結集してやっていきたいと思っています。

■制作者に必要な“ブレーン”の存在

――「番組はいつか終わってしまう」というお話がありましたが、『久保みねヒャダこじらせナイト』が地上波のレギュラー放送を終了(17年9月)するときに、演出・プロデューサーの木月(洋介)さんに「この座組は絶対続けるべきだから守れ」とおっしゃったという話を聞きました。これは、どういう意図でお伝えされたのですか?

木月はバラエティのエースの1人で、サブカル的なことなどいろんなことを番組で取り入れています。その発想は、ブレーン的に一緒にやっている仲間がいるから生まれてくることもあるわけであって、それが久保みねヒャダの方たち(久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダイン)なんですよ。僕はそれが分かっていたし、あのレギュラー番組は面白いと思っていたのですが、番組はいつか終わってしまう。でも、今はテレビだけじゃなくて出し方がいろいろあるので、「あのパッケージは絶対残せよ。お前のためでもあるし、フジテレビのためでもある」って強く進言しました。

彼は頑張ってお客さんを入れたライブイベントにしたり、コロナ禍になっても配信にしたりと、今もいろんな形で継続しています。この前、陣中見舞いに行ったら、あの3方に木月を入れた4人のパッケージで変わらずにやっていたので、「末永くお願いします」と言ってきました。

  • (左から)能町みね子、久保ミツロウ、ヒャダイン

――やはり制作者にとって、そうしたブレーンになる人や番組の存在は大きいんですね。

必要なものだと思います。僕は『みなさん』を『火曜ワイスペ』で2年やってレギュラーになったときに、深夜で『オールナイトフジ』を同時にやっていたのが、すごく大きかったと思っています。

あの頃「3M」と呼ばれていた、宮沢りえさん、牧瀬里穂さん、観月ありささんには、『みなさん』に準レギュラーとして活躍してもらいました。その前に、まずは『オールナイトフジ』に出てもらって、とんねるずとの相性とか、度胸とかを見ました。そこで「とんねるず、好き? 『みなさんのおかげです』でコント作るから出る?」って聞いて、本人が「出たい!」って言うと、事務所も了承してくださるじゃないですか。だから、『オールナイトフジ』は、それはそれで存在感のある番組だった一方で、『みなさん』にとっては衛星=月みたいな部分もあったのです。大きな番組をやるクリエイターにとっては、そういう要素もやはり必要なものだと思います。