この記事では「御用達」の意味や読み方に、例文を交えた使い方、類語などを解説。「御用達」の英語表現も紹介します。

ビジネスシーンで登場することはさほど多くはないかもしれませんが、正しい読み方など教養が問われる言葉でもあります。しっかりと把握しておきましょう。

  • 「御用達」の意味や読み方、使い方などについて解説します

    「御用達」の意味や読み方、使い方などについて解説します

「御用達」の読み方は「ごようたし」が主流

「御用達」の読み方には「ごようたし」「ごようたつ」「ごようだち」の3種類があり、これらはいずれも正しい読み方です。

比較的よく使われている読み方は「ごようたし」のようですが、「ごようたつ」という読みも頻繁に見られます。また両者ほど一般的ではありませんが、「ごようだち」も間違いではありません。

「ごようたし」だけが正しい読み方であると認識している人は多いかもしれませんが、他人に対して「『ごようたつ』『ごようだち』は誤読である」と指摘することは控えた方が無難と言えそうです。

「御用達」の意味とは

「御用達」は時代とともに意味が変化してきた言葉でもあります。その時代的背景を交えて、意味を解説します。

現在は「お気に入り」の意味合いが強い

現在では「御用達」は本来の意味からはやや外れ、「ある人のお気に入り」「ある人がよく使うこと」を表す際に使用されることが多いようです。みなさんも「芸能人御用達」「人気モデル御用達」「セレブ御用達」などの言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。

これらはいずれも著名人や有力者など、影響力のある人物の愛用の製品や店舗を「御用達」と表現することで、高いブランドイメージやステータスを演出するための使用法です。

まだ辞書には載っていない意味ですが、メディアや多くの人がこの意味で「御用達」を使用しているため、誤用とも言い切れない状況になっているといえるでしょう。

本来の意味は、江戸幕府や宮中で認められた御用商人のこと

「御用達」はもともと、「江戸時代、幕府・諸藩に出入りして、品物を納入した特権的商人」「宮中や官庁などへ品物を納めること」という意味を持っています。別名「御用商人」ともいいます。

このように「御用達」は本来、格式の高い組織や家柄などから許可を受けて取引を行い、物品などを収める行為や業者を指します。「御用達」と認められることで特権を得られるのはもちろん、取引業者や納品物の信頼性や品質が保証されているという印象を与える効果があり、多くの商人、業者が御用達を目指したようです。

「御用達」の「用達(ようたし・ようたつ・ようだつ)」には、「用事を済ませること」という意味もありますが、他に「官庁や会社、大名邸などに品物を納めること。また、それをしている商人」という意味があります。そこに相手への敬意を表す接頭辞「御」がついたのが「御用達」です。なお「用達」は「用足」とも書きます。

現在は「宮内省御用達(宮内庁御用達)」は存在しない

江戸時代の御用達とは別に、「宮内省御用達(宮内庁御用達)」という言葉もよく耳にすることが多いかもしれません。宮内省御用達制度は、1891年(明治24年)に誕生しました。当時の宮内省(現在の宮内庁にあたります)が業者を選定、審査し、皇室への納入を許可した制度です。許可を受けた業者は「宮内省御用達」の商標、そして皇居への通行証を得ることができました。

しかし1954年(昭和29年)にこの制度は廃止されています。よって、現時点で「宮内省御用達(宮内庁御用達)」を正式に名乗ることができる企業や製品は存在しないことになります。ただし現在でも、過去にそうであったなどの理由で「宮内省御用達(宮内庁御用達)」を名乗るケースもあるようです。

英国王室御用達(ロイヤル・ワラント)など、現在も御用達制度がある国も

ちなみにイギリス王室やベルギー王室では、現在も認可制の御用達制度が健在です。特にイギリス王室御用達である「ロイヤル・ワラント(Royal Warrant)」については、紅茶の「トワイニング」や陶磁器の「ウェッジウッド」などが日本でも有名です。

「御用達」の使い方と例文

前述のように「御用達」はもともと、「江戸時代、幕府・諸藩に出入りして、品物を納入した特権的商人」「宮中や官庁などへ品物を納めること」を意味する言葉です。

また辞書には掲載されていないものの、最近では「ある人のお気に入り」「ある人がよく使う」という意味でもよく使われており、市民権を得つつあるようです。下記に「御用達」の例文を紹介します。

・この和菓子店は加賀藩の御用達だったこともあり、とても人気があります
・この漆器は、かつて宮内省御用達の銘品として有名だった
・このデパートは、明治時代には宮内省御用達であった
・このブランドは、英国王室御用達としても知られています
・手土産は、ベルギー王室御用達のチョコレートでどうかな?
・彼女の誕生日には、セレブ御用達のレストランを予約しようと思う
・ここは、いま人気絶頂のアイドル御用達のアクセサリー店なんですよ
・芸能人御用達のイタリアンだけあって、予約は半年待ちだそうだ
・日本人大リーガー御用達のスポーツグッズとなれば、やはり気になる
・スーパーモデル御用達のブランドとあって、とても一般人には着こなせそうにない

「御用達」の類語・言い換え表現

  • 「御用達」の意味のうち、「ある人がよく使うこと」の意味の類語を紹介します

    「御用達」の意味のうち、「ある人がよく使うこと」の意味の類語を紹介します

「御用達」には、「江戸時代、幕府・諸藩に出入りして、品物を納入した特権的商人」「宮中や官庁などへ品物を納めること」という意味があります。上記のように「御用達」はもともとかなり限定された意味を持つ言葉のため、先にも触れた「御用商人」などの他は、類語はあまり多くはありません。

そこでここでは、「御用達」の現代的な用法である「ある人がよく使うこと」に似た意味を持つ言葉をいくつかご紹介しましょう。

お気に入り(おきにいり)

「お気に入り」は、「好みに合うこと、好ましいと思うこと。またその人や物自体のこと」を表します。例文としては、「このブランドは、某有名俳優のお気に入りらしいよ」などです。

行きつけ(いきつけ)

「行きつけ」の意味は「普段よく行くこと、その場所自体」。「そこは彼の行きつけの店だよ」など、日常的にもよく使う表現ですね。

愛用(あいよう)

「愛用」の意味は、「好んでいつも使用すること」。例文は「これは、彼女の愛用のバッグです」などです。

おすすめ

「おすすめ」の意味は、「ある商品やサービス、体験などをすすめること」で、細かくは「すすめ」に「お(御)」を付けて尊敬語、あるいは謙譲語としたものです。「ここが部長のおすすめのカレー店ですね」「それなら、このアイテムがおすすめです」などの形で使います。

贔屓(ひいき)

「贔屓」のもともとの意味は「重い荷物を持つために息を荒くして力む」です。それが転じて「誰かのために力むこと」、そして「自分が気に入った人を特に引き立てること」となりました。より丁寧な表現として、「ご贔屓」もよく使われます。「これからもどうぞご贔屓に」といった形で使用します。

得意先(とくいさき)

「得意先」の意味は、「いつも品物を買ってくれたり取引をしたりする相手、客」です。「得意先に年末のあいさつをして回る」などの形で使用します。

「御用達」の英語表現

「ある人のお気に入り」という意味では「favorite」などが挙げられます。

またイギリスでは「王国御用達」のことを前述の「Royal Warrant」の他に「Purveyor to the Royal Household」とも表現します。「purveyor」とは「調達者」という意味です。

「御用達」の意味を知って正しく使おう

「御用達」はもともと「江戸時代、幕府・諸藩に出入りして、品物を納入した特権的商人」「宮中や官庁などへ品物を納めること」を意味します。

現在では本来の意味から用法が拡大し、「ある人のお気に入り」という意味でもよく使われています。日常生活でも、「芸能人御用達」「有名人御用達」「セレブ御用達」などといった表現をよく目にするのではないでしょうか。

またその読み方に関して迷った経験がある人も多いかもしれません。本文中でも触れた通り、「御用達」には「ごようたし」「ごようたつ」「ごようだち」の3通りの読み方があり、いずれも正しいとされています。

皆さんもこの記事を参考に、「御用達」という表現をぜひ正しく使いこなしてみてください。