自宅や実家に眠っている意外なものに、意外なほどの高値が付くこともある。近年密かに注目を浴びているのが、驚くほどの高値で取引されることもある「中国切手」だ。

特に1960年代~1970年代の中国切手は希少価値が高いことから、1枚の切手がオークションで数千万円に化けた例もあるという。

知られざる中国切手の買取事情について、「買取大吉」を運営するエンパワー大吉事業部の木村健一本部長に聞いた。

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■プレミアムが付く海外切手のほとんどが中国切手

――さまざまな国の切手がある中で、中国切手は特にプレミアムが付きやすいのでしょうか。

はい。全世界の切手の中で、プレミアムが付いているのはほぼ中国切手だと言っても過言ではないほどです。日本切手も一部プレミアムが付くものもありますが、海外切手に関しては、中国切手が100%に近い割合を占めています。

――中国切手にプレミアムが付きやすいのはなぜでしょうか?

プレミアムが付きやすい中国切手は、1960年代~1970年代に発行されたものです。

その年代の切手は残っている数が少ないということに加え、近年になって中国国内で文化大革命時代の切手を買い戻す動きが強まっています。もともと供給が少ないところに、需要が増えたため価格が上がっているという構図です。切手コレクターのあいだでは、10数年前から徐々に中国切手の価格が上がり続けています。

中国切手の面白いところが、複数の切手で1つのストーリーになっているものが多いことです。例えば、1つ1つ絵柄が違う5枚の切手があり、それが揃うことでストーリーが完成するようなものがあります。そういったものは以前から切手コレクターのあいだでは人気があり、高値が付きやすかったのですが、近年特に値段が上がっている傾向にあります。

日本同様、中国でも切手コレクターの数自体は減っているのですが、投機目的で希少価値の高い切手を買う人もいることが影響しているのではないでしょうか。

■1枚の切手が数千万円に化けることも

――中国切手に関して、ストーリー以外にデザイン面での特徴などはありますか?

中国切手は結構独特で、描写が緻密なものが多いです。有名なところでは「赤猿」と呼ばれる赤背景に1匹の猿をモチーフにしたものがありますが、毛の1本1本までが立体的かつ繊細に表現されていて、技術の高さがうかがえます。

そういった美術品的な美しさも、中国切手がコレクターに好まれる要因ですね。

――中国切手は、高いものになるとどのくらいの値が付くのでしょうか?

「全国の山河は赤一色」というシリーズがあるのですが、香港のオークションで未使用品に4,300万円もの値段が付いたことがあります。

それより数の多い「赤猿」でも、きれいなものだと1枚15~20万円くらいで取引されています。

30~40年前はまだ中国切手の価値が確立されていなかったため、「赤猿」が懸賞品として配られていたことがあったそうです。その結果、「赤猿」のシートを何枚ももらって保管していた人が30年後にオークションに出品したら、1億2,500万円に化けたという話があります。

「買取大吉」の店舗でも、単価は50万円程度でも、大量にまとめてお持ち込みいただいた結果、合計数千万円程度の買取価格が付いた例があります。

■1960~1970年代の中国切手はプレミアムが付きやすい

――特に高値が付く中国切手の特徴を教えてください。

最もプレミアムが付く中国切手は、1960年代~1970年代に発行されたものです。それ以降、1980年代や1990年代に発行されたものは出回っている数が多いため、プレミアムが付くものはほとんどありません。

1960年代~1970年代の中国切手にプレミアムが付きやすいのは、文化大革命でそれ以前に発行された切手の多くが消失したこと、また文化大革命中の切手はもともと発行数が少ない上、当時切手の収集や外国への輸出が禁じられていたことから、非常に希少価値が高いためです。

――中国切手を高く買い取ってもらうためのポイントはありますか?

買取価格を大きく左右するのが保存状態です。切手は紙ですので、湿気でカビが生えてしまっていたり、キズや破れ、消印などがあったりすると評価が大きく下がってしまいます。

複数の切手で1つのストーリーが完成するものの場合、シート全体が揃っているかどうかも重要なポイントです。例えば20枚で完結する切手の場合、1枚欠けて19枚になった途端、買取価格は半額どころか10分の1程度にまで下がってしまいます。逆に言うと、すべて揃っていると一気に評価が上がるということです。

また、量が多いほうが取引業者さんとの交渉がしやすくなるので、できるだけまとまった数をお持ち込みいただいたほうがいいですね。

――プレミアムが付くような中国切手には贋作も多いそうですね。

非常に多いです。「赤猿」にしても、本物は猿の毛並み1本1本が本当に美しく表現されていますが、偽物はベッタリとした平坦なタッチです。ほかにも、文字の濃さや猿の目の色、配色やにじみ感など、色々な違いがありますね。本物は「さすが」と思うような芸術的な仕上がりで、見比べると全然違うのがわかります。

買取店を選ぶ際も、過去に中国切手の買取実績があって、知識とノウハウの蓄積があるお店を選んだほうがいいでしょう。

■売却を検討する際は保存状態を意識して

――「買取大吉」の店舗への中国切手の持ち込みは、どれくらいの頻度であるのでしょうか?

平均すると、全国の直営店全体で、最低でも1日1件以上は持ち込みがある状況です。遺品整理や生前整理などで、1度にまとまった数をお持ち込みいただくケースが多いです。あまり地域差などは見られません。

――今後の中国切手の相場はどうなると予想されていますか?

プレミアムが付くような中国切手の場合、新たに発行されない以上、数は減る一方なので価値が下がることはあまりないと思います。むしろ、まだ値段が上がる可能性も十分にあります。

ただし、すでにお伝えした通り、切手の評価額を大きく左右するのが「保存状態」です。仮に今後買取相場がさらに上がったとしても、保管期間が長引けば長引くほど劣化のリスクも高まります。

高温多湿の日本では良い状態で切手を保管するのは非常に難しいですし、今後値段がさらに上がるという保証があるわけではありません。劣化して価値が下がってしまってはもったいないので、個人的には、売却を検討されるのであれば今売っておいたほうがいいのではないかと思います。