日本全国のマダムたちを中心に絶大なる人気を誇るムード歌謡グループ「純烈」の、初の映画主演作として話題を集めた『スーパー戦闘 純烈ジャー』(2021年)。あれから1年、さらなるパワーアップを遂げて純烈ジャーの「続編」が完成した。タイトルは『スーパー戦闘 純烈ジャー 追い焚き☆御免』。前作での「全国のステージで歌い踊る純烈は、実は温泉の平和を守るヒーローだった」という奇想天外なコンセプトを継承しつつ、笑いあり涙あり、そして歌あり特撮ありといった痛快娯楽要素を最大級に強化し、前作を上回る面白さを目指しているという。

  • 佛田洋(ぶつだ・ひろし) 特撮監督。1961年熊本県山鹿市出身。84年に九州大学工学部卒業後、特撮研究所に入社。美術スタッフを経て『地球戦隊ファイブマン』(1990年)で特撮監督になる。『北京原人 Who are you?』(97年)で日本アカデミー賞特殊映像技術賞受賞。1998年より特撮研究所代表に就任。『男たちの大和/YAMATO』(2005年)『ハッピーフライト』(2008年)など一般映画の特撮も手がける。現在は『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年)『仮面ライダーギーツ』(2022年)の特撮監督を務め、精力的に活動中

映画の公開を記念し、前作に引き続いて監督を務めた特撮研究所代表・佛田洋氏にインタビューを敢行。『スーパー戦闘 純烈ジャー 追い焚き☆御免』が世に送り出されるまでのあっと驚く製作秘話の数々をお楽しみいただきたい。


※本記事には映画の内容に触れている箇所があります。ご注意ください。

――前作『スーパー戦闘 純烈ジャー』は、メンバー4人のうち3人が「東映特撮ヒーロー」出身である「純烈」のみなさん(酒井一圭、白川裕二郎、小田井涼平、後上翔太)が、古巣というべき東映特撮の世界に凱旋するといった勢いで「温泉の平和を守るヒーロー、純烈ジャー」をのびのびと演じられ、大勢の純烈ファンならびに特撮ファンを楽しませてくれました。「パート2製作決定!」のニュースは昨年の『純烈ジャー』公開時の舞台挨拶にて発表されたんですね。

そうそう。9月10日公開で、東京の舞台挨拶が翌日の11日だったでしょう。その次の日からもう撮影を始めました。それまで毎日のように打ち合わせをやっていて、撮影に入る準備をして、舞台挨拶があって、翌日が撮影開始で、もうヘトヘトになりながらやっていました。

――大好評だった前作から、パート2を作るにあたってどんな部分を強化しようと思われましたか。

いろんな部分をパワーアップさせたいと思っていて、中でも「巨大ロボット」を出したことは大きいかな。いま放送している現役の「スーパー戦隊」と類似する部分を作っちゃいけないなとは思いつつ(笑)、ロボは欲しいよねという流れになり、巨大ロボ戦を入れました。巨大ロボット「銭湯巨神 純烈王」のコクピットには素面の4人が座って操縦してるんだよね。通常なら、ロボに乗り込むヒーローは変身後の姿であるはずのところ、純子(女性純烈ファンの愛称。ちなみに男性ファンは『烈男』)さんたちにも楽しんでもらいたいので、素面のみんなの芝居を増やしたんです。最後に変身した純烈ジャーが出てきて、純烈王の必殺技を決めるというところを見せたかった。特撮ファンを満足させつつ、同時に純子さんたちをも満足させなければいけない。その匙加減が難しかった。

――メインビジュアルにも、手ぬぐいと桶を手にした「銭湯巨神 純烈王」の勇姿がそびえていますね。

野中剛さんのデザインで、お風呂をイメージしつつ武骨でカッコいいロボットが生まれました。左肩にある「ステージ」は最初のデザイン画には存在していなくて、プロデューサーの塚田英明さんが「ここに純烈が歌って踊れるステージがあったらいいんじゃないですか」と言うんで、僕も「そうだねえ。そうしよう!」と盛り上がって付けてもらったんです(笑)。

――ストーリーについておうかがいします。前作では「純グリーン」後上翔太さんを主軸に据え、温泉の女神「緑の女神」を演じられた小林綾子さんとの心の交流が描かれましたが、本作では「純レッド」の白川裕二郎さんと「赤の女神」ふせえりさんとのディープで純粋な恋愛模様が描かれています。

初めのころから酒井一圭くん(純バイオレット役)が「パート2をやるなら主役は白川で」と話していましたので、白川くんとふせさん、そして長井短ちゃんとの三角関係みたいなストーリーを作っていったんです。ふせさんの芝居がよくて、純子さんの代表というか、映画を観てくださるマダムの方々が「私もああなりたい」と感情移入してもらえるような女性の役を、見事に演じてくださいました。

――純烈のみなさんによる「歌」と「踊り」もふんだんに採り入れられ、ミュージカル風演出も快調でした。前作から引き続き「歌謡映画」としての見どころもたっぷりありますね。

60年代の東宝クレージー映画(植木等、谷啓をはじめとするクレージーキャッツを主役にした喜劇映画シリーズ)や80年代の「たのきん(田原俊彦、野村義男、近藤真彦)」映画を意識して、ドラマが進んでいく中でいきなりミュージックビデオのような歌唱シーンを入れ込んでいます。ちゃんとしたミュージカルだと、ドラマの進行とキャストの歌が密接に絡みあうものなんだろうけど、細かいことを考えるのが苦手だから、この映画ではみんな「唐突に」歌い出す。そういったあたりが「クレージー映画」的だと思います。

――純烈の4人に加えて、4人の女神(小林綾子、しのへけい子、中島ゆたか、ふせえり)や司令官の前川清さん、サポート役を務める山本康平さんも異なる役柄で再登場し、純烈ジャーまわりの方々は前作のオリジナルキャストがふたたび結集しているのが凄いと思いました。

再結集していただくのも、なかなか大変でした。みなさんお忙しいですからね。特に前川さんはスケジュールがタイトだったので、康平くんとの絡みや一曲歌うシーンなど、半日かけてまとめ撮りしているんです。カットバックで女神のリアクションがありましたけど、前川さんは康平くん以外のキャストとは顔を合わせていません。でも少ない出番ながら、大御所として画面をふたたび締めていただきました。

――本作では、全国の温泉のエネルギーを奪い取って冷たい水風呂に変えるという敵・哀須永仁役で、テレビドラマや映画で活躍する実力派俳優・本宮泰風さんが出演され、コミカルな空気のただよう本作の中にあって、ひときわシリアスな存在感を発揮されました。本宮さんの印象を聞かせてください。

マイナスカンパニーという「冷凍」関係の企業のCEO役ですから、普通だとスーツを着こなして社長室に座っているイメージでしょう。本宮さんも最初はそんなイメージを抱いていたみたいでしたが、何度かホン打ち(脚本打ち合わせ)をしているうちに、そんなんじゃつまらないだろうと、アイデア協力で入ってくれていた企画者104の松井大さんが「山伏」風衣装を考えてくれたんです。哀須永仁という名前も彼ですね。衣装合わせをしたときに、本宮さんは「あっ、こういうことなのね」とふっきれてくださったそうです(笑)。

――衣装を着た時点で「特殊な映画だな」と気づかれたわけですか。

本宮さんは体を鍛えていて、アクションも行けますし、ドスの効いた芝居も出来る方。でも後半で巨大ロボット「シロクマジン」を操縦しているシーンで「もう何をやってもいいんだモード」に入ったと言ってました。コクピットの中で、操縦桿の代わりにかき氷器をグルグル回していましたから(笑)。哀須の演技プランとして考えたのは、普段はどっしり構えた落ち着きのあるワルなのに、自動車に乗ったとたん性格が豹変して「てめえこのやろう!」みたいに興奮してガラが悪くなるタイプの人なんです。

――哀須の亡き妻の写真が出てきますが、写っているのが松本若菜さんでびっくりしました。松本さんの写真出演はどんな経緯で決まったのでしょう。

写真だけの出演なので、誰に声をかけようかなと思っていたら、たまたま本宮さんと同じ事務所で、別の映画に出演中の若菜ちゃんがいて、写真だけで申し訳ないと思いながらお願いをしてみました。そうしたら、出てくれるって返事をいただいたのでこっちが驚いた(笑)。『仮面ライダー電王』のキャストつながりで中村優一くんも出演しているし、これで決まりだなと思いました。本当は、哀須の過去の悲しみを表すため、若菜ちゃんで回想シーンを追加で撮りたかったんだけどなあ……。