27~28日に放送された日本テレビ系大型特番『24時間テレビ45』。今年のメインパーソナリティーであるYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」のメンバー(二宮和也、中丸雄一、山田涼介、菊池風磨)は“ゆるさ”、チャリティーマラソンランナーのEXIT・兼近大樹は“チャラさ”が魅力の1つだが、本番で見せた姿はプロフェッショナルそのものだった。

  • 『24時間テレビ』

    『24時間テレビ』

■自分たちが目立つために出てきたわけではない

チャリティー番組という性質上、真面目に取り組むことが求められる『24時間テレビ』。例年の制作発表会見で、メインパーソナリティーから語られるのはかしこまった抱負が通例だが、今年の会見で二宮の口から飛び出したのは、「格式の高いこういった番組の中、我々が活動しているマインドとは全く真逆の方向性だったので、僕らがどこまでしっかりできるのか不安でしたけど、自分たちらしくやればいいとお声をかけていただいたので、良くも悪くも何も考えず、楽しく、我々らしくゆったりと1日を過ごしてみようかなと思っております」という何とも“ゆるい”意気込みだった。

リーダーの二宮が隙を突いてはボケを入れ、年上の中丸を最年少の菊池がイジり、そんなメンバーたちへツッコミを入れる山田という関係性で、宣言通り“ゆるい”やり取りを見せていく4人。『24時間テレビ』生放送の合間に1時間に1本のペースで『ジャにのちゃんねる』にアップしていくショート動画ではもちろん、番組の本番中でもその魅力が発揮されていた。

そんな彼らの姿勢を象徴したのが、公式推奨ハッシュタグ「#寝るなジャにの」。昨年の公式ハッシュタグが「想い」というテーマを頭に付けた「#想い24時間テレビ」だっただけに、今年の“ゆるさ”が際立った。

一方で、“決めるときは決める”のが、トップアイドルの証し。ライブパフォーマンスだけでなく、それぞれが担当したドキュメンタリーで取材対象者に寄り添う姿、そしてフィナーレ前で披露した車いすの集団フォーメーションダンスはその集大成で、中丸は本番終了後の会見で「表に出てない時間も結構集中力高めて振り確認とか、いろいろやってましたね」と、陰の努力を明かした。

この会見で、二宮は「メインパーソナリティーという大役は頂きましたけど、自分たちが目立つために出てきたわけではなくて、この番組をきっかけにチャレンジしてみようと思う人たちの一助になればと思ってやっているんです」と強調。「“自分たちが中心にならないように、ならないように”という動き方がそもそもできる4人なので、それがスムーズにできたのかなと思います」と、信頼できるメンバーで自分たちの役割を果たすことができた手応えを語っていた。

■ここまでイメージを守った芸人ランナーはいない

“ネオ渋谷系漫才”で一躍ブレイクした兼近は、『24時間テレビ』のチャリティーマラソンランナーという大舞台でも、その“チャラい”キャラを守り続けた。

「史上最速でゴールしようと思ってる」と宣言し、カメラを見つけては走りながらポーズを決めて話しかけ、余裕ぶりをアピール。“体力消耗”という言葉を捨ててきたかのように、沿道の声援には手を振ったりポーズを送ったりと、ファンサービスが止まらない。過去多くの芸人も挑戦してきたチャリティーマラソンだが、過酷な状況でここまでイメージを堅持し続けた芸人は、フジテレビ『FNS27時間テレビ』のパロディ企画を含めて記憶にない。

そんな中でも、実況車に乗って付きっきりで解説する相方・りんたろー。からの情報で、額面通りに余裕をかましているわけではないことが明かされる。事前に放送された『THE突破ファイル』で、りんたろー。は「やると決めたらあいつ(兼近)本当にムチャしちゃうタイプなんで、僕の前で弱音とかも吐いたりしないんですよね」と心配を吐露していた。終盤の中継で兼近は、ワイプで映っていることに気づいていないからか、ひざに手をついて下を向く場面も見られた。

ゴール直前で読み上げられた母親への手紙でも、ギリギリ“チャラさ”を保ち、マラソン中に笑顔を絶やさなかったが、国技館の前で『THE突破ファイル』のメンバーに出迎えられ、建物に入った瞬間、思わず涙が。そのままゴールまで笑顔と涙がせめぎ合い、100km走破後第一声の「泣くタイミング早かったな」というコメントで、何とか“チャラさ”を守りきった。

  • チャリティーマラソン100kmを走破したEXIT・兼近大樹 (C)NTV

■コロナ禍で離れた距離をいかに埋めるか

コロナ禍に入って3回目となった『24時間テレビ』は、メイン会場の有観客開催は復活したものの、名物である対面募金は今年も中止となり、この番組の原点である出演者と視聴者の近さが本来の距離感に戻っていないという課題が続いている。

そうした中で、募金をした人が出演者と直接会話できる「感謝の生電話」という新たな試みを導入したことや、チャリTシャツを普段使いできるデザインにしたこと、そして「会いたい!」というテーマ設定から、様々な手法でチャリティーへの敷居を低くしたいという狙いが見えてくる。そこに、“ゆるさ”や“チャラさ”が魅力の彼らを起用したことによって、番組がよりカジュアルになり、一定の成果を収めることができたのではないか。

コロナ禍によって以前の放送スタイルが適用できない場面が多く発生し、その上、テレビを取り巻く環境も一層変化が進んでいる。長い歴史と社会的使命を持つ『24時間テレビ』が今後も放送を続けていくために、また来年も新たなトライが行われるに違いない。