• 浅野忠信 (C)NTV

ドラマ『無言館』で、浅野忠信演じる窪島は「無言館」と命名した理由について、「絵の前に立っているとね、なんか絵が無言で語りかけてくる気がして。それを見ている自分も、言葉にできないんだけど、何か無言で絵に語りかけているような…」と語っている。その意図は狙い通りで、中でもこちらと目の合う「自画像」には、一段と引き込まれるものがあった。

一方の来場者側も、ほとんど無言で鑑賞。BGMも流れない中、天井が高く、少し声を出すだけで反響する構造になっているが、私が見学していたときに聴こえてきたのは、涙で鼻をすする音だけだった。

■『24時間テレビ』で取り上げる意義

無言館は、現在収蔵する何倍もの戦没画学生の作品があると考え、情報提供を呼びかけているが、今回のドラマが放送されることで、「無言館」の存在がより広く周知され、今後収蔵が一層進むことが期待される。

また、私が訪れたのは平日だったこともあって来場者は高齢層が占めていたが、戦争との距離が遠い若年層も多く訪れるようになれば、『24時間テレビ』という幅広い世代の注目度が高い番組で放送する意義は大きいだろう。

コロナ禍において、芸術やエンタメが不要不急なのかという議論があったことは記憶に新しい。娯楽が統制された戦時下においては、有無を言わさず「不要不急」と判断され、将来の文化を担う若者たちが戦地に駆り出されることになったが、その結果生まれた「無言館」に多くの人が足を運んで、芸術やエンタメが享受できる平和を噛み締めてほしい。

  • 無言館第二展示館「傷ついた画布のドーム」

  • 無言館近くの山王山公園から望む。ここも絵に描きたくなる風景だ。