藤井聡太竜王への挑戦権を争う第35期竜王戦(主催:読売新聞社)の挑戦者決定戦第2局、山崎隆之八段―広瀬章人八段戦が8月23日(火)に東京の将棋会館で行われました。結果は141手で広瀬八段が勝利し、藤井竜王への挑戦権を獲得しました。

■山崎八段 四間飛車から意欲的な序盤作戦に

本局は後手番の山崎八段が四間飛車に振りました。△4四歩と角道を止めた、いわゆるノーマル四間飛車と呼ばれる形ですが、普通にノーマルな対抗形とならないのはさすが山崎八段といったところでしょう。広瀬八段が自然に居飛車穴熊に組んだのに対し、山崎八段は囲いもそこそこに△6二銀~△7三銀~△8四銀~△7三桂と、自玉頭から銀桂を押し出して積極的に攻勢を取ります。

先手陣は穴熊の堅さと、6筋の位からなる厚みを持ち合わせていましたが、山崎八段はそのくらいに反発すべく△6四歩と駒をぶつけていき、戦いが始まりました。その後の手順で後手は△5七桂成と桂を成り捨てましたが、ここでは直前に取った銀を使って△5七銀と打ち込む順もありました。「これで勝てれば一番速いですが」と山崎八段は言います。ですが▲7九角と引かれて、△4五桂▲6五歩△4六角▲1八飛△6六歩▲7七金寄の順に成算が持てなかったようです。「この順は確信がないと後手もやりにくいです」とは広瀬八段の言葉です。

桂馬を成り捨てたことで、▲5七同金の形は先手の金が急所から離れました。山崎八段は7筋から猛攻をかけ、さらに一度振った飛車を7一に転回させてさらに圧力を掛けます。こうなると対抗形というよりは相居飛車の右玉のような将棋です。

■二転三転

山崎八段の攻めをうまく受け止めて反撃に出た広瀬八段ですが、83手目に▲7四金と打ったのはやり過ぎでした。△7一飛に▲6四歩△同歩▲8三金と指す予定でしたが、そこで△7七飛成と切られる手があったのが誤算だったようです。実戦は△7一飛に▲6三金ですが、△6二歩と受けた形が堅く、山崎八段が逆転します。

ただ山崎八段は94手目△6六銀以下の順を後悔します。攻めと受けで方針がぶれ、ちぐはぐだったと振り返りました。徹底的に攻めるか、あるいは受けつぶしを目指すか、いずれかを一貫するべきだったようです。

■端銀でペースをつかむ

103手目に広瀬八段が▲9四銀と端の角取りに打ったのが好手でした。以下の順で角を捕まえて、さらにその角を後手陣へ打ち込み、リードを広げていきます。山崎八段も必死に頑張りますが、最後は穴熊の堅さも生きて、広瀬八段が勝利。2連勝で第31期以来の竜王挑戦権を獲得しました。七番勝負に関しては「開幕までに、より一層コンディションなどを上げていけるようにしたいと思います」と語りました。

藤井竜王との七番勝負は第1局が10月7・8日(金・土)に東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で行われます。将棋界最高峰の戦いに、注目です。

相崎修司(将棋情報局)

熱戦を制し藤井竜王への挑戦権を獲得した広瀬八段(右)(撮影:相崎修司)
熱戦を制し藤井竜王への挑戦権を獲得した広瀬八段(右)(撮影:相崎修司)