国内の主要自動車メーカーが小学生を対象にさまざまな学びを提供するイベント「キッズエンジニア」。3年ぶりのリアル開催となった今回、トヨタ自動車と日産自動車がフォーカスしたのは「プログラミング教育」だった。なぜ両社は子供たちのITスキル向上を目指すのか。

  • 「キッズエンジニア」

    7月29日と30日の2日間にわたってパシフィコ横浜で開催された「キッズエンジニア2022」(主催:公益社団法人 自動車技術会)

国内の主要自動車メーカーが小学生を対象にさまざまな学びを提供するイベント「キッズエンジニア」。3年ぶりのリアル開催となった今回、各メーカーはどんなプログラムを実施したのか。トヨタと日産のブースを取材してきた。

エンジニアの基本を教えるトヨタブース

最新のクルマは先進テクノロジーの集合体だ。たくさんの技術を制御・統合するプログラムがなければ、おそらくクルマはまともに走らない。自動運転技術が日進月歩で進化する昨今、プログラミングの重要性は高まっている。

一方で、最近は学校でプログラミングが必修となるなど、プログラミング教育の低年齢化も顕著だ。

キッズエンジニアでプログラミング教育を取り上げるメーカーが増えているのは、こうした背景があるからだ。今回のイベントではトヨタ、日産、ダイハツ工業が、プログラムを組んで実際にミニカーを走らせるというカリキュラムを実施していた。

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    ダイハツブースの様子。ミニカーをジグザグに走らせるプログラミングに悪戦苦闘するキッズたちの姿も散見されたが、歯ごたえのある課題は彼らの意欲を刺激したようだ

トヨタブースでは「自動運転ミニカーをつくろう! 自分でプログラムをしてゴールできるかな?」というプログラミング学習を実施していた。トヨタ担当者は企画の意図をこう説明する。

「これからの時代はどんどん自動運転が増えていきますし、学校においてはSTEAM教育も含めてプログラムが重要視されている環境にあります。トヨタも自動運転車を含め開発を進めていく中で、その一部をお子様たちに体験してもらい、面白いと感じてもらえればと考えました」

カリキュラムでは小学校の授業でも使われる「スクラッチ」というプログラムを使用。子供たちは、用意されたコースをミニカーが無事故で走れるよう、何度も調整を繰り返していく。

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    自分でプログラムした自動運転ミニカーを走らせる子供たち

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    走行結果をもとにプログラムを修正。トヨタスタッフからアシストが入ることも

今回のカリキュラムの狙いについてトヨタ担当者は、「壁にぶつからないようにミニカーを走らせるという『企画』があり、それに対してどうすればいいかを『設計』してもらい、『評価』します。この3つの流れを体験してもらうことで、エンジニアの基本を知ってもらいたいんです」と話していた。

日産のプログラミング学習は自動運転レベル2相当?

日産ブースでは「日産ワクワクプログラミングスクール」を開催。詳細を担当者に聞くと、「自動ブレーキやオートライトなど、クルマにはプログラムで動いている部分がたくさんあります。どんな仕組みで作動しているのか、実際にプログラムを組んで、クルマを模したキットを使いながら体験してもらうという内容になっています」とのことだった。ちなみに、学習するプログラミングは自動運転レベルでいうところのレベル2相当だという。

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    指定された枠内に模型を止めるようにプログラミング。日産「プロパイロット パーキング」の制御に近そうだ

  • 「キッズエンジニア」

    何度か微調整を繰り返すと、模型は見事、枠内に止まった

今回のカリキュラムを通して日産が伝えたいメッセージを聞くと、「プログラミングが実際に物を動かす、あるいは自分たちをどこかに連れていってくれるものだということに、まずは気づいてほしい。その上で、奥深さや楽しさを体験していただいて、将来は自動車業界に興味を持ってもらえたら嬉しいですね」と話してくれた。

自分でプログラムを組んでミニカーを動かすという今回の経験は、子供たちにとって貴重な機会となったに違いない。彼らの中から未来のエンジニアを目指す子供が1人でも多く誕生することを期待したい。