東京タワーB1タワーホールにて、8月11日から28日まで開催される「特撮のDNA 平成ガメラ3部作 展/東京タワーにギャオス飛来!」は、大映(現:KADOKAWA)製作の怪獣映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999年)の3作(いずれも監督:金子修介/特技監督:樋口真嗣)で使用された特撮用ミニチュア、モンスタースーツ、メカニカルモデルなどを紹介する展示イベントである。

  • 『ガメラ大怪獣空中決戦』の特殊美術・三池敏夫氏。平成ガメラシリーズにおける特撮セットのリアリズム表現には、美術デザイナーである氏の功績が大きい

前日の8月10日には関係者・マスコミ向け内覧会が行われ、平成ガメラシリーズに関係の深いゲストも多数来場。現在の日本映画界を支えるベテランクリエイターたちが若き日に挑んだ特撮映画の野心作=平成ガメラシリーズ3部作に思いをはせた。

メインビジュアルには『ガメラ 大怪獣空中決戦』で東京タワーを襲撃し、巣を作ってしまう怪獣「ギャオス」が選ばれた。

シリーズ3部作の主役であるガメラも、入り口のパネルでその存在感を示していた。

B1に向かう階段の踊り場には、平成ガメラの原点となった「昭和ガメラ」シリーズ各作品のポスターが展示された。第1作『大怪獣ガメラ』(1965年)は北極の氷の中から大怪獣ガメラが甦って東京を襲撃するという内容。この作品では、ガメラが東京タワーを根本から倒すスペクタクルシーンがあった。第2作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年)からガメラはシリーズ化され、第7作『ガメラ対深海怪獣ジグラ』(1971年)まで子どもたちを楽しませた。『宇宙怪獣ガメラ』(1980年)は第2~7作の特撮シーンを再編集し、マッハ文朱扮するスーパーウーマンたちが活躍する新規ドラマを加えた作品で、現在はシリーズ第8作に数えられている。

会場入り口に来ると『ガメラ 大怪獣空中決戦』のポスターと解説文が出迎えてくれる。東宝の「平成ゴジラVSシリーズ」がお正月のファミリー向け映画として大人気を誇っていた時期、『どっちにするの。』(1989年)『就職戦線異状なし』(1991年)をはじめとする青春映画の傑作で知られ、昭和怪獣映画に強い思い入れのある金子修介監督と、リアリズムに満ちた特撮映像を作りたいと意欲を燃やす樋口真嗣特技監督がタッグを組み、年季の入った特撮ファンから「これぞ正統派・怪獣対決映画」と絶賛されるような作品を生み出した。

今回の展示はショーケースやミニステージだけでなく、いたるところに存在する。頭上には、27年の時を超えてふたたび凄絶な追いかけあいをするギャオスとガメラの姿が目に入ることだろう

ショーケース内には、映画の中で重要な役割を担う「勾玉(まがたま)」やガメラの飛行シーン用ミニチュアモデルなどが展示されている。

今回の「特撮のDNA」では、クラウドファンディングにて支援を募り『ガメラ 大怪獣空中決戦』のガメラ、そして東京タワーに巣を作るギャオスが令和の世に甦ったことが、大きなスクープとなった。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』より。人知を超えた能力を備えた怪獣でありながら、生物らしい習性を備えるギャオスの特徴が、このワンカットに集約されていると言っても過言ではあるまい。

樋口特技監督による、東京タワーとギャオスのイメージスケッチ。この一枚から、日本怪獣映画史に燦然と輝く名シーンが誕生した。

クラウドファンディングによって修復が叶った、撮影当時の東京タワーミニチュアとギャオス。夕陽をイメージしたライティングが最大の効果を発揮し、映画での味わい深いシーンを見事に再現している。

東京タワーミニチュア製作の経緯を、写真と文章で示した説明パネル。特撮美術監督・三池敏夫氏と美術スタッフによる「匠の仕事」の重要な記録である。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』で活躍したガメラ(通称:G1ガメラ)は、次作『ガメラ2 レギオン襲来』に転用、補修されたため現存していない。このたび「ガメラ永久保存化計画」クラウドファンディング支援者のおかげで、最初の平成ガメラが復元され「永久保存」されることが叶った。

巨大怪獣らしい迫力と、なんともいえない愛嬌を備えたG1ガメラをさまざまな角度から捉えてみた。

『ガメラ2 レギオン襲来』ポスタービジュアルと解説パネル。『ガメラ 大怪獣空中決戦』が各方面から高い評価を得たことにより、続編企画が立ち上がった。ガメラもギャオスも昭和のガメラ映画で活躍したキャラクターのリメイクだったのに対し、本作では「宇宙からやってきた“新怪獣”」の設定・デザインに力をそそぎ、地球環境そのものを変化させ、人類の生存を脅かす危険な宇宙大群獣=レギオンを生み出した。

レギオンは巨大植物のような「草体」、群れをなして人間に襲いかかる「群体レギオン(ソルジャーレギオン)」、そしてソルジャーの親というべき「巨大レギオン(マザーレギオン)」と、さまざまな形状を備えている。

航空自衛隊HC-47Jチヌーク、大型トラックのミニチュア。いずれも『ガメラ2 レギオン襲来』で使用された。

「等身大怪獣」の恐怖をぞんぶんに味わわせてくれたソルジャーレギオン。造形は若狭新一氏率いるモンスターズ。

横から見たソルジャーレギオン。剣のように鋭い切れ味がありそうな脚や、不気味な単眼の精密なディテールをさまざまな角度から確認することができる。

頭上を飛ぶガメラ(飛行シーン用ミニチュア)。『ガメラ2 レギオン襲来』のガメラは飛行する際、前脚を主翼のように大きく広げる特長が備わった。

樋口特技監督による『ガメラ2 レギオン襲来』特撮絵コンテ。リアリズムとダイナミズムを徹底的に追求した本作の特撮イメージが形になる経緯を、肉眼で見る絶好のチャンスといえるだろう。

『ガメラ2 レギオン襲来』で活躍したガメラのアクション用スーツ。本作のガメラは前作より精悍な顔つきとなり、ガメラの最大のアピールポイントというべき「甲羅」の造形にも工夫が凝らされている。

『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』では、ギャオスの亜種であり、より高い戦闘力を備えるイリスが登場。イリスの幼体は「特撮のDNA展」では初めての展示となる。貝殻を思わせる甲羅、意外と愛らしい瞳、ヌメヌメとした質感の触手など、細部まで作り込まれた造形にご注目。

『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』では、1、2作では見られなかった「恐怖と破壊の権化」としてのガメラが登場した。この通称「トラウマガメラ」の頭部ほか、ギャオスハイパーの頭部やイリスの検討用モデルなども展示されている。

巨大ジオラマコーナーでは、ガメラとイリスがビル街をはさんでにらみあう、迫力の怪獣バトルシーンが再現された。

イリスの向き、ガメラの向きと、さまざまな場所でカメラを構えることが可能。ぜひ自分だけのベストショットを撮影していただきたい。

内覧会には、平成ガメラおよび「特撮のDNA」にゆかりの深い豪華ゲストが次々と来場した。左から、『ウルトラマン』フジ隊員役でおなじみ桜井浩子さん、平成ガメラ特撮美術監督・三池敏夫氏、ガメラ造形・原口智生氏、「特撮のDNA」展示協力・西村祐次氏(M1号)。

こちらは、平成ガメラシリーズ3部作で苦楽をともにした特撮スタッフの記念写真。左から、特撮助監督・神谷誠氏、特撮照明・林方谷氏、三池敏夫氏。

「特撮のDNA 平成ガメラ3部作 展/東京タワーにギャオス飛来!」は8月28日まで。13日には特撮プロップ修復師・原口智生氏、20日には特撮美術デザイナー・三池敏夫氏のトークショーが機械振興会館B3F(東京タワーより徒歩2分)で開催される。

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