どこに行っても暑い東京の夏。いっそのこと日光も届かない地下のワイン蔵みたいなところに逃げ込みたい! ……なんて、つい考えてしまいますよね。「でも、そんな洞窟みたいなところ、東京にあるわけない」と思ったあなた、諦めるのはまだ早い。

  • 七色に照らされて浮き上がる自然の造形美は、言葉で言い表せないくらい神秘的

実は、東京にも立派な鍾乳洞があるのです。その名も「日原(にっぱら)鍾乳洞」。関東最大級の規模を誇るこの鍾乳洞に、ライターで東京街歩き研究家の中川マナブさんが潜入してきました!

■ラクラク進む電動自転車で、奥多摩の自然満喫サイクリング

日原鍾乳洞があるのは緑豊かな奥多摩エリア。JR青梅線の奥多摩駅からバスで30分ほどのところです。

現地には駐車場もありますが、土日は混雑するため1〜3時間待ちもザラだそう。そこで今回、私が選んだ交通手段はレンタサイクルです。奥多摩駅前で電動サイクルを借り、いざ日原鍾乳洞へ!

緑に囲まれた奥多摩の山の中をのんびりサイクリング。

木陰に入ると、マイナスイオンたっぷりの涼しい風を感じて、とてもさわやか。近くには日原川の支流である小川谷が流れて、木々のさざめき、清流のせせらぎが耳に心地よい! 都会の喧騒とも酷暑とも無縁の「涼」に全身で浸れます。

約1時間のサイクリングで、今回の目的地、日原鍾乳洞に到着。

見学料金(高校生以上800円、中学生600円、小学生500円 ※2022年7月現在)を支払い、清流にかかる橋をわたると、そこはもう鍾乳洞の入り口です。中からひんやりとした冷気が吹き出して、神秘の地下空間へと誘います。

日原鍾乳洞の総延長は1270m、高低差は134mで、関東で最大級の規模を誇る東京都の指定天然記念物です。一般公開されているのは東西200m、高低差30mのエリアで、一周約40分でまわれます。

■七色に輝く異次元空間! 気分はアドベンチャー映画の主人公

さっそく中に入ってみると……おお~これは涼しいっ! っていうか寒っ! それもそのはず、内部の気温は年間通して11度なんだとか。さすがに1枚、羽織るものを持ってくるべきでした。

それから鍾乳洞は濡れて滑りやすいので履物についても注意が必要です。洞内は狭いので、頭上に注意が必要で帽子があると安心です。また、タオルや手袋を携帯すると便利です。

ちなみに、冬は暖かく感じるようです。

コースはライトで照らされていますが、足元はわりと暗い感じ。地下水の雫が首筋に落ちてきたりして、思わずゾクっとしてしまいます。まるでRPGのダンジョンに迷い込んだ気分です。

少し降りていくと、水琴窟(すいきんくつ)があります。

水琴窟というのは、水を張った瓶などに水滴を落下させ、その音の響きを愉しむ昔ながらの仕掛け。透明感のあるかすかな音色が洞窟内に反響し、なんとも不思議な感じです。岩肌を流れる地下水がキラキラしているのもきれいです。

さらに降りると、空洞になっているところに2体のお地蔵さんが出現! ここは弘法大師学問所と呼ばれる空間で、かの弘法大師がここで修行したとも言われています。

「地獄谷」「三途の川」といった不穏なネーミングの空間を抜けると、突如として目の前にライトアップされた巨大な地下空間が現れます。

七色に照らされて浮き上がる自然の造形美は、言葉で言い表せないくらい神秘的。思わず息を飲んでしまいます。その奥には「死出の山」へと続く階段が。RPGならその先には「ラスボスが待ち受けている」って感じです。

階段を登った先に待ち受けていたのは、ラスボスではなくて縁結びの観音様でした。

周囲の神秘的な雰囲気も相俟って、すこぶるご利益がありそうです。カップルなら、道中のドキドキもあって吊り橋効果も期待できるかも!?

一般公開されているエリアの一番奥には十二薬師が祀られています。

かつてはここに12本の鍾乳石が垂れ下がっていたそうですが、明治時代の探検者が折ってしまったのだとか。十二薬師が祀られているところの天井にはたくさんのお賽銭が貼り付けられていました。

■探検の後は老舗旅館でひとっ風呂! 「東京の奥座敷」の名は伊達じゃない

十二薬師からUターンし、今度は新洞エリアに入っていきます。

新洞は1962年に発見されたエリア。太古からの鍾乳石などが手付かずの状態で残されています。高低差がかなりあるため階段も急で、降る際には転がり落ちないように要注意!

余裕がある人は、岩肌に見える断層もチェックしておきたいところです。

  • 金剛杖

洞内には石筍(せきじゅん)や石柱が多数見られます。

石筍は天井からしたたり落ちた水滴中の炭酸カルシウムが堆積して筍状に成長したもの。石柱は天井からつらら状に垂れ下がる鍾乳管や鍾乳石と石筍が連結してできたものです。

3㎝伸びるのに200年くらいかかるそうで、大自然の悠久の時の流れを感じます。「金剛杖」と名付けられた石筍にいたっては、なんと全長2.5m!間近でみると、その巨大さに圧倒されます。

  • 白衣観音

金剛杖の反対側にある大きな石筍は「白衣観音」と呼ばれています。まるで観音様が鎮座しているように見えることから、その名が付けられたのだとか。

  • 鳩胸

ダンジョン探索もいよいよ終盤。狭い空間を頭をかかめながら進んでいけば、なつかしの入口=ゴールに到着です。

暗い鍾乳洞から一歩外に出ると、夏の緑が目に鮮やか。草木の香りと共に酷暑も一気に戻ってきます。40分ほどの鍾乳洞探検でしたが、異次元空間に迷い込んだかのような非日常感を味わえました。

  • 日原街道

帰りは日原街道をゆったりサイクリング。奥多摩駅までの途中には渓流釣りが体験できる釣り堀やレストランがあり、奥多摩の魅力を「食」からも楽しめます。

さらに奥多摩駅の近くには、創業200年の老舗旅館「三河屋旅館」も。こちらは宿泊客以外も日帰り温泉に入れますから、見逃す手はありません。

展望風呂で多摩川の景色を眺めつつ、汗を洗い流してさっぱり爽快。「奥多摩、So cool!」な小旅行となりました。

■日原鍾乳洞

場所/東京都西多摩郡奥多摩町日原1052

営業時間/9:00〜17:00(12/1〜3/31は16:30まで)※12/30〜1/3は休業

公式サイトをご確認ください。

※夏の期間の旧盆時期と土日祝日は車で大変混雑し、駐車場も満車による渋滞が予測されます。警察による規制が入る場合もあります。また、コロナ禍で車での来場者が増えており、狭い道でのすれ違いが出来ない、といった理由での渋滞も増えておりますのでご注意ください。