女優の長澤まさみが、10月期のカンテレ・フジテレビ系新ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(毎週月曜22:00~)で主演を務めることが26日、明らかになった。
長澤にとって『コンフィデンスマンJP』(2018年/フジテレビ)以来4年半ぶりの連続ドラマ主演作となる今作は、実在の複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント作品。スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那(長澤)と、彼女に共鳴した仲間たちが、10代の女性連続殺害事件の犯人とされ、死刑が確定した男の冤罪疑惑を追う中で、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描く。恵那と共に行動するうだつのあがらない若手ディレクター・岸本拓朗役として眞栄田郷敦、恵那と拓朗の先輩で報道局のエース記者・斎藤正一役として鈴木亮平が出演する。
長澤演じる主人公の恵那は、大洋テレビのアナウンサー。入社当初は「10年に一人の逸材」ともてはやされ、ゴールデンタイムのニュース番組のサブキャスターを務める。しかし激務のなかで疲弊し、人気に陰りが見え始めたところで週刊誌に路上キス写真を撮影され番組を降板。現在は社内や視聴者から「落ちぶれた」と後ろ指をさされながら、“制作者の墓場”と揶揄される深夜の情報番組『フライデーボンボン』のコーナーMCを担当している。
地上波連続ドラマ初主演を務めた『カナカナ』(22年/NHK)での好演が話題の眞栄田が今回演じる拓朗は、恵那と共に『フライデーボンボン』で芸能ニュースを担当する新米ディレクター。弁護士夫婦の息子として裕福な生活を送り、なんとなく始めた就活で大洋テレビの制作部に配属される。自己評価が高く能天気でマイペースな性格だが、ディレクターとしての実力・評価は低く、現場では怒られてばかり。彼もまた“自分の価値”を失った過去の出来事を記憶の底に抱えている。物語は、ひょんなことから拓朗が連続殺人事件の犯人とされる死刑囚の冤罪疑惑を知り、恵那に持ち掛けるところから始まる。
鈴木が演じるのは、大洋テレビ報道局のエース記者・斎藤正一。拓朗の新入社員時代に指導担当だった縁で、連続殺人事件の冤罪疑惑について相談に乗る。面倒見がいい先輩として、そして政権中枢の要人とも懇意な間柄の官邸キャップとして恵那と拓朗の大きな味方となる斎藤は、権力や利権にまみれた政治家たちと巧みに渡り合う。
脚本は、連続テレビ小説『カーネーション』(11年/NHK)や映画『ジョゼと虎と魚たち』(03年)をはじめ数々の名作ドラマ・映画を世に送り出し、今作で初めて民放連続ドラマの執筆となる渡辺あや氏が、演出は長澤も出演した映画『モテキ』(11年)や映画『バクマン。』(15年)をはじめ、同じく数多くのヒット作の監督を務めてきた大根仁氏が手掛ける。さらに劇中音楽を、連続テレビ小説『あまちゃん』(13年/NHK)、大河ドラマ『いだてん』(19年/NHK)、映画『花束みたいな恋をした』(20年)などを手掛けた大友良英氏が作曲する。
タイトルの“エルピス(Elpis)”とは、古代ギリシャ神話で「パンドラの箱(壺)」に唯一残されていたものとされ、希望や予兆・予見とも訳される言葉。今作では、真相に迫っていく過程で登場人物たちがさまざまな「希望」を見出すが、「災い」も降りかかる。パンドラの箱を開けたことでもたらされる混沌の先に残されているのは、希望か、それとも災いか。
コメントは以下の通り。
■長澤まさみ
――企画や脚本を読んで感じたことをお聞かせください。
世の中にある正義って、具体的に何を指しているのか戸惑うことがあります。自分の正義を貫くことも容易ではないし、人それぞれひたむきに今と戦っているんだなって思います。目の前に起こることに夢中になって、明日を生きる。そんな風に人生を歩めたらいいなと思いました。渡辺あやさんの物語と時間の流れに、身を委ねて楽しんでもらいたいです。
――浅川恵那という人間とどう向き合っていきたいですか? これから続く撮影に向けての抱負も含めて、お聞かせください。
自分の中にある、“恵那み”を絞り出して演じたいです。共感することの多い役でした。落ち着いて、起こる出来事に反応していきたいです。
――視聴者へメッセージをお願いします。
スピード感のある作品になるのではないかと思います。登場人物それぞれの息づかいを感じて、自分を重ね合わせて見てもらいたい作品です。最後まで何が起こるか、見届けてください。
■眞栄田郷敦
――企画や脚本を読んで感じたことをお聞かせください。
台本を読んで一番最初に感じたことはキャラクターがみんな人間臭いということ。なんでかなって考えてみると、リアルな人間がみんなもつ弱さや多面性がそれぞれのキャラクターに描かれているからなのかなと感じました。何が表で何が裏なのか、何が正義で何が悪なのか、そういった人間や物事の本質についてすごく考えさせられる台本でした。
――岸本拓朗という人間とどう向き合っていきたいですか? これから続く撮影に向けての抱負も含めて、お聞かせください。
家庭環境や経歴、ルックスなど、一見何不自由ない人生を送っているように見える拓朗ですが、実は大きなトラウマを抱えている人物です。揺らぐことも多く、どんどん心情が変化していく様、人間臭さを表現できればと思ってます。普段はその役のベストを探ることが多いですが、今回拓朗を演じるにあたってはやりすぎと言われるぐらい一度やってみたいと思ってます。題材、役所、共演者の方々を含めてとにかく思いっきりぶつかっていきたいです。
――視聴者へメッセージをお願いします。
世の中や人間のリアルが描かれてる作品だと思います。少なくとも僕はこんな作品見たことないです。みなさんもご期待ください。
■鈴木亮平
――企画や脚本を読んで感じたことをお聞かせください。
これほどのオリジナル脚本にはそうそう出会えるものではありません。初めて読ませていただいた時、その寸分の隙もない、磨き上げられた完成度とエンタメ性に驚きました。冤罪事件を通して主人公たちの内面を、その先に正義や政治の本質までをも描ききった脚本家の渡辺あやさんや佐野プロデューサーたちの気概に心から敬服しました。
――斎藤正一という人間とどう向き合っていきたいですか? これから続く撮影に向けての抱負も含めて、お聞かせください。
忠義と野心、正義と卑怯、愛情と冷酷、相反するものが同居する人物として、個人的に非常に共感できる人物でした。長澤さん、眞栄田くんと息を合わせ、丁寧に、多面的に、人間味のある人物として演じていけたらと思います。
――視聴者へメッセージをお願いします。
今から素晴らしい作品になる予感をひしひしと感じております。この社会の一員として生きることは何かと戦い続けることでもあります。毎日戦っている視聴者の皆様にも、主人公恵那と拓朗の奮闘の中に、一筋の「希望」を見出していただければ嬉しいです。
■渡辺あや(脚本)
「エルピス」というのはギリシャ神話にでてくる「パンドラの箱」の中に最後に残るものの名前で、それを希望とするか厄災とするかで物語の解釈が変わるそうです。10話分の脚本を書きながら私自身も、どれが希望でどれが厄災なのかがわからなくなる瞬間が多々ありました。社会と世界(universe)の関係、人間という奥深い謎と秘密が、視聴者の皆さんの中にも立体化され、登場人物たちと一緒に迷い楽しんでいただけたら作家としても、この同じ社会を生きる一員としても嬉しいです。
■大根仁(演出)
初めての渡辺あや脚本! ずっと撮ってみたかった鈴木亮平! 若手ナンバー1俳優(個人調べ)眞栄田郷敦! そしてそして『モテキ』以来11年ぶりの長澤まさみ!! 既に撮影は始まっていますが、素晴らしい脚本と、俳優たちのプロフェッショナルな仕事っぷりに、毎日心の震えが収まりません。面白いのは当たり前ですが、とにかくヤバいドラマになりそうです。はい、ヤバいです!
■佐野亜裕美(プロデューサー)
渡辺あやさんとこの企画に着手したのは2016年秋のことでした。それからさまざまな紆余曲折があり、その険しかった道のりさえも物語に取り込まれ、こうして素晴らしい出演者の皆さんに参加していただき実現できることが、まだ夢のように感じられます。「実在の事件に着想を得てドラマを制作すること」の重さときちんと向き合いながら、エンターテインメントだからできることを一生懸命考えて、誠実に制作していきたいと思います。