コンセント横にひろがる小人の秘密の世界「こびとシリーズ」や、友達の部屋や高校の教室など日常の風景を精緻に再現したミニチュアがたびたび話題となっているアーティスト、Mozu(モズ)さん。そんな彼のこれまでの作品がギュッと詰まった展覧会「Mozu アートワーク -ちいさなひみつのせかい-」が、7月22日から大丸東京店で始まった!

高校2年生のときに、ミニチュアで再現した自分の部屋が「本物にしか見えない」とTwitterで拡散され、以来その作品が各所で注目を集めているMozuさんは、現在24歳。ミニチュア、トリックラクガキ、コマ撮りアニメという3つの分野で活動する気鋭のクリエイターだ。

  • 「自分の部屋」2014年制作

写真で見たことはあったけれど、生で見るのはやっぱり格別。細部に至るまでの緻密なこだわりと再現性、写真に写っていなかった部分は「こうなってたんだ!」という発見、そのすべてが“ホンモノにしか見えな”さに、あらためて興奮してしまう。勉強机に参考書、雑に置かれた段ボールなど、無造作な雑多さはまさに、思春期男子の部屋という感じ。

  • 「友達の部屋」2017年制作

どの部分に寄って見ても、どの角度から見ても、どこまでもリアル。言われなければ、写真だけではミニチュア作品だと分からないんじゃないだろうか。圧巻のディテール、ずっと見てられる……。

  • 「ゴミ捨て場」2015年制作

少し暗めの会場は、作品にスポットライトを当てることで、その世界観が際立つようになっている。近所のゴミ捨て場に通い、徹底的に観察して作り上げたというだけあって、この「ゴミ捨て場」のリアリティときたら! シールだらけの冷蔵庫にブラウン管のテレビ、ブロック塀にかけ捨てられたビニール傘という光景に、そこはかとなく漂うノスタルジー。ゴミ袋のこの散らかりようは、カラスの仕業かだらしない住人か、なんて想像するのも楽しい。

  • Mozuさん。巨大なコンセントの前で、自身が「こびと」になったよう

この日の会場にはMozuさんご本人も登場し、制作過程について語ってくれた。これらミニチュア作品の制作期間は平均で2~3カ月、長いものだと1年ほどだという。

「1年といっても、うち半年はイヤになって放置している時間もけっこうあります。1作品作る間に飽きて、別の作品を作り始めて、それが飽きたらまた続きを作り始めて……」。ちなみに一番時間がかかったのが、高校3年生のときに約1年間を費やした、こちらの作品。

  • 「教室」2016年制作

自分の通っていた高校をまるごと再現した「教室」は、42席分の机と椅子を作るのに約半年かかったという。

「その年は(他のことが)なにもできず、学校生活1年が犠牲になりました」と笑いつつ、1脚を作るのに4時間、それを42セット作る作業はとても楽しかったそう。

  • 「こびとの秘密基地」2019年制作

どれも大好きなので決めるのはむずかしい……と迷いながらも、Twitterで60万以上「いいね」がつき、海外でも反響のあった代表作「こびとの秘密基地」を、自身のイチオシ作品に挙げる。「動画や写真だけでなく、ぜひ生でも見てもらいたいと思います。ミニチュアは生で見るのが最高なので」。

  • 「こびとの駅」2020年制作

一番楽しい瞬間は、作ったものが完成して、みなさんにお見せしたときの反応を見る時間だと話す。Twitterに作品を投稿したときの反響はもちろん、展覧会の端に立ってお客さんが作品を見ているのをじーーーっと見ているのがすごく好きだという。実際、こんなに精巧でユーモラスなミニチュアを見せられたら、興奮しないわけがない。

  • 「こびとの公衆電話」2020年制作

ちなみに「ミニチュア作品の写真撮影のコツ」は、全部入るように引きで撮るのではなく、「思い切ってグッと中に寄って、あえて映らない部分をつくること」と、「ミニチュアの中に自分が入ったらどこに立つのか、目線を考えること」だそう。

「上から撮っちゃうと、“神様の視点”というか、ありえない目線になるので、自分がこの部屋に入ったら目線はこのくらいだろうなと考えて、その高さから撮るとかなり自然になると思います」。

  • 「こびとのベランダ」2021年制作

この展覧会ではミニチュアだけでなく、トリックラクガキやコマ撮りに加えて、絵コンテや設計図など制作過程がうかがえる資料も展示され、Mozuさんの世界が網羅されている。一部の作品をのぞいて写真撮影もOKだから、ぜひ驚きの作品群を生で体感し、この“架空の世界のリアリティ”を、写真で表現してみてほしい。

Information
「Mozu アートワーク -ちいさなひみつのせかい-」
期間:8月9日まで
会場:大丸東京店 11階催事場
時間:10:00~19:30
料金:一般1,300円/高・大学生900円/小・中高生700円/未就学児童無料