こころのオンライン相談アプリ「mentally(メンタリー)」が7月5日に正式ローンチされ、オンラインで記者会見が行われた。同じ悩みを抱え、乗り越えてきた当事者に話を聴いてもらうピアサポートに特化したアプリで、メンタルヘルスの相談に対するハードルを下げて互いに支えあう社会を目指していく。

日本はメンタルヘルス後進国

はじめに、株式会社Mentally 代表取締役CEOの西村創一朗氏より、「mentally」の概要と日本のメンタルヘルスの現状について解説された。

メンタルヘルスは世界中で大きな課題となっている。日本は諸外国と比較してうつ病の患者数は120万人程度と極めて低い有病率とはなっているが、潜在的な患者数は400万人にものぼるといわれている。また、自殺率は先進国の中でも飛びぬけて高くG7でワースト1位になってしまっている。さらに、コロナ禍を受けてメンタルに不調を感じている人やうつ状態で苦しむ人は急増。コロナ以前と比べ、2.2倍になっているという調査もある。

日本ではうつの有病率が非常に低いにもかかわらず、精神疾患による自殺率がなぜ高いのか。それは、軽度の不安障害や適応障害などから重度のうつ病に至るまで、医療機関やカウンセリングを受信することに非常に高いハードルがあるためだと考えられる。つまり、少しでも「一人でも考え込む人」を減らすことが、メンタルヘルス対策の大きなカギになるといえる。

「mentally」は、相談のハードルを低く、カジュアルに悩みを相談できるアプリで、その相談相手は”経験者”に特化。ピアサポートであることで、相談ハードルを極限まで下げられると考える。身近な人には話しにくいことも、同じ経験をしている人に相談すれば、その人ロールモデルにすることもできる。現在、「mentally」公認メンターは、多種多様な経験を持つ約70名が実名で参画。ガイドラインに準拠したガイダンス受講したうえで、相談を受けられるようになっているという。

「mentally」では、無料で相談できるQ&A形式と、有料の個別相談形式を設けている。今後は音声通話での相談やビデオ通話での相談などもできるようになる予定だ。

世界が注目するピアサポート

メディカルディレクターで、医学博士の堤多可弘さんによると、世界的にもピアサポートへの期待は高まっているという。

ピアサポートは、サポートの提供者にも受け手にも、医療福祉全体に有効性があると考えられており、既存の医療や福祉の代替ではなく、有効な別の手段と捉えられているという。予防医学や医療では対応しきれなかった隙間を、「mentally」がサポートし、当事者のコンディションを良くする可能性があると考えられる。

実際にβ版に参加したユーザーからは「複数のメンターの方のご意見をいただけることが良かった」、「共感できるものも多く勇気をもらえました」、「『自分だけこんな些細なことで悩んでるのではないか』という気持ちが薄れます」といった、好意的な声があがっていた。

公認メンターの声「あの時に居て欲しかった存在に」

後半では、公認メンターの石井大樹さん、眞壁桃子さんが、自身の経験やメンターとしての想いなどが語られた。

証券会社に新卒で入社し、パワハラに悩まされたという眞壁さんは、「まさか私が、という気持ち。『そんなにつらいなら○○すればよかったのに』という心無い言葉ももらった」と当時を振り返る。「体重が減り、眠れない日が続いて、最終的に仕事に行く玄関のドアが開けられずに泣きながら父親に電話した。そこまで、自分では気づけなかった。自覚を持てなかったんです。拾えるうちに、小さなサインにちゃんと対処できればよかったんじゃないかと思っています」と、小さなサインのうちに対処できれば、大きな不調にならなかったのでは、と考えているという。

学生時代から会社経営を行っていた石井さんは、「経営者は孤独とよく言われますが、まさにそういう状況になってしまった。自覚はあって、メンタル的にヤバいと思っていた」と、不調の自覚はあったという。しかしながら「病院は診断や処方はしてもらえるが、悩み自体の解決やヒントをもらえるわけではないんです。あの時、そういうヒントは欲しかったですね。結果的に自己解決するしかなく、不調の期間が延びてしまったように思います」と、悩みを解消する方法は自分で見つけるしかなかったので、誰かに相談したかったと振り返った。

メンターとして活動してみて、眞壁さんは「わたしだけじゃないんだな、って思いますね。逆に、あなただけじゃないんだよ、とも伝えたい。だから頑張れってことじゃなく、そうやって寄り添ってくれる人がmentallyには必ずいるというのが非常に大きい。メンタルが曖昧で、グレーな状態の人に必要とされるサービスだと思います」と話し、「あの時の自分が使いたかったな、って思いますし、あの時にいて欲しかった存在にメンターとしてなりたいと思います」とメンターとしての想いを語った。

  • mentallyでは、全メンターにお悩み相談が可能。そのほか、他の相談者のお悩みを参考にしたり、共感を示すことも。1人のメンターに相談することもできるそう

石井さんも「まだ深みにはまっていない方たちにメンターがアドバイスすることで、病気になったり、どうしようもない状態になったりしないよう、予防できていると実感しています。そのうえで、改善するためにどうすればいいか、という質問もいただくので、予防と改善という点で力になれていると感じます」と述べ、「私は運営メンバーではありませんが、絶対に必要なサービスだと思っているので、このサービスを成功させたいです」と、決意を語った。

こころのオンライン相談アプリ「mentally(メンタリー)」が7月5日より利用開始。利用料は初回利用が500円/15分、通常利用が1,980円/30分。PCブラウザやスマートフォンブラウザで利用できる。