『疲労の新常識』をテーマにしたプレスセミナーが16日、都内で開催。疲労専門医が登壇したほか、タニタ食堂による「疲労対策メニュー」も紹介された。新型コロナウイルス感染症の流行とともに、COVID-19罹患後に疲労感などの症状が持続する後遺症(Long COVID)の存在が社会問題となっている現在。セミナーでは、コロナ後遺症の患者を対象にした先行論文の内容も明らかにされた。

  • セミナーのテーマは「疲労とコエンザイムQ10不足の関係について」

そもそも疲労とは?

冒頭、疲労とコエンザイムQ10(以下、CoQ10)不足の関係について解説したのは、疲労専門医でナカトミファティーグケアクリニック院長の中富康仁氏。コロナ後遺症の一例として、疲労、強い倦怠感、ブレインフォグ(頭がボヤッとする)が数カ月から年単位で続くことを紹介した。

  • 疲労、睡眠を専門としているナカトミファティーグケアクリニック院長の中富康仁氏

そもそも疲労は、身体へのダメージと回復力のバランスが崩れることで発生する。そして病気との見極めが難しい。「睡眠不足、過労、ストレスなどが溜まると、身体の色んなシステム細胞、例えば神経、筋肉、免疫機能などが活発に動く状況になります。細胞の中でエネルギーを回して使っていると、エネルギーを使った燃えカス、酸化ストレスも溜まってきます。悪いものをどんどん変えていく新陳代謝は、身体の大事なシステムのひとつですが、これが増えすぎて回復力を超えてしまうと、ダメージの方が強くなる。身体の中で、壊れたものの方が多くなってしまう、これが疲労のメカニズムです」(中富氏)。

疲労の段階には、一過性の「急性」、それが数カ月単位で続く「亜急性」、6カ月以上続く「慢性」がある。そして慢性疲労症候群の患者に抗酸化作用のある還元型CoQ10を飲んでもらったところ、計算課題が改善したほか、睡眠の状態、神経のバランスも改善したという報告も得られた。

さて、ここで中富氏は「第18回 日本疲労学会・学術集会」(2022年6月11日)で発表された内容についても言及。後遺症(Long COVID)患者、あるいはワクチン接種後に後遺症が残った患者の疲労について研究したもので、対象者は1,747名と統計データとして利用できる規模ではないものの、いずれも血中CoQ10の濃度が低かった、とした。なお血中CoQ10は、ストレスや病気などで減少することが知られている。

  • 疲労回復におけるCoQ10の働き

最後に、中富氏は「誰しもが感じる“疲労”ですが、実は医学的には捉えにくい。ここでCoQ10という物質が非常に重要になります。CoQ10は細胞のミトコンドリアで働く、誰しもが持っているエッセンシャルで非常に大切な物質。疲労の回復に必要なエネルギーの産出と、活性酸素の抗酸化、その両方を担当します。血中CoQ10の値が落ちている状態だと、病気になりやすい。コロナにも関係している可能性があり、さらに研究を進めていく必要があります。いま日本に元気がないと言われるなかで、個人や組織がパフォーマンスを最大限に出していくことが社会のテーマになっていますが、そこで健康度を維持していくということが重要になってくる。栄養のバランス、睡眠の質を普段から維持しておき、備えることが大事である、と考えています」とまとめた。

タニタ食堂の疲労対策メニューを紹介

続いてタニタ食堂「疲労対策メニュー」を監修した、和洋女子大教授 鈴木敏和氏が登壇。疲労対策として、どんな物を食べれば良いのか解説した。

鈴木氏によれば、血中CoQ10の約25~40%は食事由来。そして動物性たんぱく質の摂取量と関連性があることが明らかになったという。鈴木氏は「私の研究室の学生である20代女性(48名)に協力してもらい調査した結果、肉食を2週間制限すると血中CoQ10値が約9%減少することが分かりました」と説明。特に肉、青魚にCoQ10は多く含まれているそうだ。

  • 和洋女子大教授 鈴木敏和氏

そこで鈴木氏は、タニタ食堂のメニューとして疲労対策をテーマにした「一汁二菜定食」(全3種類)を考案した。たんぱく質40g前後を含み、一定食あたり500~700kcal前後、塩分量は3.5g以下、野菜量はたっぷりの150g前後で、1食でCoQ10を5mg以上摂取できるとしている。「バランスのとれたメニューです。運動習慣のある人、活動的な高齢者、ふだん肉や魚の摂取が少ない人などにオススメです」と鈴木氏。丸の内タニタ食堂において、6月20日から7月29日までの期間限定で提供する(メニューは週替わり)。

  • 「豚しゃぶ坦々ごまだれ定食」

  • 「はまちの豆乳マスタードソース定食」

  • 「豚天 梅ごまおろしソース定食」

血中CoQ10の濃度を測る

最後にマイクロブラッドサイエンス社から西村知晃氏が登壇し、血中CoQ10の濃度を測れる「簡易検査キット」を紹介した。指先から血液を採取し、検体採取を行うMBSキャピラリーという技術を使用。同社ではクラウドベースの「Lifee(ライフィー)」を通じてサービスを提供する。受検者は手持ちのスマートフォンを使って検体の受付、および結果の閲覧、過去の数値の推移の比較などを行える仕組み。料金はおよそ1万円~1万5,000円となっている(サービスの内容にもよる)。

  • マイクロブラッドサイエンスの西村知晃氏

  • Lifeeの利用イメージ。同社では、継続して検体測定できるサービスを提供する

CoQ10とコロナの関係は?

このあと質疑応答でメディアから、血中CoQ10の濃度が下がれば新型コロナウイルスにも罹患しやすくなるのか、と聞かれた中富氏は「まだエビデンスとなるデータがない状態。今後、明らかになってくると思います」としたうえで、「これはあくまで私見ですが、CoQ10の濃度が低いかたはいろいろな病気になりやすい。いわば健康度が低い状態です。ウイルスの感染力と身体の免疫力とのバランスの問題になるので、普段から回復力を高めておくことが大事だと考えています」と回答。

またCoQ10の吸収が良くなる食べかたについて聞かれた鈴木氏は「CoQ10はイソプレノイドという構造を持っていて脂溶性が高い。油と一緒に摂取することで良く吸収されるとされています。このほか私たちの研究では、味噌と一緒に摂取すると吸収が良くなるとの研究結果も出ています」と説明した。