NHKの連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか)で、念願の朝ドラ初出演を果たした上白石萌歌。演じるのは、黒島結菜演じるヒロイン・比嘉暢子(ひが・のぶこ)の妹で歌の上手な歌子役だ。adieuとして音楽活動もしている上白石にはぴったりの役どころだが、沖縄の言葉や三線の練習など、陰でいろんな努力を重ねたからこそ、みずみずしい歌子役ができあがったようだ。

■黒島結菜らは「本当のお兄ちゃん、お姉ちゃんだなと」

『ちむどんどん』比嘉歌子役の上白石萌歌

『ちむどんどん』は、本土復帰50年を迎えた沖縄の本島北部、やんばる地域を舞台に、おいしいものが大好きな暢子を主人公に、4兄妹や家族の奮闘を描く物語。上白石演じる三女の歌子は、歌をこよなく愛する女性であり、幼い頃から病気がちでかなり引っ込み思案な性格だ。

暢子、歌子のほか、お調子者の長男・賢秀役を竜星涼が、努力家の優等生である長女・良子役を川口春奈が演じている。末っ子役の上白石は3人の兄や姉たちについて「皆さん、あてがきなんじゃないかと思うくらいすごく役と似ています。だから私も、皆さんをご本人というよりも、役として見てしまっているし、最近は一緒にいても、本当の兄妹のようになってきています」と、3人との固い絆を口にする。

「ニーニー(竜星涼)は明るくてずっと家族の真ん中にいて私たちを笑わせてくれるムードメーカーです。黒島さんは兄妹のなかでもすごくニュートラルで男っぽさも持ち合わせています。潔くて、自分の志すところに真っ直ぐ行くような感じです。良子ネーネーは川口さんの持つ芯の強さや正義感がすごく似ていると思います。だからこの先、皆さんとまた共演しても、ニーニーとかネーネーと呼んでしまうんじゃないかと思うくらい、本当のお兄ちゃん、お姉ちゃんだなと思っています」

本作が念願の朝ドラ初出演となったが、夢が叶った心境を尋ねると「私は同じ役と1年間向き合うという経験を今までしたことがなかったです。長距離走というか、ゴールはまだまだ先だから、そこに向かってどう役と自分をリンクさせていくかとか、どうキャラクターを成長させていくかということを日々考えながら演じていますが、それはすごく楽しいです」と笑顔を見せる。

その一方で「他のキャストさんとの関わりのなかで、すごく長い時間をかけて描いていくので、難しさも感じています。例えば、午前中に演じたのは16歳の歌子だったのに、午後は28歳になっていたりと、時間軸もバラバラに撮るので、その年齢感を出すのが大変です。特に自分の年齢を超えた役をやることは難しいなと感じています」と長いスパンの撮影ならではの苦労も述べる。

■自分の名前が入った役「今まで以上にシンパシーを感じる」

歌子の澄んだ歌声は、何度も人々の心を癒やしてきたが、常に歌子として感情移入しながら歌い上げているという上白石。「例えば『翼をください』なら、自分にはない、人と同じような健やかさや幸せみたいなものを願うような気持ちで歌っています。なるべく真っさらな歌い方をするというか、歌の持つニュアンスだけではなく、その時の歌子の心情を意識しています。それは自分だけじゃなく、比嘉家の人たちの状況ともリンクしているところがあり、そのつなぎ目が歌子の歌であればいいなとも思っています」

出産のために里帰りしていた良子が産気づいた時、歌子が「椰子の実」を歌って励ましたシーンも非常に味わい深かったが、「あのシーンは良子ネーネーの祈りのようなものを感じました」と振り返る。

まさに“歌子”という名が体を表しているが、“上白石萌歌”にも“歌”が入っている。「自分の名前にある漢字がそのまま役につながることってこれまではなかったので、今まで以上に役へのシンパシーを感じます。沖縄の歌やドラマの中での歌みたいな要素を担う役でもあるので、精一杯取り組みたいと思っています」と語る。