ランボルギーニのV型10気筒自然吸気エンジン搭載モデル「ウラカン」に新モデル「ウラカン テクニカ」が追加となった。ウラカンの最終型とも噂される「テクニカ」だが、そもそもなぜ、テクニカと名乗っているのか。スペインで試乗してみると、その理由が理解できた。

  • ランボルギーニ「ウラカン テクニカ」

    ランボ「ウラカン テクニカ」にスペインで乗った!

「ウラカン」の最終型(?)を求めてバレンシアへ!

ウラカンのデビューは2014年。初代「LP610-4」は文字どおり610馬力を発生する5.2LのV10を搭載し、7速DCTを介して4輪を駆動するモデルだった。デビュー直後に富士スピードウェイ本コースで行われた体験試乗会「ESPERIENZA」、米国コロラドのサーキットで開催された雪上試乗会「WINTER ACCADEMIA」で試乗し、また一般道では坂の多いサンフランシスコの街中や北海道の大自然の中で走らせたが、いずれのステージでも先代「ガヤルド」から大幅に進化した乗り味や運転のしやすさに感動したものだった。

2016年にはRWDの「LP580-2」(580馬力)が登場。ヘビーウェットの鈴鹿サーキットで試乗した(正直、怖かった!)。さらに2017年には、640馬力までパワーアップした「LP640-4」に富士で試乗。2019年の「ウラカン EVO」ではランボの本社があるイタリア・サンタアーガタから北イタリアのアルプス(ワインディングの一部はアイスバーン!)まで往復し、2020年に登場した「STO」(ほぼサーキットバージョン)は、またまた富士で体験していた。

そんな中、しばらく開催されていなかった同社の海外試乗会がひさびさに復活するとの連絡が。それも、ウラカンの最終型ではないかと噂され(実際は最後から2番目?)、2022年に東京・六本木の「The Lamborghini Lounge Tokyo」で日本初公開となったばかりの「ウラカン テクニカ」がテストカーだというので、取るものも取りあえず参加してきたのが今回の試乗記だ。

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    これが最終型? 「ウラカン テクニカ」に試乗

サイクリストで混雑する山道も楽々

コロナ禍とロシアによる戦争というWパンチの中、筆者がはるばる訪れたのはスペインの「バレンシア・サーキット」(通称の「リカルド・トルモ」は地元出身の名ライダーの名前)。二輪の「MotoGP」や「スーパーバイク世界選手権」で有名なコースだ。全長約4km、メインスタンド前のストレートは900mほどで、コーナーの数は14個。欧州では稀な左回りで、周囲がぐるりと観戦スタンドに囲まれているという形状がとても珍しい。

これから乗るウラカン テクニカの主要諸元をおさらいしておくと、ボディサイズは全長4,567mm、全幅1,933mm、全高1,165mmでホイールベースは2,620mm。シャシーはアルミとカーボンのハイブリッド構造で、ボディはアルミと合成材料を使用している。ドライバー背後の5,204cc自然吸気V10エンジンは最高出力640馬力(470kW)/8,000rpm、最大トルク565Nm/6,500rpmを発生。7速デュアルクラッチトランスミッションで後輪を駆動する。前後重量配分は41:59、乾燥重量1,379kgのボディによりパワーウェイトレシオは2.15kg/HP。0-100km/h加速3.2秒、0-200km/h加速9.2秒、最高速度325kmという1台だ。

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    停止状態から時速100kmまで、わずか3.2秒で加速する「ウラカン テクニカ」

午前中はサーキット外の高速道路と山岳路を150kmほど走るプログラムだ。ヨーロッパは自転車天国なので、山中のワインディングでは数多くのサイクリストたちがロードレーサーを走らせている(事前に聞いていたのは本当だった)。「こうした場所で自転車を追い抜く際には、クルマとの間隔を1.5m以上とってから行うこと」との道路標識があって、前に出るにはより慎重にならなければいけない。

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    サイクリストでごった返すスペインの山中を駆け抜ける「ウラカン テクニカ」

ただし、ウラカンはアイポイントが低くても前方視界が良好なので、狭い道路でも十分な安心感がある。バレンシア郊外の山中にはところどころに村があって、そうした場所には必ずクルマをスピードダウンさせるバンプがあるのもヨーロッパの特徴。リフターで車高を上げていても、自分のお尻まで少し浮かせながら通過してしまい、思わず笑ってしまった。

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    アイポイントは低いが視界は良好

120km/h制限の高速道路では「STRADA」(一般道)モードで7速を使い、静かにのんびりと走ることができた。ロングドライブでも穏やかで疲れないセッティングになっていることに気付かされる。

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    高速道路は静かにゆったりと走れる

バレンシア・サーキットでSTOを追っかける

午後からは待望のサーキット試乗だ。プロドライバーが運転する先導車のSTOと筆者が乗るテクニカの1:1方式で、周回数は4周×3スティントの計12周。1周目はステアリングの「ANIMA」(ドライブモード)を「SPORTS」にしてコースに慣れ、2~3周目は「CORSA」(サーキット)モードでアタック、4周目はクールダウンというパターンを繰り返す。

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    先導車「ウラカン STO」を追いかける形でサーキットを試乗

どんなコースなのかはぜひとも検索などしてご覧いただきたいが、1周をリプレイしてみると、3速でターン1を立ち上がって、全開で少し登りの直線を加速、フルブレーキで4速から2速に落としてターン2を抜け、3速のまま3を過ぎて2速でターン4へ、3速で5、2速で6、4速で7、ターン8は3速、フル加速しつつ9、10を4速で過ぎたら複合の11を2速、4速まで全開で加速し、一瞬3速に落としてターン12をクリア、インベタでゆるい左回りのターン13を4速キープのまま高速でクリアし、最終のターン14は下りの左ヘアピンなのでブレーキングとステアリングのタイミングを図りつつ2速で旋回、ストレートでは7速でギリギリまでブレーキを我慢して250km/hをオーバーし、左のターン1へは3速~4速で縁石を舐めて、さらに外側のグリーンゾーンに右前輪を突っ込みながらクリアする、といったイメージだ。

先導車からはヘルメットに装着したインカムを通じて、「ここで2速に落として、今3速、ここで4速にアップ、それフルブレーキング!」といった感じで、シフティングやブレーキングのタイミングの指示が絶えず聞こえてくるので、初めてのコースをクリアしていく作業がとてもわかりやすい。そして車間が少しでも開くと、「プッシュ! プッシュ!」の声が。

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    プロドライバーから愛のある(?)指導を受けつつサーキットを駆け抜ける

Editing by AKIRA Hara

コース1周の約2分間がとても楽しいのは、どのギアでも8,000rpmを超えるレッドゾーン近くまで一気に回ってくれること、パドルシフトによる変速が一瞬で終わること、シフトダウン時に遠慮なくアフターファイヤ音が炸裂すること、過激なSTOの「Trofeo」(レース)モードに比べテクニカのCORSAモードはわずかに抑制が効いていること、統合制御の「LDVI」と後輪操舵が大小の各コーナーで破綻なく姿勢を制御してくれること、前380mm/後356mmのカーボンセラミックブレーキが最新のエアフローによる冷却によって最後まで音(ね)を上げないこと、ブリヂストン「Potenza Sport」タイヤのグリップがすばらしいこと(毎周回後に同社スタッフが4輪の状態をチェックしていた)、新しいコネクテッド・テレメトリーシステムによって自分のドライビングを走行直後にスマホなどでしっかりと解析できること、などが挙げられる。

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    どんなコーナーも破綻なく抜けていく「ウラカン テクニカ」

  • ランボルギーニ「ウラカン テクニカ」

    ステアリングの「ANIMA」で走行モードを選択

  • ランボルギーニ「ウラカン テクニカ」

    タイヤをチェックするブリヂストンのスタッフ

走行感覚としては、先に富士で乗ったSTO(今回の先導車)が強烈なドラッグ(上から押さえつけるような力)を発生させていたのに対して、テクニカは気持ちよく前方に伸びて加速していくイメージ。STOはヒリヒリとした感じを伝えてきたが、テクニカはほんの少しだけ、角が取れたような感覚だった。

1日をフルに使って3つのドライブモード全てを味わい尽くした今回のバレンシア試乗会。あらゆる状況でベストな性能を発揮するため、妥協なく最新の技術を盛り込んだのがウラカン テクニカだ。

「テクニカはRWDとサーキット向けのSTOのちょうど中間にあたり、テクノロジーとパフォーマンス、進化したデザインのV10自然吸気エンジンモデルとして、ウラカンシリーズを完成させるクルマです」と語るステファン・ヴィンケルマンCEOの言葉通り、最高の「技術=テクニカ」を体現する出来栄えだった。

  • ランボルギーニ「ウラカン テクニカ」
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