「走る」「曲がる」「止まる」はクルマの基本だが、それらを突き詰めた時、クルマはどんな世界を見せてくれるのか。答えのない問いかもしれないが、このクルマにはヒントがあるような気がした。以下、ランボルギーニ「ウラカンEVO」の試乗レポートをお届けする。

  • ランボルギーニ「ウラカンEVO」

    ランボルギーニ「ウラカン」の最終形態「EVO」に富士スピードウェイ(静岡県駿東郡)で試乗した(本稿の画像は原アキラが撮影)

ドライバーの意思を読み取るスーパーカー

“ベビーランボ”と呼ばれるランボルギーニのスーパースポーツカー「ウラカン」。同社トップモデルの「アヴェンタドール」がV型12気筒(V12)エンジンを搭載するのに対し、ウラカンはV10エンジンを搭載することからその呼び名がある。そのルーツは2003年に登場した「ガヤルド」だ。

ランボルギーニはガヤルドのスープアップ(エンジンのパワーを上げること)を継続的に実施。2008年に「ガヤルド LP560-4」、2012年に「ガヤルド LP560-4 mk2」が登場し、2014年には最新モデル「ウラカン LP610-4」へと世代交代を果たした。そのウラカンも2016年の「LP580-2」、2017年の「LP640-4 ペルフォマンテ 」と順調に進化を続け、ついに登場したのが最終進化版の「ウラカンEVO」だ。究極のウラカンに今回、試乗する機会を得た。

  • ランボルギーニ「ウラカンEVO」

    「ウラカンEVO」はウラカンの最終形態だ

富士スピードウェイを舞台とする試乗会は、「ESPERIENZA DINAMICA CORSA」(サーキットで動的挙動を体験、といったような意味のイタリア語)と名付けられた。インストラクションを担当したのは、アウトモビリ・ランボルギーニ 日本/韓国カントリーマネージャーのフランチェスコ・クレシ氏だ。

まず、ウラカンEVOの性能を押さえておきたい。このクルマがコックピットの背後に搭載する排気量5.2Lの自然吸気V10エンジンは、出力を向上するチタニウム製のインテークバルブと、パワフルなサウンドを生み出す軽量なスポーツ排気システムを採用している。最高出力は640ps(470kW)/8,000rpm、最大トルクは600Nm/6,500rpmだ。乾燥重量は1,422キロで、パワーウエイトレシオ(重量と出力の比率、値が小さいほど加速に優れる)は2.22kg/psとなる。停止状態から時速100キロまで加速するのに要する時間は、わずか2.9秒。最高速度は時速325キロだ。ウラカンEVOの特徴について、クレシ氏は以下のように説明する。

「一体型フロントウイングを備えたフロントスプリッターやテール上端の一体型スポイラー、形状を最適化したアンダーボディなどにより、空気力学効率は最大となり、ダウンフォース(下向きの空力)は従来の7倍になりました。また、新しい後輪操舵と四輪トルクベクタリングを搭載していて、これらを『ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ』(LDVI)が一括制御します。具体的にはステアリングホイール、ブレーキ、アクセルペダルのインプット、ギア、『ANIMA』コントローラーで選択した『ストラーダ』(イタリア語で『道』の意)、『スポーツ』、『コルサ』(イタリア語で『サーキット』)の各モードといった情報を通じてドライバーの意図を認識し、車両が次の動きとニーズを予測する『フィード・フォワード・ロジック』が実行されるのです」

公式HPを見ると、LDVIは「ドライバーの意志を理解し、求められる車両の挙動に置き換えることができるコントローラ」と説明されている。要するに、このクルマはドライバーの操作から「どう走りたいのか」を読み取って、挙動を最適に制御しようとしてくれるのだ。「ANIMA」コントローラーとは、いわゆる「ドライブモード」を選択する装置のことである。

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    「ウラカンEVO」は「LDVI」でドライバーの意思を読み取り、最適な車両制御を行う

究極の「ウラカン」でコースイン!

操作方法などの説明は一切なし。いきなり車両に乗り込んで試乗を始める。これが、いつものランボルギーニ方式だ。シートポジションをサーキット走行に合わせて前寄りに設定しつつ周囲を見回すと、センターコンソールにあったダイアルの操作部分がフラットな液晶表示に変更されているのに気がつく。その一方で、戦闘機のトグルスイッチを思わせるエンジンスターターや、ステアリング下部のモード選択用ANIMAスイッチは変更なしだ。右パドルを引いて1速にいれ、先導車に続いてコースインする。

インストラクターからは無線で、「最初の1周は『ストラーダ』モードで慣熟走行、2週目は『スポーツ』モードでペースアップする」と告げられる。コースでは、事前説明にあったLDVIの効果なのか、アンダーステアが出そうな後半の「パナソニックコーナー」も自然にクリアできた。ストレート中央部分では一旦停止した後、全開加速を試す。背後から自然吸気V10エンジンの快音が車内に響き渡ってくる。

  • ランボルギーニ「ウラカンEVO」

    コースインすると、すぐに「LDVI」の効果が確認できた

2度目の走行では、「コルサ」モードで2周の全開アタックに挑戦だ。車体の動きはステアリングやアクセル、ブレーキの動きに敏感に反応し、横G、縦Gがビシビシと体に伝わってくる。「100R」や「300R」(コーナーの名前)では、がっちりと路面をグリップしている様子がシートを通してお尻で感じられる。

最終コーナーを立ち上がり、ストレートに向けてアクセルを床まで踏みつける。前に乗った「ウラカン LP610-4」と加速の感覚を比べると、ウラカンEVOでは空気の厚みや壁をあまり感じなかった。空力性能を最適化したEVOだからなのか、スーッと伸びていく独特の安定感がある。スタートラインを通過する時、スピードメーターにチラリと目を落とすと「283km/h」と表示されているのが分かった。610-4の時は、同じような状況で確か時速270キロ程度だったので、10キロ以上速い。エンジンパワーや空力性能がアップした効果がそのまま出ている感じだ。

  • ランボルギーニ「ウラカンEVO」

    十分に速かった「ウラカン LP610-4」よりも、さらに速いのが「ウラカンEVO」なのである

その後は広いスラロームコースに移動。講師役のレーシングドライバー・高木虎之介氏を助手席に乗せ、例のLDVIを試す。ANIMAで「スポーツ」モードを選択すると、その効果は最大になるそうだ。

狭い間隔にパイロンを置いたスラロームは、ステアリングを120度程度左右に切り込むだけで、リズミカルに駆け抜けることができた。プッシュアンダー(フロントが外側に流れる現象)が出ないので、まるで、ドライビングテクニックが上達したような感覚が味わえる。

また、定常円の旋回では、ステアリングを素早く切ってアクセルを踏み込むだけで、簡単に4輪ドリフト状態になることを確認できた。カウンター(逆ハンドル)を当てることなくアクセルを踏み続けていれば、フロント245/30、リア305/30のファットなピレリ「P ゼロ」(タイヤのこと)を4つとも、ギュルギュルと滑らせながら望む方向に曲がっていくという、かつてない経験ができるのだ。

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    「ウラカンEVO」の4輪ドリフト走行も体験できた

2014年のデビューから4年で1万台以上のデリバリーを記録し、ランボルギーニ史上最も成功したモデルといわれるウラカン。その最終形態であるEVOは2,984万3,274円という価格設定だ。スーパーカーではあるが、乗りやすさと曲がりやすさを兼備した完成度の高いクルマであると感じた。

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