「住宅ローンを組んだら生命保険が不要になる」という話を聞いたことはないでしょうか。

住宅ローンを組む人の多くは、団体信用生命保険に加入するため、万が一のことがあったとしても家族に返済負担が残らずに済みます。しかし団信に加入したとしても、民間生命保険会社の生命保険が完全に不要になるわけではありません。

今回は、住宅ローンを組んだときに生命保険の見直しが必要となる理由や、不要になるわけではない理由について解説します。

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■住宅ローンを組んだら加入している生命保険を見直そう

住宅ローンを組んで団信に加入することで、住宅ローンを契約している人が亡くなったり重い障害状態になったりしたときに、保険金でローンが完済されます。そのため、残された家族は住宅ローンを返済することなく引き続きマイホームに住むことができます。

銀行をはじめとした金融機関が取り扱う住宅ローンを組む場合、原則として団信に加入しなければなりません。ほとんどの金融機関が、団信への加入を住宅ローンの融資条件にしているためです。

団信への加入が融資条件となっている場合、保険料は金融機関が負担してくれるため、住宅ローンの契約者が支払う必要はありません。

▼団信に加入すると万一のときの住居費が不要に

賃貸物件に住んでいる場合、家計を支えている人に万が一のことがあったあとも、引き続き自宅に住むためには家賃を支払っていかなければなりません。

それがマイホーム購入時に団信に加入することで、返済する人が万一のときは保険金でローン残高が保障されるため、残された家族の住居費負担は大幅に減ります。

賃貸住宅に住んでいたときに、残された家族が支払う住居費も踏まえて生命保険の保険金額を決めたのであれば、見直しをすることで毎月の保険料を削減できる可能性があります。

ただし、マンションに住んでいる人は、住宅ローンの返済が免除されたあとも管理費や修繕積立金を引き続き支払っていかなければなりません。世帯によっては、駐輪場代や駐車場代もかかるでしょう。

戸建住宅の場合は、屋根や外壁などの将来的な修繕に備えて毎月一定金額を積み立てるのが望ましいです。そのため、団信に加入したからといって、 住居費の備えがまったく不要となるわけではありません。

▼万一のときに必要となるお金を計算する方法

残された家族に必要な保障額は、万一のときの支出見込額から収入見込額を差し引いて計算します。支出見込額と収入見込額の内訳は、以下の通りです。

支出見込額
・家族の生活費
・子どもの教育費・保育費
・住居費
・自分自身の葬儀費用
・負債の生産資金
・相続費用・相続税
・予備費 など

収入見込額
・遺族年金などの公的保障
・死亡退職金・弔慰金
・自己資産(預貯金・有価証券など)
・配偶者の労働収入 など

残された家族の生活費は、末の子どもが独立するまでは現在の生活費の70%、その後配偶者が平均余命まで生活する期間は、現在の50%で計算するのが一般的です。また、遺族年金などの公的保障は、配偶者が平均余命を迎えるまでの受取額を計算します。

団信加入後の支出見込額から収入見込額を差し引いた金額が、加入している生命保険の保険金額よりも少ないのであれば、保障を減額して保険料負担を抑えることが可能です。

ただし、団信に加入したからといって必要保障額が必ずしも減るとは限りません。「家族の人数が増えた」「子どもが成長して生活費が増えた」などの理由で、支出見込額が増えた場合は、むしろ保障の増額が必要になる場合があります。

■住宅ローンを組んでも生命保険が不要になるわけではない

団信でカバーできるのは、あくまで万が一のときの住居費のみです。残された家族の生活費や、子どもの教育費までカバーできるわけではありません。

遺族年金や死亡退職金などである程度カバーできますが、すべてを補填できるとは限りません。団信に加入しても民間保険会社の生命保険が不要となるわけではないため、万一のときの必要保障額を計算のうえ、適切に備えることが大切です。

万一のときの必要保障額は、お金の専門知識がなければ計算は難しいでしょう。そのため、住宅ローンを組み団信に加入するときは、保険のプロやファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。