ホンダで2輪車(バイク)の開発に携わっていた技術者が起業し、電動3輪マイクロモビリティ「ストリーモ」の開発・販売に乗り出した。立って乗るタイプの電動キックボードに似た乗り物で、日本では2022年中の発売を予定。一般消費者向けは300台限定、価格は26万円で、今日から抽選販売の申し込み受け付けが始まっている。2023年には欧州でも発売の予定だ。

  • ホンダ「ストリーモ」

    ホンダの技術者が起業したベンチャー企業「ストリーモ」が開発・販売する電動3輪マイクロモビリティ「ストリーモ」(STRIeMO)

止まっていても自立する楽しい乗り物

まずは「ジャパンローンチエディション」として一般消費者向けに販売し、事業者向けにはサブスクリプションでの提供も行う(価格は個別に見積もる)。原付一種の扱いとなるため、年齢制限は16歳以上で乗るには免許が必要となり、ヘルメットの着用義務も生ずるが、2年以内に施行予定の新たな法規では免許が不要となり、ヘルメットの着用も任意となる。新法規に適応するストリーモは現在、開発中。ジャパンローンチエディションを買った人には、後から新法規に適応させることができる「アップグレードパッケージ」を用意する方針だ。

  • ホンダ「ストリーモ」

    「ストリーモ」は現行法では原付の扱いだが、新法案が施行されれば乗るためのハードルは低くなりそう。時速6km/hの速度制限とインジケーター表示があれば歩道も走れるようになる見込みだ。ちなみに、最近よく見るノーヘルメットの電動キックボードには真ん中の特例措置が適用されている

  • ホンダ「ストリーモ」
  • ホンダ「ストリーモ」
  • ホンダ「ストリーモ」
  • 「バランスアシストシステム」の採用により停止時でも自立する「ストリーモ」。乗り物が倒れないよう、ライダーが常に気を遣う「バランス取りの不安」を解消することで、安心して乗れる乗り物に仕上げることができたという。スケートボードのような横向きのスタンスではなく、正面を向いて乗れるところも安心感につながる

  • ホンダ「ストリーモ」

    「ストリーモ」は取り外し可能なバッテリーを装着。フル充電だと30kmの走行が可能だが、道路の傾斜や走行状況で距離は大きく変わるとのこと。ちなみに、車両の生産は提携している台湾のメーカーが担当しているそうだ

  • ホンダ「ストリーモ」

    折りたたみ可能。持ち手があるのでキャリーバッグのようにゴロゴロと持ち運ぶこともできる

ベンチャー企業のストリーモを立ち上げたのは、ホンダで2輪車の開発に携わっていた森庸太朗さん。ホンダの新事業創出プログラム「イグニッション」(IGNITION)に応募し、ストリーモの事業化にこぎつけた。

なぜ電動3輪マイクロモビリティを作ろうと思ったのか。森さんはホンダで新規事業創出の仕事を担当していた際、海外でマイクロモビリティに乗ってみたところ「あまり、いい移動体験ではない」と感じ、ホンダで培った知見が同分野でいかせるのではないかと考え、「自宅のガレージで」新たな乗り物の開発に乗り出したそうだ。バイクの開発で森さんは「ライダーと乗り物が対話しながら、気持ちよく走れる」のが乗り物であると考えていたそうだが、海外で乗ったマイクロモビリティは「対話がなく、唐突な動きをする」もので、これでは乗り物とはいえないと感じたという。

  • ホンダ「ストリーモ」

    日常的な5km以下の移動をクルマからマイクロモビリティに替えれば、1人当たり年間1トンのCO2削減につながるとのこと

  • ホンダ「ストリーモ」

    マイクロモビリティの市場は2030年までに1,950億ドルまで拡大するとの予測もある

電動マイクロモビリティは日本でもにわかに増えており、キックボードが走る姿は頻繁に目にするようになった。ただ、ストリーモ社の説明によれば事故率は自転車の18倍とのことで、利用をやめた人の半数が「操縦の不安」を理由に挙げているそうだ。ストリーモは停止時も自立するので転びづらく、石畳やわだちなどでもバランスを崩しにくい。和光市(埼玉県)のホンダで特設コースを試乗させてもらったが、確かに転倒しそうな不安感は少なく、ほんの5分も乗れば、スラロームのような走行もできるようになった。なんといっても走っていて風が気持ちよく、怖さを感じるほどはスピードも出ないので、楽しい乗り物であることは実感できた。

個人向けには販売、事業者向けにはサブスクで販売するストリーモ。事業者向けは工場など敷地内の移動や施設の巡回業務などを想定しているそうだが、これからは海外からの旅行者も増えていくはずなので、観光地でのレンタル事業にもチャンスがありそうな気がした。

  • ホンダ「ストリーモ」
  • ホンダ「ストリーモ」
  • バイクのようにスロットルをひねるのではなく、ハンドル右の持ち手にあるスイッチを押すことで走らせる

  • ホンダ「ストリーモ」
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  • 全開からのフルブレーキを試してみたが、キキーッという具合には止まらなかった「ストリーモ」だが、今はプロトタイプの段階で、市販車では前輪にディスクブレーキを採用するなどストッピングパワーを向上させる方針とのことだ。ただ、この状態でも欧州で試乗した人からは「よく止まるね!」との感想があったという