大人になると、お祝い事や不幸があったときに、ご祝儀やお礼、香典などを渡すためにのし袋が必要となる機会が増えます。のし袋でお金を渡すシーンというのは、相手にとっても人生の節目である場合も多いため、マナーを守らず贈ると失礼にあたるうえ、お互い嫌な思いをすることになります。
そこで本記事ではのし袋について、初めて使用するという人にもわかりやすく解説します。のし袋の選び方からのし袋へのお金の入れ方など、のし袋のマナーをマスターしましょう。
のし袋の基本
まずはのし袋の基本について理解しておきましょう。
のし(熨斗)とは
そもそものしの本来の意味は、おめでたいときなどに添える「干しあわび」を指す言葉です。そこから、のし袋の右上には、のしの装飾があります。のし袋はお祝い事で使うものであって、弔事では使用することはありません。
便宜上、「弔事用のし袋」という言葉がよく使われますが、弔事の際など不祝儀袋として使用する場合には、封筒の右上にのしが付いていないものを使うのが一般的です。
金額とのし袋の関係
のし袋にはさまざまな大きさのものがあり、基本的に大きさは金額に合わせて選びます。また水引の本数も同様で、多いほど見た目が豪華になり、中に入れるべき金額も高くなります。
のし袋が大きければいいというものではないため、中身に合わせて選ぶようにしましょう。
結婚・出産・進学など、お祝い事のご祝儀袋へのお金の入れ方
お祝い事で使用するのし袋は、お祝いの内容によって水引の種類が違います。適さない水引がついたのし袋を選ぶと大変失礼になるため、ぜひきちんと理解しておきましょう。
のし袋の選び方
ご祝儀袋として使用できるのし袋の水引は、「蝶結び」「結び切り」「あわじ結び(あわび結び)」の3種類です。
・蝶結び
すぐに結んだりほどいたりできる蝶結びは、「何度あってもいいお祝い事」「繰り返しても喜ばしいこと」に使います。よって、蝶結びの水引が適しているお祝い事は、出産・進学・昇進など、何度あっても喜ばしいことになります。
「別れる」「何度も結婚する」ということを連想させるため、結婚のお祝いには使わないようにしましょう。
・結び切り
結び切りは一度結ぶとほどけないことから、「一度きりにしたい」「二度と繰り返してほしくない」といったお祝い事で使われます。結婚や快気祝いなどが適しています。
・あわじ結び
あわじ結びは結び切りを応用した結び方で、両端を引っ張ってもほどけず、さらに強く結ばれることで「2人の絆が強くなる」として、特に結婚式などに使われます。
また、水引の色は紅白、金銀などのものを使用します。ちょっとしたお礼をお渡ししたいときには、水引がない「赤棒」と呼ばれるタイプもいいでしょう。赤棒は、水引の位置もしくは封筒の左端に赤い直線が印刷されています。
のし袋のお金の入れ方
ご祝儀袋に使用するお札は新札を用意するのがマナーです。新札は銀行に行って両替をする必要があるため、結婚式などに出席する予定がある場合は、余裕をもって用意しておくようにしましょう。
お金は「中袋(封筒)」や「中包み(半紙のような紙)」に入れてから、外包みで包みます。種類によっては、中袋や中包みがセットになっていないものもあるため、その場合は和紙などの白い紙や封筒に包んで入れるようにしましょう。
のし袋に入れるお札の向き
お札は肖像画がある表側が、袋の表側(金 ◯萬円と記入する側)に向くように入れます。中袋・中包みの表を向けて中身を出した際に、お札の肖像画が現れるように入れるのです。
また、上下は肖像画が先に出てくる向きに入れてください。
お札を何枚か入れる際には、向きは全て同じになるようそろえて入れましょう。1万円札や5千円札など種類の違うお札を入れる場合は、表側に大きいお札がくるようにします。
葬儀など、香典の不祝儀袋へのお金の入れ方
葬儀や通夜に参加する際に持参するお金を包む袋を不祝儀袋といいますが、不祝儀袋の表書きは宗教によって違います。お金の入れ方と一緒に宗教による違いも覚えておきましょう。
のし袋の選び方
不祝儀袋の水引は、宗派を問わず黒白、銀白、双銀で「結び切り」「あわじ結び」のものを選びます。
【仏式(浄土真宗以外)の表書き】
四十九日前までは「御霊前」、それ以降の法事では「御仏前」「御佛前」の名目を使用します。宗派が不明なときは、「御香典」など広く使われる名目を書くといいでしょう。
【仏式(浄土真宗)の表書き】
四十九日前であっても、「御仏前」と書きます。
【神式の表書き】
葬儀にあたる神葬祭では「御霊前」、その後の式年式では「御神前」を使うのが一般的です。「御玉串料」「御榊料」「御神饌料」はどちらでも使用できるとされています。
【キリスト教式の表書き】
「御花料」は、宗派を問わず、また葬儀や葬儀後の法事などの集まりも含め広く使用できます。
のし袋のお金の入れ方
葬儀に包むお金は新札の使用を避けるのがマナーになります。新札は事前の準備が必要となることから、相手に「不幸のために準備していた、待っていた」という印象を与えるため避けるようにしましょう。法事などはあらかじめ日にちが決まっているものですが、気にする人もいるのでやはり新札は避けた方が無難でしょう。どうしても新札しか手元にない場合は、一度折り目を入れれば新札ではなくなり、失礼にはなりません。
お金は「中袋」や「中包み」に入れ、外包みで包むのが一般的です。しかし地域によっては二重に包むと「不幸が重なる」から縁起が悪いとされ、外包みのみの地域もあります。
のし袋に入れるお札の向き
お札の向きは中袋がある場合もない場合も、不祝儀袋の表側にお札の裏側(肖像画がない側)がくるようにします。
上下は肖像画が下になるように入れるとされていますが、地域などによっても違いがあるため、事前に確認しておくといいでしょう。
数枚のお札を入れる際には、お札の向きをそろえて入れることも忘れないようにしてください。
お見舞いののし袋へのお金の入れ方
病気やケガをした人を見舞う際に持参するお見舞い金。病気やケガは相手にとって決して祝うようなものではないため、どういったのし袋を選ぶべきか悩んでしまう人も多いでしょう。
のし袋の選び方
基本的にお見舞いは、相手の全快を願うという意味を込めて、お祝いと同様に紅白の水引を使います。水引の形は「結び切り」「あわじ結び」のものを使いましょう。しかし、重篤な病気やケガでの入院の場合は、水引のない袋を使うこともあります。
また、一般的にお祝い事ではないため、のしはない方がいいとされていますが、地域によってはお見舞いでものしがある方がいいと考えるケースもあります。住んでる地域はどうなのか、事前に確認しておくと安心です。
のし袋のお金の入れ方
お見舞いの場合も、新札はあえて使わないことがマナーとされています。新札を用意していたとなると、「病気やケガを待っていた」という意味にとられてしまうためです。
のし袋に入れるお札の向き
お札の向きは、袋の表側にお札の表側(肖像画)が向くようにします。上下の向きには特に決まりがないとされていますが、肖像画が上になるように入れるケースが多いようです。
何枚かのお札を入れる際には、全ての向きをそろえて入れます。
お宮参り・七五三・地鎮祭など、初穂料ののし袋へのお金の入れ方
初穂料とは、神社に納めるご祈祷料のことをいいます。玉串料ということもあります。
気を付けたいのはのし袋の表書きです。お祝い事の際には初穂料も玉串料も使えますが、一般的に弔事の場合には初穂料は使いません。どちらにすべきか判断に迷うようなときには、玉串料とするようにしましょう。
のし袋の選び方
のし袋は紅白の水引が適しています。お宮参り、七五三、地鎮祭などは、何度あってもいいとされるお祝い事に使われる「蝶結び」の水引を選びます。結婚にまつわるお礼なら「結び切り」「あわじ結び」を選びましょう。
のし袋のお金の入れ方
初穂料、玉串料は新札でなければいけないという決まりはありません。しかし、子どもの成長を祝うお宮参りなどは、「この日のために事前に準備をしていた」という気持ちを表現できる新札にするといいでしょう。
表書きの名前について、ご祈祷を受けるのが子どもの場合は、子どもの名前をフルネームで書きます。地域によっては、父親の名前も一緒に書くこともあるので、事前に調べておくといいでしょう。
のし袋に入れるお札の向き
お札の向きは、袋の表側にお札の表側(肖像画)がくるようにします。上下は肖像画が上になるような向きです。
また、数枚のお札を入れる場合は、お札の向きをそろえることも忘れないようにしましょう。
のし袋の選び方、お金の入れ方をマスターしておこう
のし袋は、お祝い事なのか弔事なのかなど、どんな状況で贈るものかによって、選ぶべきのし袋の種類が異なるうえ、新札を用意する必要があるかや、入れるお札の向きなども違ってきます。
また、包む金額により選ぶべきのし袋の大きさ、豪華さなども違うため、いくら包むのかを決めてから、金額に合わせたのし袋を購入するようにしましょう。
きちんとしたマナーを守って渡すことで、贈る側の気持ちが相手にも伝わるはず。のし袋のマナーは、大人として事前にしっかり覚えておきましょう。