梅雨入り直前。連日各地では日差しの強い夏日が続いています。気温が高くなると、こまめに水分補給をするなど熱中症予防をしている人も多いはず。もし、万が一熱中症になってしまったら、もしくは症状のある人を見かけた場合、どのようにしたら良いのでしょうか。

熱中症と風邪の症状は似ていると言われており、風邪のような症状が実は熱中症の症状という可能性もあるようです。そこで、今回は救急医・外科医の伊藤敏孝先生に、風邪の症状の違いなど熱中症にについて教えていただきました。

  • 「熱中症」と「風邪」の症状はよく似ている?

熱中症と風邪の見分け方とそれぞれの対処法

――熱中症はいつ頃から注意が必要なのでしょうか。熱中症にかかる人が多い時期はありますか。

伊藤先生:熱中症による救急搬送が増え始めるのが、梅雨の晴れ間や梅雨明け前後の夏日です。熱中症は、「高温」や「高湿度」の環境に長時間いたり、そこで運動などをしたりすることで体温が急激に上昇し、体温調節機能が乱れてうまく体温を下げることができず、様々な体調の異常や症状を引き起こすことをいいます。高温多湿で、まだ体が暑さに慣れていないため、梅雨明け前後の急な夏日は特に熱中症に気を付ける必要があります。

――熱中症にかかりやすい人の特徴はあるのでしょうか。

伊藤先生:熱中症にかかりやすい人は、高齢者や乳幼児、妊娠中の人。運動になれていない状態でスポーツを始めた人や、皮下脂肪が多く体内の熱が外に逃れにくい肥満の人、寝不足や疲れで体調が悪い人、二日酔いや下痢などで体内の水分が減っている人にも多いです。熱中症のリスクが最も高いのは高齢者ですが、若い人でもかかる可能性はあります。健康な人でも重篤化する場合があり、決して油断しないようにしましょう。

――熱中症と風邪の症状は似ているそうですが、どのような症状が出るのでしょうか。

伊藤先生:熱中症と風邪の共通した症状は頭痛と倦怠感と筋肉痛です。暑い日に、頭痛やだるさを感じ風邪だと思っていたら、瞬く間に昏睡状態に陥り、救急搬送される患者さんも少なくありません。

――熱中症か風邪かを判断するポイントや、それぞれの症状の特徴を教えてください。

伊藤先生:熱中症にあって、風邪にない特徴としては、意識の混濁や筋肉のけいれん、生あくびなどがあげられます。反対に、熱中症ではなく風邪だと判断しやすいのが咳やのどの痛み、くしゃみや鼻水などがあげられます。

――すぐに病院に行くべき症状、注意が必要な症状を教えてください。特に熱中症の場合、早めの対処が必要な症状はありますでしょうか。

伊藤先生:熱中症の初期症状は、めまい、立ちくらみ、生あくび、筋肉痛です。さらに倦怠感や頭痛もある場合は、周囲に助けを求めた方がいいでしょう。熱中症は急激に悪化することがあり、1人だけになるのは危険です。水も飲めないほどぐったりしていたり、昏睡状態であれば、周囲の人はすぐに救急車を呼んでください

――熱中症のような症状が出たとき、自分でできる対処法はありますか。

伊藤先生:風邪と熱中症の区別は難しいと思います。どちらも頭痛や微熱が出ることもあります。

熱中症の場合は身体を冷やして水分を補給。屋外の場合は木陰などの日陰へ移動し、水分とミネラルの補給を行って体を休めてください。保冷剤などがあれば、体を冷やしましょう。室内では、水分、ミネラルの補給とともに、エアコンや扇風機等の出力をあげる、水を含めたタオルや保冷剤で首、脇の下、大腿のつけ根などを冷やしましょう。

―ちなみに、風邪だった場合の対処法も伺えますか。

伊藤先生:風邪のほとんどはウイルス感染です。風邪のウイルスだけでなく、別の細菌に二次感染し、気管支炎や肺炎、脳症など合併症を起こし重症化することがあります。重症化する前に、早めに風邪の症状を緩和し体力を回復することが大切です。

市販の風邪薬を飲んで半日から1日様子をみましょう。そのまま症状が落ち着いたら治るまで安静に過ごしてください。また最近解熱鎮痛剤が話題になっていますが、風邪薬には解熱成分が入っています。アセトアミノフェンは穏やかな効き目でお子様やお年寄りにも処方されます。常備薬を手元に置いて、早めのケアを心がけてください。市販の風邪薬を飲んで様子をみて改善しない場合は、すぐに医療機関にご相談ください。


まもなく蒸し暑い季節がやってくるので、熱中症の症状や対処法も頭に入れておくと、いざという時にその知識が役立つかもしれません。本格的な夏になる前ですが、水分補給やクーラーを適切に使用するなど熱中症を未然に防いでいきましょう。

取材協力:伊藤 敏孝(いとう としたか)先生


新百合ヶ丘総合病院 救急センター センター長。救急医 外科医。防衛医科大学卒業後、横浜市みなと赤十字病院救急部 部長を経て現職。救急医療のスペシャリスト。日本救急医学会専門医・指導医・評議員、日本集中治療医学会専門医、日本外傷学会評議員・専門医。