マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国の金融政策について解説していただきます。


スタグフレーションとは

スタグフレーションとは、「スタグ」ネーション(停滞)とイン「フレーション」(物価上昇)を組み合わせた造語です。景気の停滞と高インフレが同時に起きている状態を指します。一般に、景気が悪ければ、物価は上がらず。逆に、物価が上がる時は景気が好調なはずです。しかし、2度のオイルショックを経験した70年代、その後遺症のあった80年代前半はスタグフレーションが各国でみられました。

40年ぶりにスタグフレーションに?

80年代後半以降は低インフレが徐々に定着し、スタグフレーションは死語になったかのようでしたが、足もとで頻繁に囁かれるようになりました。コロナ・ショックによってサプライチェーンが障害を起こして原材料価格が上昇し、さらにはウクライナ情勢の緊迫からエネルギー価格が上昇。いわゆるコスト・プッシュ型のインフレは景気に打撃を与えるからです。

足もとで堅調な米景気、マインド悪化に要注意

米国の3月CPI(消費者物価指数)は前年比8.5%と、上述した82年以来の高い伸びでした(4月は8.3%に小幅鈍化)。一方で、1‐3月期のGDP(国内総生産)は前期比年率マイナス1.4%と経済活動の縮小を示しました。

もっとも、1‐3月期のGDPは、在庫投資と純輸出が足を引っ張っており、個人消費、設備投資、住宅投資といった国内民間最終需要は好調でした。4‐6月期のGDPはプラス転換が予想されています。また、雇用の増加が続いており、労働市場は好調です。

ただし、ロシアによるウクライナ侵攻もあって、企業や消費者の先行きの景況感は悪化しています。そうしたマインドの悪化が実際の需要の縮小につながらないか注意してみる必要はありそうです。

重要なカギを握るFRBの金融政策

重要なカギを握りそうなのが、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策でしょう。高インフレと景気鈍化懸念の狭間で難しい舵取りをせまられています。当初、「高インフレは一時的」と高を括(たかをくく)っていたFRBも、インフレ抑制を最優先する姿勢を鮮明にしています。

パウエルFRB議長は5月17日の講演で、「インフレが落ち着く明確な証拠がみえるまで利上げを続ける」、「物価安定を達成するための幾分かの痛み、例えば失業率の少々の上昇は払ってもいいコストだ」、「(大幅な利上げを予想している)金融市場はわれわれの考え方を正しく織り込んでいる」などと述べました。

今後は以下の点に注目すべきでしょう。

まず、米国がスタグフレーション的状況から早期に抜け出すことができるか。

  • インフレがいつピークアウトし、どのようなペースで鈍化するか。
  • 労働市場が示唆するような米景気の堅調は持続するか。

そして、スタグフレーション的な状況が続く場合。

  • FRBは、インフレ抑制にどこまで強い姿勢をみせるか。
  • FRBは、景気の減速、場合によってはリセッション(景気後退)を容認するのか。