お笑いコンビ・とろサーモンの久保田かずのぶの個展「とろサーモン久保田和靖個展 なぐりがき」が、5月10日~16日に東京・渋谷モディにて開催される。芸人アーティストの先輩・ジミー大西からも「とても感性がいい」と称賛されていた久保田。芸人として『M-1グランプリ2017』優勝、ラッパーとしても活躍するなど、多彩な面を見せているが、「いつかこのカードを切ろうと思っていた」とつぶやいた絵にはどんな思いが詰まっているのだろうか――。
■生きる時間を無駄にしたくないから描き始めた
幼少期、絵に興味を持っていた久保田は、父親が弟と共に絵画教室に通う際、「俺も連れて行って」とお願いしたそうだが「お前の絵は落書きみたいだから恥ずかしい」と言われ断られたという。そこからまったく絵は描いていなかったというが、芸能界に入り、ヒップホップやラップをやるなかで、壁落書きなどで絵を描くと周囲からは褒められることがあったという。
「いつかこのカードを切ろう」という漠然とした思いはあったというが、大きな動機となったのが、コンビを組む村田秀亮だ。「相方が新国立劇場というところで俳優業をやり出して、少し時間が出来た分、生きる時間を無駄にしたくないということで、普段は舞台で話を落としているのですが、キャンバスに絵の具を落としたんです」。
描き始めると筆が止まらない。「癒されるし落ち着くというのはありますが、描き出すと7~8時間はぶっ続けで描いています。なんか幸福のドーパミンが脳から出ているみたいで……。この間も、絵を描いたまま番組に行ったら、鼻にアクリル絵の具がついたままで……メッチャ恥ずかしかったんです」。
■芸人もラッパーも絵画も、正解がない
1カ月ですでに40点以上を描き上げたという久保田。芸人として『M-1グランプリ2017』で優勝、ヒップホップの大会でも西東京で1位になったという。絵ではどんなビジョンを持っているのだろうか――。
「そんなものはまったくないですね。『M-1』で優勝はしましたが、お笑いもゴールなんてないじゃないですか。芸人も、ラップも、絵もやりたいときにやる。そういうスタンスは変わらないんです」。
いまはとにかく絵を描くことが久保田を夢中にさせる。しかし、完全に独学。「学校の授業とかは全くダメでした。でも6年ぐらい前に先輩の家で落書きしていたら『絵上手いやん、描いてみたら?』と言われたんです。インスタにあげたりしたら、結構高額で買わせてくださいと言う人もいて……。ぜひ前澤友作社長とかに見てもらいたいですね(笑)」。
芸人、ラッパー、絵画……すべてに共通するのが「正解がないこと」。だからこそ「いまは描き続けている」という。しかし、いつ急に辞めてしまうかもしれないという思いはある。久保田は「結局僕がいろいろなことをやるのは熱量なんで。熱は炎なので、激しく燃えることもあれば、どんどん弱くなって消えたりもする。いまは相方が新国立劇場とか出ていることもあり、その対抗心がキャンバスに色を落としているんだと思う」と語る。