■絵を描いているときは、ほぼ無の状態

自分がやりたいと思ったことをやる。だからこそ「媚は売らない」と断言する。「媚を売るってどういうことかというと、キレイに見せようとすること。自分にメッキを塗ってキレイに見せても、そんなものはいつか剥がれてしまう。そんな愚かなものにはなりたくないですから」。

いま久保田が面白いと思って描いているのが「定食アート」と名付けた絵だという。「定食ってあるじゃないですか。お盆にいろいろな料理が乗っている。その料理を人の顔に見立てて描いた絵。いまメチャクチャ描いているんです」と独特なタッチの絵を見せてくれると「日常にある憎しみや妬みなどが熱量にはなるのですが、絵を描いているときは、ほぼ無の状態なんです。そういった負の感情を考えないで、真っ白なキャンバスに明るい色を落とす……。非常に発散作用になっているのかなと思っています」と絵の持つ作用について語る。

■村田に先祖か前世でめっちゃ世話になっているのかも

個展をやることは村田には相談していないという。久保田は「まああいつはマグロなんで、なんにも言わないんですよ」と述べると「仲が良いとか悪いとか、もうそういう関係性ではない。そこに命が2つあるだけ。それぞれがしゃべっているという……。これが2~3年目のコンビだったら『大切な存在です』とか『M-1狙っています』とか言うのかもしれませんが、もう20年ですからね。なんか村田には先祖や前世かなんかで、めっちゃ世話になっているのかも。だからいまもこうしているのかな」とおちゃらけるが、村田との関係性は言葉にしづらいものだという。

個展に出品する作品は、日を追うごとに続々と増えているという。「正解がないからキリがない」。だからこそやり続けるが、でも「正解は出したいんですよ」と胸の内を明かす。「売れているのに、40歳、50歳になっても結婚しない芸人さんっているじゃないですか。お金もあるし、良い服も着られるし、寄ってくる女性だってたくさんいると思うけれど、結局どれを正解にするか決められないから、キリがない。絵もそれと一緒。だから答えは見つけたいですね」と期待を口にしていた。

■久保田かずのぶ
1979年9月29日生まれ、宮崎県出身。高校時代の同級生・村田秀亮と2002年にお笑いコンビ・とろサーモンを結成。2006年『ABCお笑い新人グランプリ』最優秀新人賞、2008年『NHK上方漫才コンテスト』最優秀賞など数々の賞を受賞し、2017年に『M-1グランプリ』優勝。テレビやラジオなどで活躍し、コンビのYoutubeチャンネル「とろサーモン公式チャンネル」のほか、個人チャンネル「もう久保田が言うてるから仕方ないやん〆」も更新中。5月10日より自身初の個展「とろサーモン久保田和靖個展 なぐりがき」が渋谷モディにて開催。