フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)では、戦火のウクライナから日本にやってきた避難民家族を追った『たどりついた家族 ~海の向こうの戦火と涙~』を、きょう1日に放送。慣れない異国の生活での知られざる苦労や、無邪気に楽しむ様子などがリアルに映し出されている。

取材したのは、同局系情報番組『めざましテレビ』のニュース班。長編ドキュメンタリー初担当となるチーフディレクターの井本早紀氏は「遠い国の戦争のことを、日本に住む1つの家族を通して見ることで、実はすぐ近くで起こっている悲劇だと捉えていただければ」と、番組に込めた思いを語った――。

  • レギナちゃんの小学校へ向かう家族たち(左から マトヴェイくん、和真さん、アナスタシアさん、レギナちゃん、マーヤさん) (C)フジテレビ

    レギナちゃんの小学校へ向かう家族たち(左から マトヴェイくん、和真さん、アナスタシアさん、レギナちゃん、マーヤさん) (C)フジテレビ

■「現状を知ってほしい」と取材に協力

東京・新宿区に住む和真さん(35)・アナスタシアさん(22)夫妻。アナスタシアさんの母国・ウクライナには、母・マーヤさん(44)と年の離れた妹・レギナちゃん(6)、弟・マトヴェイくん(4)が暮らしていた。3月上旬、ロシアの侵攻を受け、アナスタシアさんの暮らす日本へ避難することを決意。1万kmにおよぶ2週間の脱出行で日本へたどり着いた。

番組では、和真さん夫妻の自宅に身を寄せながら、全く言葉の分からない異国の地で新生活を始めることになった家族の2カ月を見つめていく。

この家族と出会ったきっかけは、3月2日にあった岸田文雄首相によるウクライナからの避難民の受け入れ表明。それを受け、実際に避難してくる人がいるのかをリサーチすると、和真さんがSNSで情報収集しているのを見つけ、同4日にコンタクトを取った。この時点では、本当にアナスタシアさんの家族を受け入れられるのかがまだ確実ではなく、和真さんとしてもその不安な状況を多くの人に知ってもらいたいという思いから、取材を受けてくれたという。

井本氏は「和真さんからは、ウクライナの方のことを知ってほしいというのと、これから避難してくる人に対して優しく受け入れてほしいという思いがあるのが伝わってきました」と感じ取った。

一方でマーヤさんは、避難民であふれる列車に揺られ、バスを乗り継ぎ、歩いて国境を越え、その後も飛行機を乗り継いで1万kmにおよぶ脱出行の様子を随所で動画撮影し、その映像を番組に提供してくれた。そこにも、「ウクライナから離れた日本の人にも、この現状を知ってほしい」という思いがあったようだ。

■涙をこらえた3年ぶりの再会

実に2週間かけて無事日本へやってきたが、成田空港に搭乗便が到着してからも、手続きやPCR検査で長時間待たされることに。「アナスタシアさんは、壁を1つ挟んだ向こう側に家族がいるのになかなか会えないということで、かなり疲れていた様子でした」(井本氏、以下同)と、当時の様子を振り返る。

そして、コロナもあって実に3年ぶりの再会の時。アナスタシアさんと家族が抱き合う姿を見て、「私はウルっときたのですが、本人たちは泣いておらず、とてもうれしそうだったんですよ。ここで私が泣いたら絶対おかしなことになると思って、何とかこらえました」という思いで見守った。

  • 成田空港で3年ぶりの再会を果たした家族たち (C)フジテレビ

やってきた家族の第一印象を聞くと、「マーヤさんは疲れ切っている印象があったのですが、子どもたちが思っていたより明るくて元気なのでびっくりしました。戦争の影響で心に深く傷を負う前に避難できたからというのもあると思います」とのこと。この天真らんまんな姿が、遠い異国での新生活という苦難に立ち向かうなかで、救われる要素になっている。