――『オドぜひ』は全国放送になる前からYouTubeなどの配信を積極的に活用されてましたが、その戦略の狙いは?
よく言われるんですけどね、これが戦略はないんですよ(笑)。要するに最初の頃はみんなで知ってほしかったっていう、もうそれだけなんです。それをきっかけにテレビを見てくるようにしたいと。
ただ、やっぱり時代が変わってきて、“テレビの下にYouTube”っていう感じではない時代になってきてるんで、テレビと違うYouTubeの世界で成立するいろんな企画を作っていくようにシフトしていったというのはありますけど、基本的にはもう番組を見てほしいための宣伝として始めました。今、クチコミで面談に来ていただいて、「なんでこの番組知ったんですか?」って聞くとほぼ100%がYouTubeですね。
――意外な反響とかはありましたか?
わりと僕たちが「今回はちょっとうまくいかなかったかな」っていうところでも面白いポイントを見つけてくるんで、そうやって面白がってくれるのって本当にうれしいなと思うことがよくあります。あと、本当に七不思議なんですけども、うちの公式YouTubeチャンネルの中で一番見られてるのがダントツで1,000万を超えてるんですけど、それが「メガネを外すと雰囲気が変わる」っていう男の子の回なんですよ。なんでメガネを外すだけって回が1,000万回以上再生されてるんだろうって、僕もいまだに意味が分かんない。そういうところを面白がってくれるって、本当にすげぇ視聴者だなと思います。
――再生回数を分析して、番組に反映させたりとかはするんですか?
しないですね。「何でこれもっと回らねえんだろうなあハハハ」って笑ってるだけですよね。そこから分析して、じゃあメガネを外す子をいっぱい探そうってことはしないですよ(笑)。でも、いいじゃないですか。自由に自分たちなりの面白がり方を見つけながら見る番組だって。
――画面の下に流れるテロップは、直接関係ないことを書いていますが、なぜあのような形にしたんですか?
実は僕、不安ですごくスーパー(=テロップ)を入れちゃうタイプだったんですよ。でもその反面、必要かなっていう思いがずっとあったんです。何がヒントになったかって言うと雑誌の『噂の真相』なんです。ページの端っこに書いてある1行の文。僕はあれをやりたくて、このスーパーにしました。何だったらもうちょっと視聴者の気を散らせてやれって。今はディレクターが書いて、僕がチェックしてるっていう感じでやってるんですけど、ディレクターはすごく苦労してますね。
■“素人のあらびき団”だった!?
――たまにご自身が画面に出ることもありますね。
子供が喜ぶんでね(笑)。あのー、嫌いじゃないですよ。嫌いじゃないですけども、まあ緊張しますしねえ。でもなんか考えて用意したことを言うと、オードリーさんに見透かされるし、難しいですよね。ダメなテレビマンなんでダメなまま出ればいいやと思ってやってます。あとはもうなんか思い出作りだと思って(笑)。
――そもそも富田さんが中京テレビ系の制作会社に入られた動機は?
大学時代にアングラ演劇やったんですよ。学生演劇じゃなくて寺山修司さんの流れをくんでいるちょっと真面目なところだったんですけど。将来は俺も劇団立ち上げようと思ったんですけども、自分には才能がないと分かって挫折しまして、就職するしかないなと思ったんです。でも何か作るっていうことはやってみたいなと思った時に中京テレビの子会社の制作会社に入りました。
――『あらびき団』(TBS)がお好きだと伺ったのですが、番組に反映されている部分はありますか?
あー、でもされてると思いますよ。それこそ番組を手伝ってもらってる中野(俊成)さんは『あらびき団』の作家でもあるんですけど、「富田は素人のあらびき団がやりたいんだ」って言うんです。まあその通りで、『あらびき団』も芸人の中の、変だけどとんでもない笑いポイントみたいなところを見つけて切り抜く本当に面白い番組だと思うんですけど、僕たちも同じことを目指してやってますね。“素人あらびき団”です(笑)
――今後の展望はいかがでしょうか?
イベントをやりたいですね。東京ドームなんてことは言わないから、ちっちゃいところでもいいんでみんなが集まれるイベントをやりたい。うちの番組の視聴者ってこの番組を見てることを言わない視聴者ばっかりなんですよね。まあ、なんか分かる気もしますけど(笑)。そういう人たちがこっそり集まれるイベントをしたいです。
●富田恭彦
1968年生まれ、東京都出身。学習院大学卒業後、96年に中京テレビ映像企画(現・CTV MID ENJIN)に入社。『キャイ~ンのギャロンパ』、『PS』シリーズなどを担当し、現在は『オードリーさん、ぜひ会ってほしい人がいるんです。』の演出・プロデューサーを務める。