京都に来たら楽しみたいのが、抹茶やほうじ茶などお茶を使ったスイーツや料理。なかでも京都府南部の山城地域は世界に誇る「宇治茶」の産地でもあります。でも宇治茶って、なぜこんなに美味しいと言われるのでしょうか? 京都のお茶をもっと知れば、さらにお茶を美味しくいただけるかもしれません。

しかも5月初旬は立春から数えて88日目の「八十八夜」の頃、「夏も近づく八十八夜……」の歌詞でもおなじみのお茶を摘む目安の時期。新茶も楽しめるシーズンに、「お茶の京都」を楽しむスポットをご紹介します。

宇治茶の美味しさの秘密は? 「茶づな」で玉露入れ体験

「宇治茶」が作られているのは、京都南部の山城地域。10円玉に刻印されていたり、歴史の教科書で見たことがある「平等院鳳凰堂」や、日本三古橋の宇治橋があるのもこのエリアです。宇治駅であれば、京都駅からはJR奈良線快速で約17分、京阪電車では三条駅や祇園四条駅からは、中書島駅で宇治線に乗換えて約30分ほどの距離。京都市内からちょっと足を伸ばしたり、宇治周辺のエリアに宿泊するのも便利そうです。

  • 豊臣秀吉が茶の湯に使う水を汲ませた場所もあるという宇治橋

日本で初めてお茶が作られたのは、鎌倉時代、現在の京都市右京区にある栂尾山高山寺だと言われています。同寺の明恵上人により栽培が始まり、さらに南北朝時代に三代将軍足利義満が宇治茶の美味しさとふくよかな薫りをたたえ「宇治七名園」をつくったそう。

現在は、宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久御山町、井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、精華町、南山城村の一帯で生産されており、お茶づくりだけでなくお茶の文化や歴史を伝え、宇治茶ブランドとして発信しています。

そんな宇治茶を自分の手で入れられる体験施設が、JR奈良線・京阪宇治線の宇治駅からもほど近い「お茶と宇治のまち交流館 茶づな」です。

ここでは宇治のがわかる映像を見たり、茶摘みや抹茶づくりなどさまざまなプログラムも体験できるそう。

プログラムのひとつ「本場宇治ならではの玉露の淹れ方体験」では、日本茶インストラクターの先生に教えてもらいながら、本場宇治の玉露を淹れる事ができます。

急須に宇治の玉露と常温のお湯を入れ、約3分待って淹れた玉露の味は、普段飲んでいる煎茶とはちょっと異なる淡くて美しい色。一口含むと、まるで出汁のようなふくよかな薫りと味わいです。お茶ってこんな味がするんだ! ときっと驚くはず!

この秘密は、お茶の旨味成分であるアミノ酸のテアニン。さらにアンチエイジング機能もあると言われるポリアミンも含まれています。

日本茶インストラクターの先生に宇治茶の美味しさの理由を聞くと、降雨量が多く昼夜の気温の温度差が大きいことや、肥沃で水はけの良い土壌といった山城地域の気候や風土がお茶の栽培に適しているからだと教えてもらいました。

また風土だけでなく、お茶畑にも秘密があります。お茶畑といえば、青々とした緑のイメージがあるかもしれませんが、宇治茶の茶畑を見ると、なんだか布がかかって黒い畑も……。

これは被覆栽培(覆い下栽培)といって、新芽が育つ間、一定期間日光を遮ることで鮮やかな緑色と独特の薫りやまろやかな旨味、甘みのあるお茶を作る方法です。今回いただいた玉露もこの栽培方法で作られたものだそう。

でも玉露が美味しいのは一煎目だけではありません。二煎目、三煎目とお湯の温度や量や変えながらじっくり味わえます。さらに出がらしのお茶も、ごま塩とポン酢でおひたしのようにいただきました。これは薄くて柔らかいお茶の葉だからこその楽しみ方かもしれません。

  • 玉露の出がらしのお茶もひたしのように食べられます

他にも茶づなでは煎茶の入れ方体験や、茶臼で抹茶を作る体験、オリジナルの茶筒づくりなど様々な体験プログラムを用意しています。予約方法やプログラムの体験料は茶づなの公式サイトをチェックしてみてくださいね。

  • 「茶づな」ではお茶に関するお土産も購入できます

お茶と宇治のまち交流館 茶づな 〒611-0013 京都府宇治市菟道丸山203-1
(京都府宇治市宇治乙方地内 及び 宇治市菟道丸山地内)
アクセス:京阪宇治線「宇治駅」より徒歩4分、JR奈良線「宇治駅」南出口より徒歩12分
営業時間:9:00~17:00(ミュージアムの最終入場時間は16:30)、年中無休
ミュージアム入館料:一般(大学生含む)600円、小人(小・中高生含む)300円、幼児(0~6歳)無料
公式サイト:お茶と宇治のまち交流館 茶づな

宇治橋通り商店街で買い物やグルメも!

平等院鳳凰堂や茶づなに寄ったら立ち寄りたいのが「宇治橋通り商店街」。JR宇治駅から宇治橋に向かう宇治橋通りを中心に、約60店舗が店を連ねる活気あふれる商店街です。

創業400年余りの「お茶のかんばやし」、そして「中村藤吉本店」「辻利」をはじめ老舗の茶屋が店を構える宇治橋通り商店街は、見どころもたくさん! 地元・宇治茶を使ったグルメやスイーツも楽しめます。

  • 「中村藤吉本店」

ご当地グルメ「宇治茶づけ」

なかでも宇治橋通り商店街でイチ押しのグルメは、「食べる宇治茶」として商店街の有志によって考案された宇治市のご当地グルメ「宇治茶漬け」。宇治茶づけを扱うお店の店頭には「ご当地グルメ! 宇治茶漬け」のマークが掲げられています。

  • 「宇治茶づけ」のマークが目印!

宇治茶を使い、宇治茶に合う食材を使った「宇治茶漬け」は、カフェや食堂などお店ごとに工夫を凝らしたメニューが揃います。使うお茶も煎茶や玄米茶、ほうじ茶、抹茶など、宇治茶であれば様々。

宇治橋通りの創作ダイニング「宇治創こころ」の宇治茶漬けは、京都産の有機野菜や減農薬米、自家製の豆腐を使ったこだわりの素材を使った一杯。お茶は宇治煎茶と宇治ほうじ茶で楽しめます。

「創作ダイニング 宇治創こころ」
〒611-0021 京都府宇治市宇治妙楽58
TEL:0774-24-5617
公式サイト:「創作ダイニング 宇治創こころ」

はなれ 中村製麺「宇治抹茶うどん」

京都の名物グルメのひとつが「うどん」。宇治でもお茶を使ったうどんが楽しめます。「はなれ 中村製麺」が手掛ける「京鴨と九条葱宇治抹茶うどん」は、なんとうどんの麺にも宇治抹茶を使用しています。

具材は京鴨に九条葱と、京都らしい食材ばかり。一杯で京都らしさを堪能できるはず。うどんのほかにも「だし巻き玉子」も自慢のメニュー。注文を受けてからひとつひとつ巻き上げる、作りたてのだし巻き玉子が楽しめます。

「はなれ 中村製麺」
京都府宇治市宇治妙楽155
TEL 0774-20-1011
公式サイト:「はなれ中村製麺」

肉のはりよし「抹茶コロッケ」

こちらも宇治橋通り商店街にある「はりよし」では、抹茶を使った「抹茶コロッケ」も。注文するとひとつひとつ手で揚げてくれます。

数分待って熱々のコロッケを食べてみると、中身は渋めな抹茶色!

抹茶の味は控えめではあるものの、ほくほくのじゃがいもとサクッと揚げられたコロッケは、宇治散策をして小腹が減ったときにもぴったりです。

「肉のはりよし」
京都府宇治市宇治壱番14-2
TEL:0774-21-2816

宇治橋通り商店街は、地域の活性化や発展に貢献している商店街として経済産業省の「はばたく商店街30選2021」にも選定されています。商店街の中にサテライトキャンパスのある京都文教大学の学生さんたちによるPRやイベント企画など、新しい取り組みも。

  • 京都文教大学の学生さんとともに作ったグルメ情報も読み応え抜群

歴史だけでなく、宇治茶を美味しく楽しむグルメや、宇治エリアを楽しむ新しい取り組みなど、宇治橋通り商店街をぶらぶら散策していると新しい発見があるかもしれません。

宇治橋通り商店街
公式サイト:「宇治橋通り商店街」

ちょっと足を伸ばして、一休さんゆかりの地へ「酬恩庵一休寺」

京都のお茶文化を楽しむなら、宇治からさらに足を伸ばしてみるのもおすすめです。頓知が得意な「一休さん」として親しまれる室町時代の禅僧・一休宗純にゆかりのある「酬恩庵一休寺」は、宇治茶の産地である京田辺市にあります。

一休寺にある茶室「虎丘庵」は茶道の祖と言われる村田珠光が作った茶室と伝えられています。当時多くの文人が集まった、今で言う文化サロンのような場だったそう。

そんな茶道の発信地であった一休寺に来たらお土産に買いたいのが、「一休寺納豆」。

納豆と言っても、粘りがある普段食べる納豆とは違い、見た目は甘納豆のようにギュッと詰まった一休寺納豆は、一休禅師が伝えたという歴史ある食べ物。中国料理で使う豆鼓のような、独特の香りのする発酵食品です。

蒸した豆とはったい粉に麹を加えてまぜ、約1年間天日干しをして出来上がる一休寺納豆は、現代も代々住職が自ら作っていると言います。 ご飯やお茶漬けとして食べるのはもちろんのこと、抹茶や甘いお菓子と一緒にたべたり、お酒のおつまみにもぴったり。調味料としてパスタに入れたりと、様々な使い方ができます。

「酬恩庵一休寺」
〒610-0341 京都府京田辺市薪里ノ内102
電話:0774-62-0193
拝観料:大人500円、高校生400円、中学生300円、小学生200円
拝観時間 9:00〜17:00(宝物殿 9:30〜16:30)
公式サイト: アクセス:JR京田辺駅から徒歩20分もしくはタクシー約5分、近鉄新田辺駅から徒歩25分もしくはタクシー約5分、近鉄新田辺駅西口バスロータリー4番乗り場から京阪バス66系統「一休寺バス停」下車徒歩5分


京都と関わりの深い宇治のお茶について知ると、京都の旅が更に楽しくなるかもしれません。次に京都へ行く際は、宇治や京田辺をはじめとした宇治茶の産地である山城エリアへ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。