カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『万引き家族』で知られる是枝裕和監督。映画監督として国際的に活躍しており、現在は韓国映画『ベイビー・ブローカー』を準備中。テレビのドキュメンタリーディレクターとしてキャリアをスタートし、実際の事件にインスパイアされた社会性の高い映画を多く手掛けています。

是枝裕和監督の映画人気ランキング

今回は、マイナビニュース会員の男女508名に、是枝裕和監督が脚本も担当した映画の中で好きな作品を尋ねてみたところ、以下のような結果になりました。

1位『万引き家族』(37.7%)
2位『海街diary』(18.5%)
2位『そして父になる』(18.5%)
4位『誰も知らない』(5.7%)
5位『三度目の殺人』(5.1%)
6位『歩いても 歩いても』(3.0%)
7位『奇跡』(2.4%)
7位『空気人形』(2.4%)
9位『真実』(2.0%)
9位『海よりもまだ深く』(2.0%)
11位『ワンダフルライフ』(1.7%)
12位『DISTANCE ディスタンス』(0.7%)
13位『花よりもなほ』(0.3%)

1位『万引き家族』【2018年/主演:リリー・フランキー】(37.7%)

見事1位に輝いたのは、2018年に公開された『万引き家族』。この映画は、親の死亡届を出さずに年金を不正受給していた家族の実話に着想を得て作られた作品です。主な出演者には、リリー・フランキーさんや樹木希林さんなど是枝監督作品常連俳優が顔を揃えています。

祖母の年金と万引きで生計を立てていた一家は、ネグレクトされていた幼い少女を家に連れ帰り、一緒に暮らし始めました。しかし、ある事件をきっかけに、家族それぞれが抱えていた秘密が明らかになっていきます。

『万引き家族』は、第71回カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞。日本映画の受賞は今村昌平監督の『うなぎ』(1997年公開)が受賞して以来、21年振りの快挙となりました。

出演/リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2018年

・「日本社会の負の部分をユーモアと皮肉を交えて描いた映画」(39歳女性/教育/専門サービス関連)
・「家族ぐるみで万引きを重ねる一家と、そこから生まれた人と人とのつながりを描くストーリーが印象的」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「社会の低層である家族の悲喜が描かれていた。役者のリアルな演技もよかった」(56歳男性/輸送用機器/事務・企画・経営関連)
・「是枝監督の作品には私たちの日常のありふれた場面をうまく描いた作品が多い」(45歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「気づいたら涙が出ていた映画でした。切なく、万引きという犯罪をとおして家族のカタチをあらわしていて現代社会の闇も垣間見える作品でした」(29歳女性/インターネット関連/IT関連技術職)

2位『海街diary』【2015年/主演:綾瀬はるか】(18.5%)

2位に選ばれたのは、2015年に公開された『海街diary』。綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、夏帆さん、広瀬すずさんが四姉妹を演じるこの作品は、吉田秋生さんの同名漫画を原作としています。

鎌倉で暮らす香田家の三姉妹は15年前に家を出て行った父の訃報を聞き、葬儀に出席。その際に異母妹・すずに出会います。父が死んだことで身寄りがなくなったすずに、長女の幸は一緒に暮らすことを提案。すずは、香田家の四女として新たな生活を送り始めます。

豪華キャストでも話題になった『海街diary』は、2016年の第39回日本アカデミー賞で最優秀作品賞および最優秀監督賞を受賞しました。

出演/綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2015年

・「是枝監督の作品はさまざまな家族の形を描いたものが多い。新たな姉妹の登場に戸惑いつつも受け入れて行くさまが、優しい目線で描かれていると感じた」(64歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「4人の女優の共演が華やかで、日常描写がきらめいていた」(62歳男性/放送・新聞/クリエイティブ関連)
・「リアルに描かれた人間像に考えさせられる作品だった」(42歳女性/サービス/事務・企画・経営関連)

2位『そして父になる』【2013年/主演:福山雅治】(18.5%)

同じく2位にランクインしたのは、2013年公開の『そして父になる』。主演の福山雅治さんが初の父親役を演じたことでも話題になった作品です。

大手建設会社に勤務する野々宮良多は、妻のみどりと6歳になる1人息子の慶多と幸せに暮らしていました。しかし、ある日病院から連絡が入り、出生時に看護師によって子どもが取り違えられたことを知ります。相手方の夫婦とも話し合い、お互いの子どもを交換することに……。

本作は、第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、審査員賞を受賞。上映後約10分間のスタンディングオベーションが起こるほど評価の高い作品となりました。

出演/福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2013年

・「血のつながりだけが家族じゃないことをすごく感じた」(33歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「病院で取り違えられた二人の子ども。その子を育ててきた2組の夫婦。どうすればいいのか、考えさせられる作品だった」(60歳女性/化粧品・医薬品/その他技術職)
・「家族の微妙な感情の描写が描かれており、ひじょうによかったです」(35歳男性/その他/その他・専業主婦等)

4位『誰も知らない』【2004年/主演:柳楽優弥】(5.7%)

4位には、2004年に公開された『誰も知らない』がランクイン。1988年に起きた巣鴨子ども置き去り事件を題材にした本作は、12歳の長男役を柳楽優弥さん、その母親役をYOUさんが演じています。

父親の異なる4人兄妹と母親の5人で暮らす一家。ある日、新しい恋人ができた母親はわずかなお金を残して失踪。子どもたちは何とか自分たちだけで暮らしていこうとしますが、やがてお金も尽きてしまいます。そんな過酷な生活を送る兄妹に、さらに悲しい出来事が起こり……。

本作で長男を演じた柳楽優弥さんは、2004年の第57回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞。国内でもさまざまな反響を呼び、第78回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画1位に選出されると同時に、柳楽さんは新人男優賞も受賞しました。

出演/柳楽優弥、YOU、寺島進、遠藤憲一、平泉成
監督・脚本・製作・編集/是枝裕和
公開年/2004年

・「是枝裕和監督の最高傑作」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「是枝監督に貧しい家庭がテーマの映画を撮らせたら、間違いなく説得力がある」(59歳男性/不動産/営業関連)
・「子どもたちの演技がとてもよかった。この映画がきっかけで柳楽優弥さんのファンになった」(45歳女性/その他/その他・専業主婦等)

5位『三度目の殺人』【2017年/主演:福山雅治】(5.1%)

5位は、2017年公開の『三度目の殺人』。本作は、監督自ら脚本を書いた法廷サスペンス。是枝監督と福山雅治さんは2013年公開の『そして父になる』以来の再タッグとなりました。主人公・重盛役を福山雅治さんが演じたほか、三隅役を役所広司さん、被害者の娘役を広瀬すずさんが演じています。

弁護士の重盛は殺人の前科を持つ三隅の弁護を引き受けます。三隅は解雇された会社の社長を殺害し死体に火をつけた容疑で起訴され、死刑は免れない状況でした。しかし、殺人の動機もはっきりせず、三隅の供述も面会のたびに二転三転。重盛は本当に三隅が殺人を犯したのか確信が持てなくなっていきます。

2018年の第41回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ、最優秀監督賞、最優秀脚本賞など計6部門での受賞を果たしました。

出演/福山雅治、役所広司、広瀬すず
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2017年

・「実際に殺人を犯しているのかいないのか、最後までハラハラした」(57歳男性/広告・出版・印刷/営業関連)
・「キャストが魅力的で、真実を追究する姿に感動した」(70歳男性/官公庁/公共サービス関連)
・「主演の福山雅治の演技もよかったが意外にも広瀬すずの演技がとてもよかった」(55歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)

6位『歩いても 歩いても』【2008年/主演:阿部寛】(3.0%)

6位の『歩いても 歩いても』(2008年公開)は、ある家族の一日を淡々と描いた作品。阿部寛さんが主人公の横山良多役を演じ、そのほか主要キャストには夏川結衣さん、YOUさん、樹木希林さんなどが名を連ねています。

15年前に亡くなった兄の命日に、家族を連れて帰省した良多。何かと亡くなった兄と比べられて育った良多にとって、実家は居心地が悪い場所だった。さらには失業中であることを告げていなかったため、家族と顔を合わせるのは苦痛でしかなく……。

「ある家族の何気ない日常」にさりげないユーモアが隠されているところが、本作の魅力です。

出演/阿部寛、夏川結衣、YOU、樹木希林
原作・監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2008年

・「社会の影となる部分の捉え方が素晴らしい」(65歳男性/その他/事務・企画・経営関連)
・「配役がいい。特に樹木希林さん」(54歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「サスペンス、ミステリー、SF、壮大なファンタジー作品も大好きですが、この作品のように大きな事件も起きず、日々の日常淡々と描かれた作品も大好きです」(59歳男性/その他/その他・専業主婦等)

7位『奇跡』【2011年/主演:前田航基・前田旺志郎】(2.4%)

7位は、2011年に公開された『奇跡』。主演は小学生漫才コンビとして話題となった「まえだまえだ」の前田航基さんと前田旺志郎さんの兄弟で、作品の中でも兄弟を演じています。

小学校6年生の兄・大迫航一と4年生の弟・木南龍之介は、両親の離婚により離れ離れに暮らす兄弟。いつかまた家族全員で暮らしたいと願う2人は、九州新幹線の「つばめ」と「さくら」が初めてすれ違ったときに願い事が叶うという噂を耳にし、奇跡を起こそうと試みます。

本作は2013年にはイギリスでも上映され、同国の大手新聞社「ガーディアン」が選ぶ映画ベスト10に選出されています。

出演/前田航基、前田旺志郎、橋本環奈、樹木希林
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2011年

・「子役達の自然な演技に感動しました。自分の昔を思い出して重ねて見ていました」(33歳女性/食品/販売・サービス関連)
・「ストーリーがおもしろい」(43歳男性/教育/専門サービス関連)

7位『空気人形』【2009年/主演:ペ・ドゥナ】(2.4%)

同じく7位にランクインしたのは、2009年公開の『空気人形』。本作は、業田良家さんの漫画を原作とし、韓国のペ・ドゥナさんや板尾創路さん、ARATA(井浦新)さんなどを迎えて映画化された作品です。

ある日、心が芽生えた「空気人形」ののぞみは、持ち主の秀雄が留守の間に街へ繰り出し、孤独な人達と触れ合うようになります。やがてレンタルビデオ店で働く純一に心惹かれたのぞみは、同じ店でアルバイトとして働くことになり……。

『空気人形』は、2009年の第62回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でも上映されています。

出演/ペ・ドゥナ、ARATA(井浦新)、板尾創路、オダギリジョー
監督・脚本・製作・編集/是枝裕和
公開年:2009年

・「ペ・ドゥナの演技が素晴らしかった。『リンダ リンダ リンダ』と『グエムル-漢江の怪物-』で知っていたが、この映画のペ・ドゥナが1番好き」(52歳男性/広告・出版・印刷/クリエイティブ関連)
・「とてもせつない気分になった」(49歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/技能工・運輸・設備関連)

9位『真実』【2019年/主演:カトリーヌ・ドヌーヴ】(2.0%)

9位には、2019年に公開された『真実』がランクイン。本作は、日仏合同で製作された、是枝監督初めての国際共同製作作品です。2019年の第76回ベネチア国際映画祭でオープニング作品として上映されました。

フランスの大女優であるファビエンヌは自伝本「真実」を出版。それを祝うためにアメリカから脚本家の娘・リュミールが夫と子どもを連れてやってきます。母親の自伝を読んだリュミールは、内容が事実ではないことを非難。それをきっかけに、母と娘にある隠された真実が明らかになり……。

出演/カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2019年

・「見応えがあり、楽しめた映画」(40歳男性/総合商社/営業関連)
・「ひじょうに衝撃を受けた作品。涙が止まらなかった」(56歳男性/コンピューター機器/メカトロ関連技術職)

9位『海よりもまだ深く』【2016年/主演:阿部寛】(2.0%)

同じく9位にランクインしたのは、2016年に公開された『海よりもまだ深く』。本作の主人公・篠田良多役を演じたのは『歩いても 歩いても』、『奇跡』にも出演していた阿部寛さんで、その母親役を樹木希林さんが好演しています。

作家の良多は15年前に文学賞を受賞したものの、その後は鳴かず飛ばず。生活費を稼ぐため、興信所に勤めて探偵をしていましたが、周囲には小説のための取材と言い訳をしていました。さらには、だらしない生活に愛想をつかした妻の響子には離婚されてしまいます。

それでも良多は夢を諦めきれず、思い通りにならない人生に何とか折り合いをつけようとしますが……。

出演/阿部寛、真木よう子、樹木希林、リリー・フランキー
監督・原案・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2016年

・「ストーリー、各種設定が印象的」(72歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「日本での日常が淡々と描かれた作品なのに、海外で高評価だったのが意外だった」(51歳男性/通信販売・ネット販売/販売・サービス関連)

11位『ワンダフルライフ』【1999年/主演:ARATA】(1.7%)

1999年に公開された『ワンダフルライフ』は、人が死んでから天国に行くまでの7日間を描いた作品です。

22人の死者たちがたどり着いた施設で、天国に行くまでの7日間に人生の最良の思い出を選ぶように言いわたされます。死者たちは最良の思い出を見つけることで、自分の人生を振り返り……。

出演/ARATA(井浦新)、小田エリカ、寺島進、内藤剛志、伊勢谷友介
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/1999年

・「儚いシーンがずっと記憶に残っている」(41歳男性/その他メーカー/営業関連)
・「ストーリーに感動しました」(35歳女性/農業協同組合/営業関連)

12位『DISTANCE ディスタンス』【2001年/主演:ARATA】(0.7%)

12位は、2001年公開の『DISTANCE ディスタンス』。この映画は、無差別殺人を引き起こしたカルト教団の加害者遺族たちに焦点をあてた作品になっています。

カルト教団「真理の箱舟」が起こした無差別殺人。その実行犯5人は教団の手で殺害されました。事件から3年後の夏、実行犯の遺族4人は5人の命日に殺害現場である湖に集まることに。彼らが潜伏していたロッジで一夜を明かすことになり……。

出演/ARATA(井浦新)、伊勢谷友介、寺島進、夏川結衣、浅野忠信
監督・脚本・編集/是枝裕和
公開年/2001年

13位『花よりもなほ』【2006年/主演:岡田准一】(0.3%)

2006年に公開された『花よりもなほ』は元禄15年の江戸を舞台とした、是枝監督初の時代劇映画です。主人公・青木宗左衛門を岡田准一さんが務めました。

父の仇を討つため信州松本から江戸に上京してきた若い武士・青木宗左衛門は、長屋でくすぶり続けていました。宗左衛門は明るく前向きに生きる長屋の住人たちの姿を見るうちに、仇討ちをしない人生を考え始め……。

出演/岡田准一、宮沢りえ、浅野忠信、古田新太、香川照之
監督・原案・脚本・編集/是枝裕和
公開年:2006年

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是枝監督が脚本・監督を手掛けた映画全13作品を、ランキング形式で振り返りました。

アンケートでは、「過酷な現実を描いた作品に衝撃を受けた」という声がある一方で、「家族との触れ合いや絆に感動した」といったコメントも多数寄せられたのも印象的でした。

子どもが重要な役割を担う作品が多いというのも、是枝映画の特徴の一つ。是枝監督は子役には脚本を渡さず、撮影現場で口で状況を説明し、その場で演技をつけるという演出法でも知られています。是枝監督の作品には、柳楽優弥、広瀬すず、前田航基、橋本環奈といった今を時めく俳優たちが子役として参加しており、印象的な演技を見せています。

また、実際にあった事件からインスパイアされた作品も多く、そのエピソードがリアルに描かれています。現代の日本が抱える社会問題を描きながらも、「人の温かさ」を感じられるのも魅力ではないでしょうか。是枝作品の根幹にある弱者へのまなざしは、ドキュメンタリーを手掛けていたそのキャリアからくるもの。そしてそのまなざしゆえに、国際的な評価を受けていると言えるでしょう。

調査時期:2022年3月4日
調査対象: マイナビニュース会員
調査数: 男女合計508人(男性: 405人、女性: 103人)
調査方法:インターネットログイン式アンケート

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