小林氏は、『ちゅらさん』シリーズに関わっていたし、自身も沖縄への思い入れが強いそうだ。「僕は40代ですが、23~27歳ぐらいまで、NHKの沖縄放送局にて、ディレクターの下っ端として勤務をさせていただいていました。その頃はインターネットもスマホもない時代で、なんの予備知識もなく、那覇市民として暮らしていましたが、新社会人で何も知らなかったから、社会勉強そのものが沖縄から始まったようなものです。その後『ちゅらさん』をやらせていただき、放送に携わる人間として、沖縄とのご縁も20何年間紡いできた感じです」としみじみ語る。

ちなみに『ちゅらさん』での経験が今回生かされたか?との質問に「当時『ちゅらさん』で使っていた道具が今また使えるといったことは一切ありませんし、実際に参加していたスタッフは僕を含めてあと1~2人いるかいないかですが、当時の経験はとても役に立っています。沖縄のことばや文化など、沖縄を描く時にどういうやり方をすると、どういう反響があるのかという点は、少なくとも経験しているので、その前例を踏み台にして考えることができます。そういう意味で『ちゅらさん』の現場があったことは大きかったです」と明かした。

最初の沖縄ロケは昨年の11月にコロナ禍で敢行されたが「コロナ禍にもかかわらず、いや、コロナ禍なのでなおさら、受け入れていただいたご当地の皆さんには非常に感謝しています。心理的に不安を感じれば切りがないところだったと思いますが、感染対策をちゃんとしつつ、ホスピタリティの溢れる現場で、とてもうれしかったです」と沖縄の人々に感謝。

また、沖縄の本土復帰50年の年に制作する作品という点については「社会的なことに関して言うと、沖縄の歴史は少しでもみなさんに知っていただきたいという思いはありますが、沖縄に限らず、47都道府県、あるいは世界中のどこでも、同じように家族や友だちがいるだろうし、『ちむどんどん』のテーマでもある『美味しいものを食べれば幸せになれる』という人たちが暮らしている点は同じかなと。いろんな歴史の偶然や物理的な特性は、それぞれの場所によってそれぞれの個性があり、伝えるべきものはいっぱいある。そして、その魅力を届けられることが、朝ドラの一番素敵な個性なんじゃないかなと思っています」と述べた。

毎回新しいことにいろいろチャレンジしてきた朝ドラ。今回の試みとしては「企画を早めに煮詰めて、羽原さんと共にすでに長く取り組んできた点」を挙げ、「物語を作るチームとしては、最終回がこういうふうになるという明確なビジョンをできるだけ持って、第1週からちゃんと作っていったことが、挑戦だったのかなと。また、黒島さん演じる暢子が主人公の冒険を追っていきますが、暢子が故郷を去ったあとも、残っている兄妹がいるので、その家族とお互いの人生を共有し合っていくこともずっと大事に描いていく物語になっていきます。だから兄妹の4通りの人生を楽しんでいただけるような工夫をしていきたいです」と語った。

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