少し前から、過去の名車を思い出させる国産「リバイバルバイク」が増えている。例えばホンダの新型車である「ダックス125」も「ホーク11」も、ともにリバイバルモデルだ。なぜ、増加しているのだろうか。東京モーターサイクルショーの会場を巡りながら考えた。
二輪車業界では少し前から、リバイバルモデルを目にする機会が増えていた。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となった「第49回 東京モーターサイクルショー」(東京ビッグサイトにて3月25~27日に開催)でも、デザインや車名などで過去のバイクを思い出させる多くの車両に出会った。リバイバルの勢いは加速しているようだ。
ホンダの「ダックス」と「ホーク」が復活!
ホンダが展示していた「ダックス125」と「ホーク11」は、ともにリバイバルモデルだ。
まずはダックスについて。ホンダは以前から、原付二種(51~125cc)のカテゴリーで「モンキー」や「ハンターカブ」を復活させ、ヒットにつなげていた。こうした状況を受けて、「ダックスもいける」と判断したのではないだろうか。
オリジナルのモンキー、ハンターカブ、ダックスはいずれも、あの「スーパーカブ」の空冷単気筒エンジンを流用していた。それは現行「モンキー125」および「ハンターカブCT125」にも当てはまる。ダックスを再登板させるにしても、ゼロからすべてを開発しなくていい。こうした背景も、復活を後押ししたかもしれない。
T字型の鋼板プレス製バックボーンフレームやアップマフラーといったスタイリングの特徴は昔のまま。排気量が125ccとなったことに合わせ、シートは2人乗り可能とした。基本はレジャーバイクでありながら、ときには家族や子供を乗せて休日を過ごしてもらいたいというのがホンダのメッセージだ。
一方のホーク11は、1970年代から80年代にかけて250/400ccクラスに投入された車種に使われたネーミングを起用した。ただし新型は、「CRF1100Fアフリカツイン」「レブル1100」と基本的に同じ水冷並列2気筒エンジンを流用しており、排気量は1,100ccとなった。
「ホーク」に続く「11」は排気量を示す数字でもあるのだが、昔のホークの400ccモデルは「ホークⅡ」を名乗っており、イメージをつなげるため、「1100」ではなく「11」としたのではないかと思われる。
グローバルモデルとなるダックス125に対し、ホーク11は日本専用車であり、日本のバイクシーンを支えてきたベテランライダーに向けた車種だという。昔のホークにはなかったロケットカウルは、当時のカスタムパーツで人気だった。そのあたりも含めて、ベテランライダーにアピールしようという考えなのかもしれない。
つまり、これら2台はホンダが同じ2022年に発表した新型車でありながら、リバイバルの理由が異なるのである。
懐かしの「メグロ」もリバイバル
近年のリバイバルバイクの流れを作ったのは、川崎重工業(カワサキ)だと思っている。同社が2017年の「東京モーターショー」で発表した「Z900RS」は、1970年代に一世を風靡した大型バイク「Z1」「Z2」を連想させるスタイリングで大ヒットした。
今回のショーではその流れを受けて、ひと回り小柄な「Z650RS」を出展。こちらも1970年代の「Z650」をモチーフとしているが、エンジンを水冷並列2気筒とすることで、4気筒のZ900RSより軽快な取り回しを狙っている。
カワサキでは2021年秋に発売された「メグロK3」もリバイバルモデルになる。メグロは1924年創業の老舗で、当時の日本では珍しい大型高性能バイクの専業メーカーだったが、1960年にカワサキに吸収された。
この過程でフラッグシップの「スタミナK1」はカワサキに引き継がれ、「500メグロK2」を経て「650W1」に発展した。現在の「W800」はW1のリバイバルなので、これをベースとしたメグロK3は歴史を遡った形になる。
ライダーの高齢化に対応、もうひとつの理由は?
スズキでは、2019年に発売した「カタナ」がある。こちらは1980年にドイツ人デザイナーのハンス・ムートの手になる先鋭的なフォルムで姿を現し、話題になったモデルの復刻版だ。当時とはフレームやエンジンが異なるものの、その中でカタナらしいフォルムを実現している。
ヤマハ発動機(ヤマハ)は、ストレートなリバイバルモデルではないものの、スポーツヘリテージというカテゴリーで「XSR900」「XSR700」を販売している。東京モーターサイクルショーではモデルチェンジしたばかりのXSR900と2022年モデルのXSR700を展示。いずれも1980年代のレーシングマシンや市販車を思わせるカラーリングをまとっていた。
リバイバルモデルの増加がライダーの高齢化を受けた動きであることは間違いなさそうだが、一方で、レトロなデザインに興味を示す若者が増えている現状にも各メーカーは注目しているはず。こうした人たちがクラシックなデザインに惹かれたとき、歴史の正統な継承車であることは購入の理由づけとして重要になりそうだ。
同様の流れは四輪車にもあるが、四輪のリバイバルは「アルピーヌ」のように、どちらかというと欧州のほうが盛んだ。その点、モーターサイクルは日本車もヘリテージ性を尊重したモノづくりを行っており、この国で長年にわたりモーターサイクルと付き合ってきた一人として嬉しく思えた。