相鉄・東急直通線の開業まであと1年。いよいよ両社の直通運転が目前に迫ってきている。相模鉄道と東急電鉄は3月31日、東急電鉄元住吉検車区にて、報道関係者向けに鉄道ネットワーク7社局の車両撮影会を実施。東急電鉄を介して相互直通運転を行う鉄道各社局の車両を含め、7種類の車両が元住吉検車区に集結した。

  • 相鉄・東急直通線開業まであと1年。鉄道ネットワーク7社局の車両撮影会を実施

車両撮影の前に、相鉄・東急直通線の事業概要について説明する時間が設けられ、東急電鉄 鉄道本事業部の小口正紀氏が説明を行った。相鉄・東急直通線は、羽沢横浜国大駅から日吉駅まで約10kmの連絡線として現在も整備が行われている。事業整備手法は、都市鉄道等利便増進法にもとづく上下分離方式。整備主体である鉄道・運輸機構が施設を建設・保有し、相模鉄道・東急電鉄がそれぞれ営業を行う。

1月27日の発表では、今後の作業がスムーズに進むことを前提に、相鉄・東急直通線は2023年3月に開業予定とされている。開業後は相鉄線と東急線の直通運転はもちろん、東急電鉄を介して相互直通運転を行う東京メトロ、都営地下鉄、埼玉高速鉄道、東武鉄道、西武鉄道からも相鉄線方面のアクセスが向上し、非常に広域な鉄道ネットワークの形成につながる。あわせて新幹線乗換駅である新横浜駅へのアクセスも容易になる。詳細な運転計画は未定で、計画が整い次第、発表されるとのこと。

  • 検修庫で相鉄・東急直通線の事業概要を説明した後、7社局の車両の前で記念撮影。「のるるん」「そうにゃん」も登場

今回、東急電鉄を中心とする鉄道ネットワーク7社局から、それぞれ1形式ずつ車両が並んだ。右から順に西武鉄道40000系、東武鉄道50070型、相模鉄道20000系、東急電鉄3020系、東京メトロ9000系、東京都交通局6500形、埼玉高速鉄道2000系となっている。

西武鉄道40000系は2017年3月に登場。同年にキッズデザイン賞「内閣総理大臣賞」(最優秀賞)、グッドデザイン賞を受賞している。車いす・ベビーカー利用者に便利な「パートナーゾーン」を10号車に設置したほか、車内に空気清浄機やフリーWi-Fiを導入した。「S-TRAIN」として運用されるロングシート・クロスシート転換車両では、足もとに電源コンセントも設置されている。走行面においても、最新技術のモーターを使用するなど、省エネルギー・低騒音化に配慮している。

40000系にはロングシート・クロスシート転換車両と、ロングシート専用車両があり、今回の撮影会ではロングシート専用車両が展示された。ロング・クロス転換車両か、ロングシート専用車両かは前面・側面のステッカーで表示される。なお、1月27日の発表にて、西武鉄道は相鉄線との直通運転を行わないことを明らかにしている。

東武鉄道50070型は、東上線から東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線・みなとみらい線への直通列車用として活躍している。50000型とほぼ同じ構造だが、50070型は直通先のホームドアとの関係で、先頭車のみ全長が130mm長くなっている。行先・種別表示はフルカラーLEDとなっている。

今回展示された西武鉄道40000系、東武鉄道50070型の他にも、西武線から6000系、東武東上線から9000系・9050系も東急東横線へ乗り入れている。現時点で詳細な運転計画は未定だが、相鉄・東急直通線開業後、いずれも相鉄の車両と顔を合わせる機会が増えると思われる。

  • 右から順に西武鉄道、東武鉄道、相鉄、東急電鉄、東京メトロ、東京都交通局、埼玉高速鉄道の車両が並ぶ

  • 東武鉄道50070型

  • 西武鉄道40000系(ロングシート車)

相模鉄道20000系は2018年2月に登場。「デザインブランドアッププロジェクト」のコンセプトを反映した車両として初の新型車両だった。2018年にグッドデザイン賞、2019年に鉄道友の会ローレル賞を受賞。相鉄が9000系リニューアル車両で採用した内装・外観を受け継ぎ、「YOKOHAMA NAVY BLUE」の外観にモノトーンの内装を取り入れた。走行面でも、最新技術や工夫によって省エネルギー・低騒音化が進められている。

今回は東急東横線直通用の20000系が展示されたが、東急目黒線直通用の21000系も内装・外装はほぼ同じ。ただし、20000系と21000系は両数や非常用ドアコックの位置などに違いがある。20000系のフルカラーLEDの行先・種別表示には「急行 新横浜」と表示された。

東急電鉄からは、目黒線の車両3020系が撮影会に使用された。3020系は、田園都市線で運行される2020系をベースに、2019年11月から運行開始した車両。車内には「ナノイー」方式の空気清浄機を設置し、座席はハイバック仕様のロングシートを採用している。乗降ドア上部のデジタルサイネージにて、電車の行先や停車駅の案内を多言語で行っている。安全面では、大容量の情報管理装置によって車両故障を未然に防ぎ、運行の安定化に努めるほか、騒音や消費電力の低減も実現した。

東急目黒線では4月上旬から順次、8両編成での運行を開始する予定となっている。今回展示された3823編成では、前面に「8CARS」ステッカーが掲出された様子を確認できた。相鉄20000系と同じく、行先・種別表示は「急行 新横浜」と表示。こちらは数秒おきに日本語表記と英語表記が切り替わっていた。

  • 東急電鉄3020系と相模鉄道20000系。種別・行先は「急行 新横浜」と表示

東京メトロ南北線9000系は、首都圏を走る大量輸送路線では初のワンマン運転を導入した車両。1991年に登場し、昨年、デビュー30周年を迎えた。当時、CS-ATSやATOにより乗り心地の向上を図るとともに、東京メトロで初めてフリースペースを導入した。

設計にあたり、地域との調和、人に対するやさしさがテーマになっていることから、南北線のラインカラーであるエメラルドグリーンに白のラインを入れ、ツートンカラーのラインを外観に取り入れている。それにより、緑豊かな都会のオアシスをイメージしたデザインに。製造時期やリニューアル改造により、一部編成の外観が異なっており、今回の撮影会ではリニューアル車両が並べられた。

東京都交通局6500形は、2000年以来22年ぶりとなる都営三田線の新型車両で、5月から運行開始予定。「人にやさしい車両」をめざして設計され、外観は直線的でシンプルなデザインとしつつ、全車両にフリースペースを導入し、荷棚や吊り手を低く設置している。従来の6300形は6両編成だが、6500形は8両編成となるため、輸送力も増強される。走行面では、車両情報収集システムによってリアルタイムで車両のデータを収集し、蓄積したデータの有効活用をめざすとのこと。

  • 埼玉高速鉄道2000系、東京都交通局6500形、東京メトロ9000系

埼玉高速鉄道2000系は、開業から現在に至るまで活躍中の車両。東京メトロ南北線との直通運転を踏まえ、ATOによるワンマン運転を前提に設計され、保安面、旅客サービス、バリアフリー対策にそれぞれ対応している。コンセプトは「やすらぎと彩り」「彩りの未来」とされ、外観にはコーポレートカラーであるブルー・グリーンのツートンカラーが帯として配されている。

今回展示されなかった車両も含めれば、乗り入れる車両の種類は非常に多くなることが予想される。今回の7社局には加わっていないが、みなとみらい線(横浜高速鉄道)を含めると、東急電鉄からの直通先は8社におよぶ。これだけ多くの鉄道事業者により、神奈川県から埼玉県まで一体的なネットワークが形成されることに、改めて凄い時代になったと筆者は感じている。現時点で未定となっている運転計画も含め、相鉄・東急直通線の続報を待ちたい。