京王井の頭線下北沢駅の高架下に3月30日開業した新施設「ミカン下北」。下北カルチャーを牽引する物販店、話題の飲食店、ワークプレイスで構成される同施設の取材会に参加した。下北沢の新たな注目スポットの特徴などを紹介する。

  • 京王井の頭線下北沢駅の高架下に開業した「ミカン下北」

下北沢の魅力を活かした商業施設

京王井の頭線の下北沢駅から渋谷方面への高架下と、その傍の土地を利用して開発された「ミカン下北」。京王井の頭線の高架化に伴い、盛り土だったエリアに生まれた全長140メートルほどの細長い土地が開発地となった。

5メートルほどの高低差があり、施設と道路一体での回遊性を重視し、世田谷区が整備した歩行者などが主体のアクセス道路に面して切れ目なく店舗を配置。各店舗へ直接アプローチでき、施設の共用入口を設けず街に開かれた開発によって、街歩きが楽しい下北沢の魅力を活かした街並みと、ウォーカブルな空間の創出を実現した。

  • 街歩きが楽しい下北沢の魅力を活かした街並み

開発地はA〜Eの5街区に分かれており、「ミカン下北」はA・D・Eの3街区に19店舗が出店した(B街区は2022年夏に開業予定、C街区の駐輪場として2019年3月に開業済み)。カルチャー発信拠点となる書店や下北沢らしい物販店、個性的な飲食店舗を中心とする商業エリアと、「遊ぶように働く」を体現するワークプレイスが同居する施設となった。

「下北沢の魅力はやはり既存の概念にとらわれずに自分の価値観を持つ若い世代を中心に、アートなどの表現活動に関わる人たちが非常に多く、さまざまな形態の仕事や独自の店舗を発展させてきた街であることです。多様な人を受け入れクロスオーバーする空気感のある繁華街でありながら、治安が良く安全な街でもあります」とは、取材会に出席した世田谷区の保坂展人区長。

  • (左から)京王電鉄の紅村康代表取締役社長、世田谷区の保坂展人区長、京王電鉄 井の頭南管区長の品田晃広氏

「十数年前、下北沢の再開発が持ち上がった当時は大変熱い議論がありました。建物などが密集していて緊急車両が入れないなどの問題がある一方で、『再開発で街の価値を壊してしまうのではないか』といった声が広がり、議論が平行線で続いた時期もあります。しかし、地権者の方々や電鉄2社、世田谷区の連携による街づくりという基本軸が定まり、徐々に世田谷区の住民参加の街づくりが進みました」(保坂区長)

本プロジェクトで世田谷区はアクセス道路の整備により、下北沢駅周辺の防災機能の強化と歩行者などの回遊性の向上を図った。

  • 取材会では来賓と開発に携わった関係者で記念撮影が行われた

また、区立図書館が所蔵する資料の予約や貸出・返却等に特化した「図書館カウンター」を設置。"本棚のない図書館"をキャッチコピーに誕生した「図書館カウンター」は、三軒茶屋と二子玉川に次いで3施設目となる。

「賑わいのある商業地では大きな平米数を要する図書館はつくりにくいものの、高い需要があります。図書館カウンターは現在、先行する2カ所では多くの利用者がいらっしゃいます。また、下北沢で登記などが施設はこれまでほとんどありませんでしたが、下北沢ではスタートアップ支援にも力を入れています。大規模なシェアオフィスも展開するミカン下北は、さまざまな業界の企業や団体の方々が交流し、新しい価値や仕事を盛り上げる拠点としても期待が集まっているところです」(保坂区長)

下北沢にゆかりの深いテナントを誘致

ビルダーズの安田耕司代表取締役は、本プロジェクトの開発ビジョンについて紹介した。

「この開発への思いを一言で言うなら、下北沢という街をもっとローカルでユニークでオリジナルな街にしたいということでした。ビジョンとしては『進化』『深化』『真価』のトリプルミーニングで3つのシンカを挙げています。特に重視したのは3つ目のバリューの部分です。目先の利益を追わずに街の利益を上げていくことで既存の商店街と共存共栄し、街を盛り上げていくことを提案し、京王電鉄さんに深く共感していただいたことが本プロジェクトの原点と言えます」

  • "未完の建築物"をテーマとしたデザイン

施設全体のデザイン・設計を手掛けたのはドラフトの山下泰樹代表取締役。「下北沢は永遠に完成しない未完成の街である」とし、未完の建築物をテーマに高架のコンクリート構造やマッシヴな鉄骨そのものを組み合わせたデザインを具現化した。

「デザインの方向性としてマーケティング的な属性などに囚われるのではなく、時代の流れに柔軟に変化・対応しながらテナントさんと共につくり上げていく商業施設として、発信力のあるデザインを目指しました」(山下代表取締役)

こうしたコンセプトのもと、本施設には下北沢らしい個性的なテナントが誘致された。プロジェクト初期から参画する「TSUTAYA BOOKSTORE」は、下北沢カルチャーと相性の良く地元住民からも要望の多かった書籍売り場。下北沢エリア最大級のコミック売場と生活実用、ビジネス、アートデザインなど話題の書籍に力を入れて、2フロアで提供する。

  • キーテナントの「TSUTAYA BOOKSTORE」

下北沢に関連したブランドの雑貨など定期的にテーマを入れ替えつつ展開するほか、服飾雑貨・生活雑貨などのライフスタイルアイテムや、文具や家電商材も取り揃える。

さらに店内にシェアオフィスの利便性とラウンジの居心地の良さを兼ね備えた「SHARE LOUNGE」を併設。さまざまなイベントの実施などを予定している。カフェとしても働く場としても活用でき、遊ぶと働くが混ざる「ミカン下北」のコンセプトを体現したキーテナントとして施設の中核を担う。

1989年創業の「下北沢ワインショップ/Bar FAIRGROUND」はミカン下北に移転。下北沢で30年以上続くバーで、ウイスキーと果実のカクテル、スイーツを取り揃える。併設されるワインショップでは、国内では珍しいデザートワインを多種揃えた。テイクアウトの飲食物の持ち込みも可能とのことで、さまざまなペアリングを楽しめそうだ。日中のカフェタイムではコーヒーも提供する。

  • 「下北沢ワインショップ/Bar FAIRGROUND」

古着や手作りアクセサリーなど、およそ20の小さなお店がひしめき、下北沢のランドマーク的存在として愛されてきた下北沢発祥の「東洋百貨店」は2号店として「東洋百貨店 別館」をオープン。同店は商業施設初出店となった。

  • 「東洋百貨店 別館」

下北沢でのワークスタイルを提案

「ようこそ。遊ぶと働くの未完地帯へ。」というコンセプトが掲げられているように、下北沢に「働く」という新しいエッセンスを取り入れた点は、本施設の最大の特徴となっている。

  • オープニングセレモニーではコネル クリエイティブディレクター兼書道家の足立章太郎による書道パフォーマンスが行われた

駅至近・下北沢最大級となる「ミカン下北」内のワークプレイス「SYCL by KEIO」は、A街区(3月オープン/4、5階)、B街区(2022年夏オープン/3〜5階)の2棟合計5フロアからなり、幅広い「働く環境」へのニーズに応える施設となっている。

A街区4階はフリーアドレス/固定デスクを備えたコワーキングスペースフロア。入居メンバー同士の混ざり合いを意識した仕掛けを施しつつ、細長い区画を活かし、リラックスワークと集中ワークを使い分けられるようなゾーニングを行った。2つの会議室と5つのフォンブースがあり、MTG設備も充実している。

5階には1〜4名用の個室のシェアオフィスを用意。「CO-OP」というデザインコンセプトのもと、居心地の良いデザインに仕上げている。個室会員メンバーは4階のコワーキングスペースの併用も可能だ。下北沢やSYCLを拠点として使い倒したい個人・企業におすすめのフロアとなる。

キッチンやテラスなど、リラックスや入居メンバー同士が交流できる場を揃えつつ、イベント開催にも対応するほか、施設専属のコミュニティマネージャーが常駐。施設利用のサポートはもちろん、ビジネスマッチング支援なども行う。今年夏にオープン予定の「SYCL」 B街区では、下北沢エリアで希少な10〜30坪のオフィス区画を7区画用意する。