ロシア軍によるウクライナ侵攻は、私たちの家計にも影響を及ぼします。ロシアとウクライナは小麦やトウモロコシなどの穀物の主要輸出国であるため、穀物相場の高騰が懸念され、それによって、パンや小麦粉、パスタなどが値上がりすることが考えられます。他にもさまざまな影響が出始めています。そこで、ウクライナ情勢による家計への影響をまとめました。
▼穀物が値上がりする
小麦の国際指標である米シカゴ商品取引所の小麦先物価格が高値で推移しています。緊迫するウクライナ情勢によって穀物出荷見通しに不安が広がっている影響とみられます。
ロシアとウクライナは主要な穀物の生産・輸出国です。ロシアとウクライナを合わせた小麦出荷は世界全体の25%余りを占め、ウクライナはトウモロコシの輸出量世界4位です。 米シカゴ商品取引所では、小麦のほか、トウモロコシや大豆の先物も上昇しています。
日本は小麦の国内需要の9割を輸入に頼っていますが、両国からは輸入はしておらず、主に北米やオーストラリアから調達しています。しかし、東欧からの調達が滞れば、相場全体が高くなることが考えられるので、日本の小麦価格も影響を受けるでしょう。
大手製粉メーカー3社は、すでに今年1月上旬から家庭用の小麦粉を値上げしています。輸入小麦は政府が買い付け、製粉各社に売り渡す仕組みになっており、年2回、4月と10月に政府売渡価格が改定されます。今年1月の値上げは昨年10月の売渡価格が反映されたものなので、ウクライナ情勢の影響はこれからとなります。今年4月の価格改定によっては、さらなる値上げの可能性も出てくるでしょう。
*こんなものが値上がりする
小麦粉が値上がりすることで、パン、パスタ、うどん、カップ麺などが値上がりするでしょう。また、トウモロコシの相場が高騰すると、それらを飼料としている畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品)の価格が上昇します。大豆相場の高騰は、食用油や大豆を使った各種食品の値上がりにつながります。
▼半導体不足に拍車がかかる
ウクライナは、ネオンやパラジウムなどの半導体の原材料ガスの主要産出国であり、中でも世界のネオンガスの約70%を供給しているとも言われています。ウクライナ危機によって、半導体製造コストが上昇すれば、半導体の価格に転嫁されます。
現在、世界的な半導体不足に陥っています。
自動車メーカーでは、半導体不足により減産体制を強いられ、ゲーム機やスマートフォン、医療機器なども半導体不足によって、生産に影響が出ています。
ウクライナ危機によって、半導体の製造に影響が出れば、半導体不足に拍車がかかり、使用製品の価格が上昇する恐れがあります。
▼ガソリンが値上がりする
ロシアは世界3番目の原油生産国です。ロシアからの供給が滞ることへの懸念が強まり、原油の先物価格は上昇しています。この原油価格の上昇を受けて、レギュラーガソリンの小売価格も上昇しています。2月21日時点のレギュラーガソリンの小売価格は、全国平均で1リットル当たり172円となり、7週連続で値上がりしています。
政府は急激な値上がりを抑えるため、1リットル当たり5円を上限に補助金を出していましたが、すでに上限に達しているため、追加措置として上限を25円にする方針を固めました。これによって、今後の急激な価格の上昇は抑えられそうですが、すでに高値になっているガソリン価格が家計に及ぼす影響は大きいでしょう。
▼電気料金が値上がりする
電力大手10社の4月分の電気料金は、料金が制度の上限に達した3社を除く7社が引き上げを決定しました。火力発電所の燃料となる液化天然ガス(LNG)や石炭の価格高騰が響き、今回で新たに2社が上限に達しました。ロシアによるウクライナ侵攻で、料金の高止まりが懸念されます。
主な電力会社の4月の電気料金(標準的な家庭1カ月当たりの料金)は、中部電力ミライズが8076円(前月比127円高)、東京電力エナジーパートナーが8359円(前月比115円高)、東北電力が8431円(前月比98円高)となっています。
▼金価格が上昇
「有事の金」と言うように、ウクライナ情勢が金の価格に影響を及ぼしています。2月21日に先物、現物ともに過去最高値を更新したのちも、上がり続けています。(2月25日現在、田中貴金属工業の1グラム当たりの小売価格7,827 円) 世の中が先行き不透明で漠然とした不安がある時、安全資産としての金は買われる傾向にあります。ロシア、ウクライナの緊迫が続けば、今後も金の価格は高値で推移していくと思われます。
▼家計への影響まとめ
ここまで、ウクライナ情勢が私たちの生活に及ぼす影響をまとめました。小麦粉や大豆、トウモロコシなどの原料の高騰による食品の値上げについては、確定事項ではなく、あくまでもそうなる可能性があるという話ですが、ガソリン価格や電気料金などは、もうすでに上がっており、私たちの生活に影響が出始めていると言えるでしょう。
ただ、政府はガソリン価格の高騰を抑える補助金を出したり、電気料金に上限を設けたりするなどの対策をとっています。そのため、家計に急激な打撃がくることはないと思われますが、じわじわと家計を圧迫してくることは想定しておいた方がいいでしょう。