カフェの開業を考えるなら、必要な資金や資格、手続きなどを事前にしっかりリサーチしておきましょう。やるべきことがわかっていれば、開業までスムーズに動くことができるからです。本稿では、カフェを開業するために必要な資金の内訳、取得しておく資格や手続きについて解説しました。カフェの開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

■カフェの開業にかかる資金の内訳

カフェの開業を決めたら、まず、どのような資金がかかるのか内訳を把握することが第一歩です。カフェの開業資金には、以下のようなものが挙げられます。

物件取得費

店舗を契約する際に必要となる「物件取得費」は、保証金、礼金、仲介手数料を合わせた費用のことです。このうち保証金は、家賃の3~10カ月分、礼金と仲介手数料はそれぞれ家賃の1カ月分を想定しておく必要があります。

また、契約後に工事を行う期間の家賃を最低1カ月分、さらに、営業開始月の前払い家賃を1カ月分支払います。保証金が家賃の何カ月分かかるかにもよりますが、物件取得費全体としては「家賃の10倍程度」としておきましょう。

内外装工事費

カフェの開業資金のうち最も比重が高いのが、この「内外装工事費」です。デザインによって異なるものの、1坪あたりの単価は20~50万円程度となります。内外装工事費はお店のコンセプトで費用が大きく変わるため、デザイナーや工事業者と事前にしっかり打ち合わせをしておくと、費用の目安がつけやすいでしょう。

厨房設備費

厨房設備は、カフェでどのようなメニューを提供するかによって必要なものが異なります。基本的なものとしては、冷蔵庫、ガスコンロ、シンク、調理台、製氷機などでしょう。その他、パンを焼くならオーブン、エスプレッソを出すならエスプレッソマシンなど、使う設備を選定します。

厨房設備費の目安は、10坪ほどの店舗で120万円程度です。設備の中には高額なものもありますので、物件選定と並行して決めていきましょう。

食器類、備品、家具等の費用

カフェには欠かせない食器類のほか、レジや看板、その他テーブルや椅子など家具にかかる費用も忘れてはいけません。食器類や家具は、こだわればこだわるほどコストが高くなりがちです。オリジナリティを出しつつ、うまく費用を抑えましょう。10坪ほどの店舗なら、30万円程度が目安です。

その他、看板は設置費として20万円、POSレジの導入費は10万円が相場となっています。

運転資金

カフェを開業するにあたり、最も重要なのは「運転資金」です。運転資金は、家賃や光熱費、従業員への給与などが含まれます。開業直後には赤字期間があることを踏まえ、運転資金は、「固定費の6カ月分」を用意しておきましょう。なお、固定費は、家賃、水道やガスの基本料金、リース代、融資の返済など、毎月必ず出て行くお金のことです。

これらを合わせると、カフェの開業資金は、500~600万円程度必要とされています。飲食店の開業資金は平均1,000万円ですので、それを踏まえれば、カフェの開業は資金的なハードルがやや低いのかもしれません。

一方で、たとえカフェをオープンできたとしても、お店を成功させ、長く続けることは簡単ではありません。コンセプトを固め、事前の準備を入念に行うなど、しっかりと道筋を立てることが大切です。

■カフェの開業に必要な資格、手続き

カフェを開業するには、いくつかの資格や手続きが必要です。まずは、以下に挙げる2つの資格について解説します。

<カフェの開業に必要な資格>

・食品衛生責任者

カフェに限らず、飲食店を開業するためには必須の資格です。食品衛生責任者の資格を取得するには、各都道府県の食品衛生協会が実施している講習を受講します。費用は1万円ほどです。

・防火管理者

開業する飲食店の収容人数が30名以上の場合、防火管理者の資格が必要となります。日本防火・防災協会開催の講習を受けることで取得できます。講習は、管轄の消防署が開催している場合もあります。

店舗の延べ面積が300平方メートル以上の場合は「甲種講習」となり、2日で10時間の講習を受けます。300平方メートル未満の場合は「乙種講習」となり、1日で5時間の講習を受けます。受講料は、甲種講習が8,000円、乙種講習が7,000円です(消防署の開催は、日程や受講料が異なる)。

次は、カフェを開業する時に必要となる手続きを確認してみましょう。

<カフェの開業に必要な手続き>

・食品営業許可申請

飲食店を営業する場合に必要となり、保健所に申請します。店舗の設備について細かい決まりがあるため、店舗着工前に設計者と所轄の保健所へ行き、あらかじめ相談をしておきましょう。

・菓子製造業許可申請

店舗内でパンやケーキ、お菓子などを製造し、テイクアウトや卸業をする場合、保健所に申請します。菓子製造業許可申請を行う場合、基準を満たした施設と設備を整える必要があるため、通常の設備より工事費が割高になる可能性があります。

店舗メニューとしてパンやケーキ、お菓子を提供するなら、この申請は不要になる場合があります。あらかじめ保健所に確認しておきましょう。

・防火管理者選任届

収容人数が30名以上の場合、消防署に提出します。

・火を使用する設備等の設置届

ガスコンロなど火気を使用する場合、消防署に提出します。

・防火対象設備使用開始届

防火対象物の使用を開始する際、こちらも消防署に提出します。

・深夜酒類提供飲食店営業開始届出書

カフェでアルコールを提供するのに手続きは不要ですが、深0時以降、酒類を中心に提供する場合は、この届出を警察署に提出します。

・個人事業の開廃業等届出書

個人で開業する場合、開業日から1カ月以内に税務署に提出します。

・雇用保険の加入手続き

従業員を雇う場合、公共職業安定所(ハローワーク)で手続きを行います。

・労災保険の加入手続き

従業員を雇う場合、労働基準監督署で手続きを行います。

・社会保険の加入手続き

個人事業主として従業員を雇う場合、社会保険の加入は任意です。しかし、法人として従業員を雇う場合、社会保険は強制加入となります。社会保険事務所で手続きを行います。

■綿密な計画を立てしっかり準備を

カフェの開業は、資金面や必要な資格から考えると、とても難しいというわけではありません。ただし、長くお店を続けるには、経営を軌道に乗せるための様々な工夫、スキルが必要です。資金調達や資格の取得、手続き進める一方、リピーターの獲得や集客など、経営上の戦略もしっかり立て準備していきましょう。