■物語後半からは、中越家の問題へ
――今後の見どころを教えてください。
マンションの住人たちが持つ悩みが、解決はしないけどちょっとだけいい感じになって、皆が「チカラさん」と頼ってくれるようになる。そこからが見どころです。住人たちのことで奮闘していたチカラくん自身に大きな問題がのしかかって、自分とはなんなのかという問題を突きつけられて……松潤はどんどん台詞が多くなるので、大変だと思います(笑)。
――中越家の問題も描かれていくのでしょうか。
妻や子供2人の問題も出てきて、楽しいだけの一家では終わりません。その一方でマンションの住人のつながりや、新たな軋轢も生まれてくる。チカラに対する住人の態度も良くなって終わりではなく、優しくしたら図に乗る人がいたり、裏切られたと感じてがっかりする人がいたり……一筋縄ではいかない、常に変わっていくリアリティのある人間関係を描いていきたいです。
■松本潤、上戸彩は「台詞の膨大さに怯えている」
――中越家の問題を描くにあたり、松本さん、上戸さんと改めて話し合ったことはありますか。
ここまでしっかり自分のキャラクターを作り上げてきたので、ここからはシーンごとに一緒に考えていきましょうという段階ですね。展開については、気に入ってくれていると思うのですが、2人とも台詞の膨大さに怯えています(笑)。台詞が膨大だとシーンとして持つのかというところが難しいですが、面白いシーンになっていくと思いますので楽しみにしていただければと思います。2人とも真摯で前向きな方なので、「ドラマのキャラクターとしてではなく、リアルな人間だったらどうなるのか」という一番大事なところに向き合ってくれています。灯ちゃんは、強いだけではなく弱い部分もある。チカラくんも、いい人だけど嫌な面もある、すべて含めて人間だから、全部出していきましょう、と。本当の人間性は、他人の話ではなく、自分の問題に直面したときに出てくるもの。中越家の問題を描くことでさらにリアリティを追求していきたいと伝えています。2人からは、演じながら「今自分はどう見えていますか」という質問が来ますね。感情を出しすぎるとキャラクターが崩れかねないので、2人ともさじ加減が難しいと悩みながらやっています。
■演出も美術も素晴らしい『ミステリと言う勿れ』
――後半の展開や長台詞を楽しみにしています。最後に、遊川さんは、過去のインタビューで最近面白いと感じた作品に『逃げるは恥だが役に立つ』を挙げていました。近年印象に残っている作品があれば教えてください。
たくさんありますよ! 一番最近で言いますと、『ミステリと言う勿れ』。とっても面白くて、「やられた」と思いました。ドラマの面白さに原作があるかないかは関係ないのですが、僕はセコい人間なので漫画が原作だと聞いて少しだけホッとしています(笑)。演出もすごいですし、セットや美術が素晴らしい。僕はやっぱり「かっこ悪い男性キャラクター」が好きなので、菅田(将暉)くんも、かっこよすぎる役よりちょっと変わった役をしている姿に魅力を感じます。『ミステリと言う勿れ』では「僕はただの大学生です」というフラットな役どころが面白いですし、『コントが始まる』での続けるかやめるかを悩む売れない芸人というキャラクターにも共感できた。菅田くんは素晴らしい役者さんです。
1955年10月24日、東京都生まれ、広島県育ち。87年、『うちの子にかぎって…スペシャルII』で脚本家デビューを果たす。代表作に『GTO』、『魔女の条件』、『純と愛』、『過保護のカホコ』、『同期のサクラ』など。2017年には『恋妻家宮本』で映画初監督を務めた。『さとうきび畑の唄』で文化庁芸術祭大賞(テレビ部門)、涙そうそうプロジェクト『広島 昭和20年8月6日』で2006年日本民間放送連盟賞番組部門・最優秀作品、『女王の教室』で第24回向田邦子賞、『家政婦のミタ』で2012年東京ドラマアウォード 脚本賞、『はじめまして、愛しています。』で第5回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 脚本賞と、多数の受賞歴を持つ。