ニュースやビジネスシーンでよく使われる「依拠」ですが、正しい読み方や意味を把握しているでしょうか。なんとなく使っていても、その用法が合っているか自信がないという人も多いはず。
この記事では「依拠」の正しい意味と使い方、類義語や対義語、英語表現についてご紹介します。似ている言葉との違いについても解説するので、多方面から理解を深めていきましょう。
「依拠」とは
「依拠」の読み方
「依拠」は「いきょ」と読みます。
「依拠」の意味
「依拠」とは、ある物事や事柄に基づくことや、よりどころとすることを意味する言葉です。ある存在をよりどころにするという意味もあります。
何らかの物事や存在、事柄などを頼りにしたり基準としたりする際に使われる言葉です。
「依拠性」とは
著作権関連の言葉として「依拠性」というワードを聞いたことがあるでしょうか。「依拠性」は、著作権法に関する用語で「既にある誰かの著作物を真似したり利用したりして創造する」という意味です。
自分で作ったオリジナル商品ではなく、既にある他人の作品や案を利用することによって作った商品や作品は、「依拠性」があると判断されかねません。依拠性があると判断されてしまうと、著作権侵害の疑いと結論づけられることもあります。
「依拠」の使い方・例文
ここからは「依拠」の使い方について、例文を交えながら紹介するので、実際に使えそうな場面を想像しながら身につけていきましょう。「依拠」が使われるシーンとしては、小説や文章の中、ビジネスシーンが多いといえます。
「経営学に依拠した行動です」
何かの学問や分野を参考に文章や作品を作り上げた場合には、「〇〇に依拠した~」と表現するのがいいでしょう。「経営学に依拠した行動です」は、経営学に基づいて考えた結果の行動という表現になります。
「今までの経験のみに依拠するのはやめたほうがいい」
新しい物事が生み出せていない状況や、新しい事業に手を出せていない状況など、過去の実績や経験に頼っている様子を注意する際の例文です。「今までの経験のみに依拠する」とすれば、自分自身の経験にだけ頼っている・依存しているというようなニュアンスになります。ビジネスシーンで使われそうな表現です。
「価値観に依拠した結論を出した」
自分の価値観を頼りに結論や結果となる意見を出した際に使われそうな表現です。「自分の価値観に依拠した・彼の価値観に依拠して」など、価値観をもつ相手に頼ったことがわかる表現になっています。
「依拠性の有無を確認しましょう」
「依拠性」と使うのは法律用語なので、多用する表現ではないかもしれません。「依拠性の有無を確認しましょう」というのは、他人の作品や考えを真似したり利用したりして作品が作られていないか調べる・その可能性を確認するという意味になります。そのため、ある作品ができあがって「依拠性の有無を確認する必要がある」となった場合、著作権関係で裁判などに発展するかもしれません。
「依拠」の類語・言い換え表現
何かの物事や存在を頼りにするという意味の「依拠」ですが、似たような意味をもつ言葉もいくつかあります。言い換え表現にもなるので、ケースや相手にあわせて使い分ける際にも役に立ててみてください。
「準拠」
ある物事や事柄、存在をよりどころにしてそれに従うことや、そのよりどころ自体を意味しています。ほとんど同じような意味ですが、「依拠」よりも、従っている・頼っているというニュアンスが強く含まれています。
どの程度よりどころとなるものに頼っているのか、従っているのかによって、2つの用語を使い分けるようにしましょう。
「依存」
何か他のものや存在に頼って自分自身が存在することや生活することを意味しています。依存対象がなくなると、自身の存在が成立しないという状態です。また、依存対象が明らかになっていない文章を作成してしまうと正しい表現にはなりません。
「過去の実績に依拠している」とすると、過去の実績を参考にしたり頼ったりする様子を意味します。しかし、「過去の実績に依存している」となると、過去の実績がないと何もできない状況や自分自身が存在できなくなるようなイメージになります。存在や生活できなくなる様子を表したいときは「依存」を使うといいでしょう。
「立脚」
ある物事や事柄を頼りにしてそれに従うこと、立場を決めてそれをよりどころとすることを意味します。ほぼ同じ意味に感じられますが、「立脚」は自分自身がよりどころとする立場を決めるといったニュアンスを含んでいるといえます。
「則る」
規則や基準、手本としてそれに従うことや、模範にするという意味をもちます。「依拠」よりも従っているニュアンスが強く、どちらかといえば「準拠」に近いイメージです。参考にする程度ではなく、しっかりとそれに沿っている様子を表したいときに使いましょう。
「依拠」の対義語
「依拠」の対義語となる言葉はありません。反対の意味で言葉を使いたいときは、「依存」の反対語となる言葉を使うといいかもしれません。ここからは、対義語と近いニュアンスの言葉について解説していきます。
「独立」
「独立」は他のものや存在から離れて別々になっていることや、他のものからの束縛や支配などを受けずに自由に行動している様子などを意味します。他の存在を頼りにして存在している・生活しているという意味の「依存」と反対の言葉だといえるでしょう。
別々になっていることという意味では「依拠」の反対語のようなイメージですが、束縛を受けずに自由にしている様子は少しニュアンスが異なります。全くの反対語ではないので、使う際には注意しましょう。
「自立」
他の物事や存在に従っていたが離れて独り立ちすること、支配を受けずに存在できることを意味します。また、支えるものや依存先がなくても、自分自身のみで立っていることの意味もあります。
元々は何か別の存在や物事を頼りにしていたが、現在は自分自身のみで立っているという変化があった場合に適切な言葉でしょう。この言葉も、「依拠」の対義語ではないので、使う際は注意してください。
「依拠」の英語表現
「依拠」を英語で表現したい場合は、依存・従属・頼るという意味をもっている単語が適切です。「dependence(依存・従属・頼み)」「to rely on(頼る・期待する)」などが適しているでしょう。
「dependence as a standard」とすれば、基準・基本として依拠することを意味し、「something to rely on」は何か依拠するものという意味になります。
「依拠」「依拠する」の意味や使い方をマスターしよう
「依拠」は何かの存在や物事を頼りにする意味や基準とする意味をもっています。小説や文章、ビジネスシーンで意見を述べるときなどに使われるのがメインです。ただ、「依拠性」とすると法律用語になり著作権関連の言葉になるので、使う際は注意してください。
類義語としては「依存・準拠」などが挙げられますが、対義語はありません。似たようなニュアンスの言葉を選ぶ際は、正しい使い方や意味になっているか再度確認するといいでしょう。