「忌避」という言葉を新聞や書類などで目にしたことがありますか? あるいは、法廷ドラマを見ていて聞こえてきたことはないでしょうか。見聞きしたことがあっても、日常会話ではあまり使う機会がないので「実は意味がよくわからない」と思っている人もいるでしょう。本記事では忌避の意味や読み方を紹介。また、類語や対義語、例文を交えた正しい使い方も解説します。

  • 忌避とは

    「忌避」の意味や使い方を知って、正しく使えるようになりましょう

忌避とは

「忌避という言葉を見聞きしたことはあるけど、どういう意味までかはわからない」そんな方もいるでしょう。まずは忌避の読み方や基本的な意味、また法律用語としての意味を紹介します。

忌避の意味と読み方

忌避は「きらって避けること」という意味の言葉です。「きひ」と読みます。

「不吉」「縁起が悪い」「不愉快である」「嫌な感じ」などを意味する「忌」と、「よける」といった意味をもつ「避」の文字から成り立つ言葉です。

法律用語としての忌避

忌避は、一般的な使い方のほかに法律用語としても使われます。この場合、公平な裁判の妨げになる恐れがある人物を職務執行から排除するよう申し立てる行為を指します。民事訴訟法24条、刑事訴訟法21条でそれぞれ定められている制度です。主に裁判官が対象になりますが、裁判所書記官や鑑定人・仲裁人、通訳人などに対し忌避を行うことも認められています。

また、忌避と似た制度で「除斥」「回避」があります。いずれも職務から外れることを指しますが、除斥はその理由が法律で認められたケースに該当しているとき、忌避はそれ以外の理由であるとき、という違いがあります。例えば、原告が裁判官と四親等内の血族である場合は除斥、原告と裁判官が親友である場合は忌避となります。一方、回避は裁判官が忌避や除斥の原因があるときに自ら退くことを指します。

法廷を舞台にした映画やドラマ、小説などに触れると目にすることもあるかもしれません。ストーリーがより理解しやすくなるので、ぜひ覚えてみてはいかがでしょうか。

忌避剤とは? 読み方と用途

忌避は相手に直接的な危害を加えるものではなく、「近づかせたくない」というニュアンスで使用する言葉です。つまり、積極的に対象を攻撃するような行動とは異なります。

害虫対策用品の中に忌避剤と呼ばれる薬剤がありますが、これは虫が好まない匂いや成分を使用して害虫を近づかせない目的のために使います。殺虫剤とは別のものなので、害虫対策で薬剤を購入するときはパッケージなどをよく読み、間違えないよう注意してください。読み方は「きひざい」です。

  • 忌避とは

    忌避剤は害虫を近づかせないために使用する薬品です

忌避の類語や対義語

ここでは忌避に意味が似ている類語や反対の意味を持つ対義語を紹介します。

敬遠

敬遠には「かかわりを持つのを嫌い、その物事を避ける」という意味があります。忌避と同じような意味を持つ類語だといえるでしょう。

敬遠は、「霊や神を大切に敬って、むやみに近づかない」という論語に記載された孔子の言葉が由来と言われています。しかし、現在では「大切に敬って」の部分が薄まり、「嫌いな物事に関わらない」「嫌なことを避ける」などのシチュエーションに用いるのが一般的です。

回避

前述した法律用語としてではなく、日常で使う場合の回避は、「物事を避けてぶつからないようにする」「都合の悪い状況にならないようにする」などの意味を持ちます。 忌避は対象に嫌な感情がありますが、回避は対象にぶつからないために避けるだけで、そこに好き嫌いの感情は含まれません。

例えば、「計画への参加を忌避する」は計画に対して嫌いな気持ちがありますが、「計画の参加を回避する」では計画に参加しないことはわかるものの、好き嫌いの感情までは読み取れません。どちらかを用いる際は、シーンにあわせて使い分けましょう。

よける

「よける」は対象物にぶつからないように身をかわすことや、わきに寄るという意味を持つ言葉です。そのほか、「事前に被害を防ぐ」「災いから逃れようとする」のような、自分に降りかかる問題を避けるという意味合いも持っています。

忌避の対義語

忌避は「嫌って避けること」です。その対義語にあたる言葉は「歓迎」や「歓待」などが挙げられるでしょう。

歓迎には「喜んでむかえる」「喜んで受け入れる」などの意味があります。歓待は「手厚くもてなす」という意味です。

どちらも対象を嫌うことなく受け入れる行動を示す言葉なので、忌避とは正反対の言葉といえるでしょう。

  • 忌避の類語や対義語

    類語も覚えてみるといいでしょう

忌避の使い方

ここでは忌避を正しく使うために知っておきたいポイントや、忌避を使った例文を紹介します。

忌避を使うシーン

忌避という言葉を知っていても「昨日の休日は家族サービスを忌避しちゃってさぁ」など会話で使っている人はあまり見かけないでしょう。忌避は日常会話よりもビジネスシーンで使用されることが多い言葉です。書類の作成などで使う機会があるかもしれないので、誤った使い方をしないよう気を付けましょう。

注意すべき点

忌避は「嫌いな人を避ける」「気の進まない用件から逃げる」など「嫌だと思う対象を近づかせたくない」ときに使用します。「嫌いな人を追い出す」などの直接的な被害を与えるときに使用するのは適していません。

忌避を使った例文

「彼はプロジェクトへの参画を忌避しているようだ」

「社内運動会は若手社員に忌避されるイベントだ」

「原告側が裁判官の交代を求めて忌避を申し立てるようだ」

  • 忌避の使い方

    忌避はビジネスシーンなどで見かける言葉です

忌避感とは

「不信感」「肯定感」などのように「忌避感」と表現することがあります。ここでは忌避感について、意味や推奨できない使い方を解説。忌避感を使用した例文もあわせて紹介するので、確認してみましょう。

忌避感の意味と読み方

忌避感は「きひかん」と読み、「人物や物事を嫌い、避けたいと思う感情」を表す言葉です。感は物事に対して何かしらの感情を抱くという意味があり、接尾辞として使われるときには「~のような感情」「~のような感覚」という意味になります。

忌避感を感じるは重複表現

「頭痛が痛い」「連日寒い日が続く」など同じ意味の言葉を繰り返し使うことを重複表現といいます。忌避感、危機感など「感」が付く言葉も「忌避感を感じる」「危機感を感じる」、といった使い方をすると重複表現にあたるので注意が必要です。

「あとで後悔する」「立場に立つ」など日常で頻繁に使う言い回しもあるため、重複表現のすべてが誤用とは言い切れません。しかし、あまりスマートな表現ではないので避けたほうが無難です。

代わりに、「忌避感を抱く」「忌避感を持つ」「忌避感がある」「忌避感が生じる」などの表現を用いるといいでしょう。

忌避感を使った例文

「新規の開発プロジェクトは不透明な点が多く、忌避感を抱く社員もいるようだ」

「マンション建設に対して周辺の住民は忌避感を持っている」

「正直に言って、直属の上司とは相性が悪く忌避感がある」

  • 忌避感の意味や読み方

    忌避感を感じる、は重複表現になります

忌避の意味や正しい使い方を知ろう

忌避とは「嫌って避けること」という意味があります。日常会話ではあまり使われませんが、文書では見かける機会もあるでしょう。また「裁判官などを職務執行から排除する申し立て」を指す法律用語でもあります。

類語である敬遠や回避といった言葉や、対義語の歓迎・歓待などの言葉もあわせて覚えておくと役立つはずです。自身で文書を作成するときも忌避やそれに近い言葉を使う機会があるかもしれません。そういった場面に備えて、忌避の意味をしっかりと把握し、正しい使い方を覚えてみてはいかがでしょうか。