ビジネスシーンや日常生活において「付与」という言葉はよく使われているでしょう。なんとなくの意味はわかるものの、正しい意味を説明できる人は少ないかもしれません。

本記事では「付与」の正しい意味と使い方、類義語についてご紹介します。また、ポイ活などでよく使われる「還元」「付加」との違いについても解説します。

  • 「付与」

    ポイント制度などでよく目にする付与という言葉について学びましょう

「付与」の正しい意味とは?

ポイントなどでよくみる「付与」という言葉は、添えること・授け与えること・付け加えて与えることを意味します。授けること、与えることを意味するので、基本的には返却されないニュアンスで使われます。貸すのではなくあげるといったイメージが近いでしょう。プレゼントや完全に相手のものをあげるときに使います。

もしレンタルする場合や一時的に渡すだけの場合は、「付与」を使うのは適切ではありません。貸すという意味をもつ言葉を使って表現するようにしましょう。

「付与」の由来について

「付」という漢字は与える、渡すという意味をもっており、「与」にも与えるという意があります。この2つの漢字が組み合わさり、「付与」、授けることを表現すると考えられます。

漢字から意味を推測できる言葉なので、意味がわからなくなった場合は漢字や漢字の成り立ちに着目してみるといいでしょう。

「附与」との違いはある?

一般的には「付与」という漢字が使われますが、まれに「附与」という漢字表記になることがあります。この2つの表記に差はなく、どちらも「授け与えること・添えること」といった意味合いをもっています。意味自体は変わらないので「附与」と書いてあっても、同じ解釈で問題ありません。

「付与」と表記する場面のほうが多いので、何か事情がない限りはシンプルなほうを使うようにしましょう。

「付与」を敬語で表現するなら?

「付与する」を敬語で表現する場合、そのまま使ってしまうのは失礼になることがあります。目上の立場から与えているような印象になってしまうので、相手からは上から目線だと感じられてしまう可能性もあるでしょう。

目上の人にいうときや印象を悪くしたくないときは「差し上げる」と言い換えましょう。与える・やるの謙譲語である「差し上げる」を使うことで、自分をへりくだって相手の立場を敬うことができます。

また、謙譲語を使うときは自分を主語にするよう気をつけましょう。「この本を差し上げます」のように、自分の動作にのみ使うようにしてください。

  • 「付与」

    付与は授け与えるという意味をもっており敬語にするなら表現の変更が必要です

「付与」の類義語は?

ここからは「付与」と似たような言葉について解説します。ポイントに関するシーンなど同じような場面で使われることが多いので、違いを把握しておくといいでしょう。

「授与」

「授与」の意味は授け与えることで、付与とほとんど同じ意味をもっています。ただ、ニュアンスとしては授与のほうが、授け与える側の立場が高い位置にあると考えられています。「免許状の授与・合格証の授与」など、高い立場から授け与える場合に使われることが多い言葉です。

「賜与」

「賜与」は”しよ”と読み、これも授け与えることを意味しています。「賜与」の場合は、身分の高いものや目上の者が、目下の者に金品を与えるシーンで使われます。「褒賞を賜与する」など金銭の取引がある場合に使います。

敷居の高いやり取りや正式な場面で使われる言葉なので、日常的にはあまり使わないかもしれません。

「貸与」

「貸す」という漢字が入っていることから、貸し与えることを意味しています。金品でも物でも、返すことを前提として与える場合に使われます。「住居を貸与する」など返すことが前提である賃貸契約で使われるなどが一般的でしょう。

何かを相手にあげる際は「付与」で問題ありませんが、一時的に相手に渡す場合は「貸与」という言葉を使うのが適切です。シーンや契約内容によって表現方法を選択しましょう。

「還元」

「還元」は物事を元の状態に戻すことや戻ることを意味します。何か与えられていたものが元の状態に戻ることを表現したい場合に使われます。

身近な例では「還元率」といった言葉が挙げられるでしょう。これは、利用金額に対しどれくらいの率のポイントが戻ってくるかという意味を表しています。つまり、使った金額のいくらかがポイントとして元に戻るといったことなのです。

「付加」

「付加」は元々の形に付け加えることを意味しています。「付け加える」といったイメージで使われることが多く、元からあるものにプラスするニュアンスです。「条件を付加した」「価値を付加した」など、プラスアルファを付け加えた場合に使います。

  • 「付与」

    ポイント関連などで使われがちな言葉との違いを把握しておくとポイ活も有利になります

「付与」の対義語を解説

では反対に「付与」の対義語についても把握しましょう。授け与えるという意味をもつ「付与」の反対となると、奪うような意味合いが思いつくのではないでしょうか。

「剥奪」

「付与」の対義語とされるのは「剥奪」です。ある人や場所から剥ぎ取って奪うことや、力づくで奪い取ることを意味します。与えるとは反対の意味である、奪う・取り上げるといった意味をもっています。

対義語は少ないですが奪われるといった意味の言葉が適切なので覚えておきましょう。

  • 「付与」

    「権利を剥奪された」など与えられていたものを奪い取られた際に使いましょう

「付与」の使い方を例文で紹介

「付与」の意味や似ている言葉との違いが把握できたところで、例文を交えて使い方を解説します。実際に使えそうな場面を想像してみてください。 

「必要な能力を付与するために教育訓練を行う」

目にはみえない能力を授け与える場合にも使えます。会社で働くために必要なスキル、能力を伸ばすために訓練を行う際に「教育訓練で能力を付与する」などという使い方をすることがあります。付与は実体のないものに使っても問題ないので、ビジネスシーンなどで使ってみてください。

「報奨として土地を付与します」

何か功績を収めた人や貢献してくれた人に対して、評価という形で何かをあげることがあるでしょう。その際に「〇〇を頑張ってくれたから土地を付与します」と表現することができます。付与したものは返ってこないことが前提となるので、あげるというニュアンスで使いましょう。

「当店ではポイント付与を行います」

ポイ活などで目にする人も多いであろうこの表記。ポイントは基本的に返ってこないものなので、ポイントを付与という表現になります。「〇〇円以上お買い上げのお客様にはポイントを付与します」などと使いましょう。

  • 英語で

    例文を覚えておくだけでなくどのように使うのかをイメージしておくといいでしょう

英語で表現する場合

英語で表現するときは、「あげる」というニュアンスになることが多いといえます。「give(あげる・与える)」「addition(付与する・添加する)」「grant(付与する・与える・許可する)」などが使われることが多いでしょう。

「grant a privilege」とすれば、特権や権利を付与するという表現になります。簡単な表現にしたいのであれば「grant」を「give」に置き換えてもいいでしょう。

  • 「付与」

    英語での表現方法はあげるや与えるといった意味をもつ単語を使うのが適切です

「付与」は”授け与える”場合に使われる言葉

付与は何かを授け与えるという意味をもち、ポイントや権利などを与える場合に使われます。上から目線のような雰囲気を感じさせる言葉なので、敬語表現にするときは「差し上げる」にするように気をつけましょう。

また、ポイ活などで一緒に目にする「還元」「付加」の意味もあわせて把握しておくと便利です。どうやって与えてもらえるのか知っておくと、ポイントだけでなくさまざまな場面で役に立つことでしょう。