毎年、年末になると政府より「税制改正大綱」が発表されます。12月初旬に発表され、令和4年度(2022年度)版は12月24日に閣議決定されました。その後国会で審議され、正式に税制改正事項として、おおむね3~6月ごろに順次発布となります。新規の項目もあれば、現状の措置を延長したもの、話題になっていたけれど改正を見送られたものなどさまざまですが、住宅ローン減税はどう変わるのでしょうか。令和4年度の改正予定事項を見てみましょう。
社会の経済状況と住宅ローン減税
住宅ローン減税とは、居住用住宅を住宅ローンの借り入れを伴って取得した場合、ローン残高に応じた一定の比率の金額を所得税から控除することができる制度です。住宅産業は関連産業の裾野が広く、経済活性化の効果が高いのが特徴です。したがって古くから、この制度は経済活性化のテコ入れ策として位置づけられてきて、経済が低迷して以降の減税額は大幅に拡大してきました。
現在はコロナ禍にあります。新規患者は第4波から見ると大幅に減少していますが、年末から上昇しています。第1波の後もほぼ終息したかの数値でしたが、その後第2波、3波、4波と続いています。経済も予断を許さない状況です。したがって、まだまだ重要な政策としての位置づけにはあるでしょう。ただし幾分縮小傾向にはあります。
令和4年の税制改正大綱による住宅ローン減税の概要
下記の表は住宅ローン減税について、今回発表された税制改正項目をまとめたものです。赤字で記載している部分が、変更事項です。冒頭にあるようにまだ確定ではありません。また大綱に記載されていない細かい部分は、今後やり取りがあり、明らかになっていきます。おおむね令和3年の考え方を踏襲するとしてみて大きな間違いはないとは思いますが、今後の動向は注目していく必要があります。
ポイント1 控除率が新築、中古住宅1律の0.7%となりました。
ポイント2 控除期間は13年と10年です。
- 新築住宅と買取再販住宅は13年間(または10年間)
- 仲介業者等を通じて個人間で売買した場合の中古住宅は10年間 ※個人間売買には消費税はかかりません。その分期間が短くなっています。同じ中古住宅でも不動産業者等が買取りし、リフォーム等を行ったりして販売する買取再販住宅には消費税がかかります。
ポイント3 認定住宅の内訳が細分化され、性能に応じて適用限度額が異なります。
ポイント4 住民税の控除率が5%に引き下げとなり、上限額も引き下げられました。
所得税から控除されなかった分は住民税からも控除可能です。
ポイント5 中古住宅の築年数が緩和されました。表の備考欄※4参照。
ポイント6 所得要件が2,000万円に引き下げられました。
その他対象となる家屋と土地の主な条件
この項目は一部今回の改正事項も追加していますが、令和3年の規定がそのまま適用されるものとしています。参考にしてみてください。
- 住宅取得等(所定の土地も含む)にかかるローンであること
- 返済期間が10年以上であること
- 床面積50m2以上(注1)、床面積の1/2以上が適用者の居住用であること ※注 令和3年度税制改正大綱により、合計所得1,000万円以下で、控除期間が13年の対象となる場合は、床面積は40m2以上に緩和されます。令和4年の税制改正大綱で令和5年までに建築確認されれば、同等の適用になります。
- 家屋とともに取得した土地、家屋の新築前2年以内に取得した一定の土地、宅地建物取引業者との宅地分譲契約(契約締結後、3か月以内の家屋建築条件付きに限る)により取得した土地等も対象となります。 既存住宅の場合の場合は、上記表の備考欄※3~5を参照ください。
- 取得した日から6か月以内に居住を開始し、引き続き控除適用年の12月末日まで居住していること
減税額は前年度と比較すると減少傾向ですが、大切なことは減税された分をどう生かすかです。日常のこまごまとした消費に消えてしまってはもったいないことになります。仮に年間の控除額を25万円として13年間フルに控除されれば325万円となります。繰り上げ返済の資金、教育資金、老後の生活資金等、目的を定めてしっかり管理しましょう。
また今回の改正で、住宅取得資金の贈与の非課税特例額が大幅に削減されました。省エネ住宅等の良質な住宅は1,000万円、その他の住宅は500万円となります。それでもひと昔に比較すると額は大きいのですが、夫婦二人がそれぞれの親からフルに贈与を受ければ、即金で住まいが取得できそうだった数年前と比較すると小額な設定となりました。