よくビジネスシーンでも使われる醸成という言葉。会議資料で見たり、上司の話の中で聞いたりしたことがあるという人もいるでしょう。本記事では、この醸成という言葉について、2つの意味や、ビジネスシーンにおける使い方や例文などを紹介していきます。

  • 醸成とは?

    醸成の意味やビジネスシーンでの使い方などを解説します

醸成とは?

醸成には、「原料を発酵させて酒や調味料などをつくること」と、「考え方などが徐々に形成されること」の2つの意味があります。読み方は「じょうせい」です。

意味(1): 原料を発酵させること

醸成には、原料を発酵させて、酒やしょうゆ、みそなどをつくるという意味があります。

酒やしょうゆなどを原料からつくるという体験は日常的ではないため、この意味での「醸成」という言葉はなじみのない人が多いかもしれません。「醸成」の本来の意味はこちらになりますので、知識としておさえておきましょう。

意味(2): 考え方や雰囲気を徐々につくること

原料を発酵させて酒やしょうゆをつくるには、さまざまな製造工程があり、時間もかかります。この意味から転じて、醸成には「ある考え方や雰囲気などが、人々の間に時間をかけて徐々につくられていくこと」という意味もあります。

ビジネスシーンでは考え方や雰囲気などに使われる

ビジネスシーンでは、「考え方や雰囲気を徐々につくること」という意味での「醸成」という表現がよく使われます。

仕事をするうえでは、会社などの組織に所属して先輩や上司、同僚など仲間と一緒に働くことになります。組織における仲間意識や考え方などがつくられていくことをあらわす場合などに、この醸成という表現が使われます。

  • 醸成とは?

    ビジネスシーンでは、考え方や雰囲気が徐々に人々に広まるという意味での醸成がよく使われます

醸成の使い方や例文

醸成の使い方や例文を紹介します。

醸成する・醸成される

醸成は「醸成する」「醸成される」といった形での使い方があります。

【「醸成する」「醸成される」を使った例文】
・月1回の店長会議は、店長としての自覚を醸成していけるような会議にしたい
・このチームでは、みんなが自主的に課題解決に取り組む雰囲気が醸成されている
・新入社員に対して、プロ意識を醸成することを目的とした研修を行う

醸成を促す

考え方や雰囲気ができるように仕向けることを意味して、「醸成を促す」という表現も使われます。

【「醸成を促す」を使った例文】
・今日の会議では、社員の仲間意識の醸成を促すための方法を検討しよう
・この歴史的なできごとが、この街に独自文化の醸成を促した
・リーダー自らが率先して動くことにより、このチームの主体性の醸成が促された

醸成を図る

ある雰囲気や考え方などをつくるために工夫することを意味して「醸成を図る」という使い方もあります。

【「醸成を図る」を使った例文】
・人事部の新規プロジェクトとして、社員全員へ安全意識の醸成を図れるような研修動画の作成を実施する
・企画部では、社員同士の信頼関係の醸成を図る目的で、週に1回ミーティングを行っている
・この取り組みは職場の一体感の醸成を図るために、役立つかもしれない
  • 醸成の使い方や例文

    醸成を使った表現や例文で、実際にどのように使われているかのイメージをつかみましょう

醸成の類語

醸成の類語表現を解説します。

醸成の類語(1): 発酵させるという意味の類語

原料を発酵させて酒やしょうゆをつくる意味での醸成の類語には、「醸造(じょうぞう)」「吟醸(ぎんじょう)」があります。

醸造には、醸成と同じように「発酵作用を使って酒やしょうゆなどを製造すること」という意味があります。

吟醸は、「吟味(ぎんみ)した原材料を使って丁寧に醸造すること」という意味です。吟味とは、「念入りによく調べて選ぶこと」です。吟醸は、「吟醸酒」「大吟醸」などの表現で使われることがあります。

醸成の類語(2): 考え方や雰囲気をつくるという意味の類語

「人々の間に特定の雰囲気や考えをつくっていく」という意味での醸成の類語には、「惹起(じゃっき)」「涵養(かんよう)」などがあります。

惹起は「事件や問題などを引き起こすこと」という意味です。涵養は「(特定の能力や特性を)ゆっくりと養い育てていくこと」を意味します。

【「惹起」を使った例文】
・この事件が、紛争を惹起するきっかけになるかもしれない

【「涵養」を使った例文】
・この資料は、ものを大切に扱う精神の涵養を目指している

類語との使いわけ

惹起、涵養、醸成は、それぞれ使い方やニュアンスに違いがあります。

惹起は、悪いことやよくないことが起こる時に使われます。また、醸成に比べて、ある状態になるまでの時間が短いニュアンスがあります。

涵養は、いい意味の能力や意識に使われることが多く、「ネガティブな意見を涵養する」「反感を涵養する」といった使い方はしません。

醸成は「信頼を醸成する」「不安を醸成する」などいいもの悪いものどちらにも使われます。

  • 醸成の類語

    醸成の類語も覚えておくことで語彙力アップを目指しましょう

醸成の対義語

醸成の対義語を紹介します。

急ごしらえ

正式な形での醸成の対義語はありませんが、反対の意味を持つ言葉としては「急ごしらえ」があります。

急ごしらえは、「間にあわせるために、十分な時間をかけず急いでつくる」という意味です。ゆっくりと徐々に考えや雰囲気などをつくっていく醸成とは反対のニュアンスがあります。

  • 醸成の対義語

    反対の意味を持つ言葉も、ぜひ把握しておきましょう

醸成の英語表現

醸成の英語表現を紹介します。酒や調味料をつくることと、考えや雰囲気を徐々につくることの2つの意味、それぞれの英語表現を例文も交えて解説します。

ビールなどを醸造するという意味の英単語として「brew」があります。「brew」には、お茶やコーヒーを入れるという意味もあります。

【「brew」を使った英語表現の例】
・Edward said he was going to brew some beer this afternoon
 エドワードは午後からビールの醸造をする予定だといっていた

特定の考えや雰囲気をつくるという意味の英語表現には、「foster」などがあります。 「foster」にはさまざまな意味があり、「養育する、世話をする、育成する」といった意味があります。

【「foster」を使った英語表現の例】
・Foster a relationship of trust among all employees
 社員全員の信頼関係を醸成していこう
  • 醸成の英語表現

    英語表現も覚えておきましょう

醸成の意味や使い方を覚えておきましょう

醸成とは、原料を発酵させて酒やしょうゆなどをつくるという意味と、考え方やある状態を少しずつつくり出していくという2つの意味があります。

ビジネスシーンにおいては、後者の意味で、職場の雰囲気、やる気、信頼感などを醸成するといった形で用いられます。

ビジネスシーンでは使われることの多い言葉なので、意味や使い方をしっかり理解しておきましょう。