iDeCoやつみたてNISAは、資産形成をする上でぜひ利用したい制度ですが、やってはいけない「まずいこと」があります。どのようなことでしょうか。資産形成の失敗を避けるために、その内容と理由をお伝えします。

  • iDeCoとつみたてNISAで損をしないために

iDeCoとつみたてNISAとは

まずはiDeCoとつみたてNISAについて、今一度、制度内容をおさらいしましょう。まず、iDeCoは老後のための資産形成制度です。毎月積み立てをして、老後のための資金を作ります。基本的には60歳未満なら誰でも加入できますが(2022年5月からは国民年金被保険者であれば60歳以上でも加入可能)、積み立てられる金額は職業やお勤めの会社の制度によって異なります。最低の掛け金は、月5,000円です。掛け金は全額所得控除できるので、節税対策にもなり、加入者は増加しています。

つみたてNISAもiDeCoと同じように毎月積み立てをして資産形成をする制度です。投資信託で運用しながら資産形成をして、運用益が出ても税金はかからない税制優遇があります。iDeCoも同様に運用益に対して税金がかからないので、似ている部分が多いのですが、主な違いは以下の通りです。

iDeCoとつみたてNISAの違い

・iDeCoは掛け金を所得控除できるので、所得税や住民税を減らす効果があるが、つみたてNISAにはこの仕組みはない。

・iDeCoは60歳まで原則資産を引き出せないが、つみたてNISAはいつでも引き出せる。

・iDeCoの積立期間は60歳まで(2022年5月からは国民年金被保険者であれば60歳以上でも積み立て可能)だが、つみたてNISAは20年間。

・iDeCoの資産を引き出すときは、税法上、退職金や年金と同じ扱いになるため、税金がかかる場合がある

・iDeCoの運用商品には、保険や預金、投資信託があるが、つみたてNISAは投資信託のみ

その他にも違いはありますが、以上の点が大きな違いとしてあげられます。

iDeCoやつみたてNISAで気をつけたいこと

・すぐにつみたてを止めること

iDeCoもつみたてNISAも毎月コツコツ積立をするからこそ、資産を作ることができます。また運用にあたっては、過去の実績では、長期であればあるほど、利益は大きくなる傾向にあります。長期間、積み立てることになりますから、その間、様々な経済ショックがあるかもしれませんが、その際も積立を止めず、続けることが大切です。続けるからこそ、利益を大きくさせるチャンスがあること、資産形成には時間がかかることを覚えておきましょう。

・手数料がかかるから、積立は年1回にしている

これはiDeCoについて言えることですが、iDeCoは毎月手数料がかかります。金融機関によって手数料は異なりますが、最低でも月171円のコストがかかります。しかし、これは積立をした場合の話です。iDeCoは、毎月積立をしなくても、年1回以上、任意の月にまとめて積立することもできます。

この場合、積立しない月の手数料は66円になります。これを利用して、積立の回数を年1回にしている人がいますが、積立回数を年1回にして良いのは、運用を保険や預金等、元本確保型で行っている場合です。

投資信託で運用している場合、投資信託の価格は毎日変化しますから、毎月積立をすることで時間分散によるリスクを低減することにつながります。ところが、積立回数を年1回に減らしてしまうと、その効果がなくなってしまうのです。いくら手数料が安くなっても年間約1,000円です。投資信託で毎月積み立てをして、投資のリスクを減らすことのほうが大切です。

逆に、保険や預金で積立をしている場合は、年1回積立にしたほうが、コスト削減につながります。

・投資対象が日本に偏っている

投資信託を選ぶ際、私たちは日本に住んでいますから、馴染み深い日本をメインの投資対象として考えがちです。しかし、世界全体を見たとき、日本の名目GDPの割合は世界の約6%しかありません。世界における日本の経済規模が小さいことがわかります。世界経済がこれからも発展すると考えるなら、世界にも目を向けないともったいないですね。

・年末調整や確定申告で申告を忘れる

iDeCoは、積み立てたお金全額を所得控除できます。年末調整や確定申告で申告することで、所得税や住民税を少なくすることができますから、忘れずに申告しましょう。

・(番外編)引き出しができないからiDeCoをしない

60歳まで引き出しができないからiDeCoをしないと選択する人がいます。しかし、老後資金の積立は、そもそも生活資金の備えができていなければ行うことができません。

逆を言えば、生活費の備えができていれば、緊急事態が起こった際もその備えで対処できるため、60歳まで引き出しができなくても問題ありません。緊急事態時の備えの目安は生活費の6ヶ月~1年分です。この備えがあれば「引き出せないから」と言う理由でiDeCoをしないと決める必要はありません。

また、iDeCoの毎月の積立は月5,000円です。積立が苦しくなったら、積立を休むことができます。iDeCoは途中でやめられないからとiDeCoをしないのは、月5,000円の積立も厳しいことを表しますが、それはiDeCoの問題ではなく、家計に問題があるかもしれません。老後への備えができるよう家計改善をする必要があるでしょう。

「気をつけたいこと」をしていないか確認を

iDeCoやつみたてNISAで気をつけたいこと5つあげましたが、これは、実際、ファイナンシャルプランナーである筆者が遭遇したケースをあげています。自分は「気をつけたいこと」を行なっていないだろうか振り返ってみてください。そして、将来を明るくするためにiDeCoやつみたてNISAを上手に活用しましょう。