年末調整の時期になりました。iDeCoをしている人は、年末調整で税金が戻ってきますね。しかし、iDeCoをすることによって、税金がどの程度戻ってくるのかは分かりにくいものです。そこで、iDeCoと年末調整の仕組み、還付される税金の計算方法についてお伝えします。

  • iDeCoの還付金はいくら?

年末調整で税金が戻ってくる仕組み

年末調整と聞くと、税金が戻ってくるイメージを持っている人は多いと思いますが、そもそも年末調整とは、毎月給与から納めている年間の税額と、年間給与から計算した税額を比較して、過不足を精算する制度です。

年間給与の金額は12月にならないと分かりませんから、年末に精算を行うのですね。ちなみに、年末調整の対象となる税金は主に所得税です。住民税には年末調整の制度はありません。

ところで、年末調整をしていると「控除」という言葉をよく見ませんか。「控除」とは差し引くという意味ですが、多くの人がお金のかかる様々な事情を抱えています。例えば、大学生の子を養っていたり、生命保険料を払っていたり、シングル家庭だったり、このような個人的な事情を考慮して所得から一定の金額を差し引く仕組みが「控除」です。

支払った生命保険料を年末調整で申告する人は多いと思いますが、これは、生命保険料控除という「控除」を利用していることになります。

税金は控除後の所得をもとに計算されるため、控除が増えると所得は小さくなり、税金も少なくなる仕組みになっています。控除を使うと節税できる金額も増えるということですね。

iDeCoと年末調整

iDeCoをすると税金が戻ってくるのは、これまでお伝えした控除を使うからです。iDeCoの掛け金は、「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引くことができます。たとえば、毎月2万円を積み立てていたら年間の積立金は2万円×12カ月=24万円ですから、24万円全額を控除でき、その結果、24万円分の所得を減らせることになります。

では、所得が24万円減ると戻ってくる税金はいくらになるのでしょうか。これは人によって異なります。というより、所得税率によって異なります。所得税率が同じ人は、同じ金額の税金が戻ってきますが、自分の税率を知っている人は少数でしょう。そこで税率の確認方法をお伝えします。

税率の確認方法

まずは、お手元に源泉徴収票を準備してください。見るべき箇所は下記(1)と(2)です。

  • 出典:国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票」より筆者加工

    出典:国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票」より筆者加工

(1)は「給与所得控除後の金額」と書かれています。サラリーマンは仕事をするのに鞄や靴を買ったり、洋服をクリーニングに出したりすることでしょう。給与所得控除とは、それら仕事をする上で、支出したお金を必要経費として差し引くことができるシステムで、(1)はその必要経費を差し引いた後の金額です。

(2)には、先にお伝えした個人の事情にかかるお金の合計が記載されています。iDeCoの掛け金を含め、各種所得控除の額の合計です。税金は(1)―(2)に税率をかけて求められます。(1)―(2)の金額は「課税所得」と言いますが、税率は課税所得によって決まります。そこで(1)―(2)を計算して、自分の課税所得が下記の表「課税所得」のどこに該当するか確認してみてください。すると、自分の税率が分かるはずです。

  • 課税所得

    課税所得

税率が分かればiDeCoの年額の掛け金に、その税率をかけましょう。例えば、毎月2万円積み立てをしていて税率が5%なら、2万円×12カ月×5%=1万2,000円になり、この1万2,000円がiDeCoによって年末調整で戻ってくる税金です。掛け金に対して、かかった税金が全額戻ってくるので、このような掛け算の計算になります。ただし、収入状況やその他所得控除状況により、必ずしもこの計算通りの金額が戻ってこない場合もあります。

参考までに、年収と毎月2万円iDeCoを積み立てている場合に戻ってくる税金(節税額)を一覧にしました。ただし、使える所得控除は人によって異なり、その結果、税率も変わってきますから参考程度としてください。なお、住民税は年末調整で還付されませんが、住民税も節税できるので、下記表では所得税と住民税両方の節税額を表示しています。

  • 毎月2万円iDeCoを積み立てている場合、年収ごとの戻ってくる税金(節税額)一覧(筆者作成)

    毎月2万円iDeCoを積み立てている場合、年収ごとの戻ってくる税金(節税額)一覧(筆者作成)

*復興特別所得税は考慮していません。
*住民税は10%として計算しています。
*所得控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除、小規模企業共済等掛金控除のみ考慮しています。

たとえば、年収が500~600万円の人なら、iDeCoで毎月2万円積み立てると、4万8,000円節税できるということです。

iDeCoをすることで、戻ってくる税金がいくらか分かったでしょうか。iDeCoは60歳まで積み立てる制度ですから、これから何年も積み立てが続くと考えると、節税額が大きいことが分かります。

iDeCoの年末調整を忘れずに

iDeCoと年末調整の仕組みについてお伝えしましたが、iDeCoで税の還付を受けるには、年末調整を行わなくてはいけません。国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金控除証明書」の葉書が届いたら、「給与所得者の保険料控除申告書」という書類の「小規模企業共済等掛金控除」欄に忘れずに記載しましょう。自分の老後のために資産形成をすると、節税できるなんて嬉しいですね。

出典
国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票」