「殊勝」という言葉、正しく読めますか? 見たことはあっても日常的に使ったことはないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では殊勝という言葉の読み方や意味、由来などをくわしく紹介します。類語や対義語、英語表現などもいっしょに覚えて、理解を深めましょう。

  • 「殊勝」とは?

    「殊勝」の意味や使い方をご紹介します

殊勝とは

殊勝は「しゅしょう」と読みます。「行動や態度などが優れている、感心なさま」という意味で、褒め言葉に使われます。では殊勝という言葉をさらに深くみていきましょう。

殊勝の意味

殊勝には主に2つの意味があるとされています。

1.心がけや行動がけなげで感心なさま
2.もっともらしく神妙(しんみょう)なさま

このほかに、古典的な用法で「とりわけ優れているさま、格別であるさま」という意味もあります。「2」にある「神妙」とは「けなげで感心するさま、おとなしく素直なさま」という意味です。

殊勝は褒めるときに使う言葉で、本来誰かをけなしたり皮肉ったりする目的では使われません。「殊勝だね」などと声をかけられたなら、素直に「褒められている」と受け取りましょう。

殊勝の語源

殊勝はもともと仏教用語だったとされており、「殊(こと)に勝れていること」を意味しています。それでは「殊」と「勝」はどのような意味をもつ漢字なのでしょうか。

  • 殊に(ことに)…とりわけ、特別に
  • 勝…勝つ、勝る(まさる)、勝れる(すぐれる)

仏教において「勝れている」とは、能力の高さよりも、日々の行いが謙虚であり心がけがよいことを指しています。このため殊勝という言葉にも「けなげさ、神妙さ」という意味合いが含まれています。

古語辞典での「殊勝」

「殊勝」は、徒然草、奥の細道など、日本の古典の中でも使われています。古語辞典での殊勝の意味は以下の2つだとされています。

1.非常に優れている、格別であること
2.けなげなこと、感心なこと、神妙

  • 「殊勝」とは?

    「殊勝」は仏教用語が由来だとされています

殊勝の使い方

殊勝という言葉は褒め言葉として用いられます。具体的にどのように使うのでしょうか。

目上の人に対してはふさわしくない

まず使い方のマナーですが、殊勝は褒め言葉ではありますが目上の人に対して使うのは避けましょう。なぜなら殊勝は「けなげで感心なさま」という意味なので、目上の人に「感心だね」「けなげだね」とするのはおかしいからです。

ビジネスシーンでは後輩や同僚をねぎらうシーンなどで使うとよいでしょう。

殊勝の例文

殊勝な態度

殊勝な態度とは「けなげで感心するような態度」を指します。控え目だったりまじめだったりする態度とも言えます。

例文
・彼は殊勝な態度を心がけ、親を心配させまいとした
・嫌なことがあっても、殊勝な態度で接客をこなした

殊勝な心がけ

殊勝な心がけとは「謙虚で感心するような心がけ」を指しています。

例文
・殊勝な心がけが実を結び、彼は取り引きを許された
・殊勝な心がけでボランティアを続けている

殊勝な面持ち

面持ちとは、「感情が表れている顔つきや表情」という意味。そこで殊勝な面持ちとは、「おとなしく、素直な表情」を指しています。また、「内面を取り繕ってもっともらしくする」という意味も含まれます。殊勝な面持ちはほかに「殊勝顔(しゅしょうがお)」「殊勝面(しゅしょうづら)」とも言います。

例文
・彼女は上司の前で、殊勝な面持ちでかしこまった

殊勝な人

殊勝な人とは、「けなげで心がけが立派である人」を指します。

例文
・彼女はそこでおとなしく待つような殊勝な人ではない

  • 「殊勝」の使い方

    「殊勝」の使い方もマスターしておきましょう

殊勝の類語・言い換え表現

殊勝には、いくつか似たような意味をもつ言葉があります。殊勝という言葉をもう少しわかりやすい言葉に置き換えたいときは、以下の類語を参考にしてください。

健気(けなげ)

健気とは「心がけがよいさま」という意味です。とくに年少者や弱い立場の人が、よい心がけで努力しているさまを表すときに使います。

神妙(しんみょう)

神妙とは「心がけや行いが優れていて立派なこと、おとなしく素直なこと」という意味です。ただし現在は「おとなしく素直なこと」という意味で使われることが一般的です。

感心(かんしん)

感心とは「立派ですぐれたさまが心に深く感じること」という意味です。「その行動は感心できないね」としたり、「そんな愚かなことをするなんて感心だね」と皮肉めいて使ったりすることもあります。感心も殊勝と同じように、目上の人に対して使うのは避けましょう。

殊勝の対義語

次に、殊勝の対義語を紹介します。いずれも殊勝の「けなげで控え目なさま」とは反対の意味を表す言葉です。

傲岸(ごうがん)

傲岸とは「おごり高ぶっていること、いばっていること」という意味です。「傲岸な態度をとる」などと使います。四字熟語に「傲岸不遜(ごうがんふそん)」や「傲岸無礼(ごうがんぶれい)」があり、どちらも「いばり返って人を見下すさま」という意味です。

横柄(おうへい)

横柄とは「無礼、偉そうにして人を見下すさま」という意味です。「大柄(おおへい)」とする場合もあります。

  • 「殊勝」の類義語

    「殊勝」の類語や対義語を知り、理解を深めよう

殊勝の英語表現

「殊勝な」は英語で「admirable」「praiseworthy」「brave」「serious」などと訳します。「admirable」は「賞賛する、感心する」という意味の「admire」が元になっています。

例文
・He works with an admirable attitude.(彼は殊勝な態度で仕事に取り組む)
・It was praiseworthy to work to support his family.(彼の家族を支えるために働く姿は健気だ)
・She sat with a serious look.(彼女は神妙な面持ちで座った)

  • 「殊勝」の英語表現

    「殊勝」の英語表現も覚えておくと便利です

殊勝の読み方や意味を正しく知ろう

殊勝は「しゅしょう」と読み、「心がけや行いがけなげで感心なさま」という意味です。殊勝な面持ちとした場合は、「内面を取り繕ってもっともらしくしているさま」を指すことがあります。

褒め言葉として用いられますが、「けなげ」「感心」などの意味は目上の人に対して失礼に当たります。殊勝という言葉は同僚や後輩をねぎらうときに使うのがよいでしょう。