ネットの記事やテレビのニュース見ていると、「副業」にまつわる話を見聞きすることが増えてきました。書店では副業の本が平積みになって置かれるなど、その感心は高まる一方のようです。終身雇用時代は終わり、給与アップもなかなか実現しない…。将来の不安を抱く人が増えていることを思えば、当然のことかもしれません。

『副業は、自己PRがすべて。 「稼ぐ人」が実践する成功戦略』(プレジデント社)を上梓したばかりの戦略的PRコンサルタント・野呂エイシロウさんは、「モノやスキルを売るのも大切だけど、副業の成功は自己PRがカギを握る」。そして同時に、「好かれる人」であることも重要だと語ります。

ブログやSNSを使ってどう自分PRしていくべきなのか—。そのポイントを整理します。

■エッジを効かせるよりも、不特定多数の人からの信頼を得る

あなたはこれから副業をはじめようとしている、そのためにブログやSNSで自分をアピールしようとしている—。そう考えているのであれば、発信するブログやSNSは、プライベートと同じような内容であっていいはずがありません。

仕事で得意先に会うときにスーツを着て、相手を尊重し、敬語で話すのがあたりまえであるように、ブログやSNSもビジネスであることをわきまえて発信する必要があるからです。

それを前提に置くと、「本来の自分=地の自分」を丸出しにすることは避けたほうが賢明です。変にエッジを効かせるよりも、不特定多数の人に信頼され、好かれるように発信することが基本だからです。

そしてなにより大切なのは、「人に好かれる」ことです。人に好かれるためには、ブレることなく「いい人」であり続けてください。みなさんの会社でも、おしゃれで物静かな人、荒っぽいけど元気な人など様々な個性の人がいると思います。でも、その個性を好む人もいれば、苦手に感じる人もいます。結局、より不特定多数に好かれるのは「いい人」だと僕は思うのです。

ネガティブなことをいわず、いつも前向きで人あたりのいい人。自己管理ができてメンタルが安定していて、発言に心配りが感じられる人。そういう「いい人」がもっとも信頼され、好かれているのです。

■好かれる人になるための6のポイント

確かに時代はかなり変わってきていて、そんなにいい人でなくても副業で稼ぐ人はいるでしょう。でもやはり、個性を押しつけるより、まずは「いい人」の基盤ができていないとビジネスシーンでは信頼を得られません。だから、「いい人」になりましょう。自分のなかの目指す「いい人」のイメージを固め、マインドを整えて取り組むのです。

その指針がグダグダで、記事を書くごとにキャラクターがブレているようだと、人格が不安定な印象を与え信頼を損なってしまいます。そこで、具体的にどこに気をつければ読者に好かれ、ファンになってもらえるのかを、以下の6つのポイントにまとめました。

1.「好かれる人」はコンプレックスや失敗に向き合う
2.「好かれる人」はスマート過ぎる自慢話をしない
3.「好かれる人」は自分の経験を書く
4.「好かれる人」は読む人にとって有益な話を書く
5.「好かれる人」は「みんな」ではなく「あなた」に呼びかける
6.「好かれる人」は写真写りの印象がいい

ここでの6つのポイントは、ひとまずブログに特化した場合に想定した基本姿勢です。まずは、この6点を押さえて情報発信をはじめ、SNSなどにもエッセンスを入れていってほしいと思います。

■「好かれる人」はコンプレックスや失敗に向き合う

ここではすべて紹介し切れませんので、3つに絞って話をしてみます。まずは1.の、「好かれる人」はコンプレックスや失敗に向き合う、から。

僕は、作家の林真理子さんのエッセーを以前より好んで読んでいます。見た目のこと、性格のことなど、自分のコンプレックスをなんとかしたいと思って改善に取り組むのだけど失敗してしまう。その過程がクスッと笑えて、読んでいて心地いいのです。

男性である僕が、女性のコンプレックスを笑うというのは褒められた話ではないのですが、林さんが綴った文章からは、コンプレックスを堂々と晒し、ポジティブに向き合っていることが伝わってきます。だから読んでいてもつらい気持ちにならないし、「笑っていいのよ? そのために書いているのだから」といわれているようで、素直に楽しく読めるのです。

もちろん、この心地よさは林さんの作家としての文章表現力があってのことです。ですが、僕たちも自己PRとして表現をしていくうえで、学ぶべきことだと思います。コンプレックスや失敗というのは、率直にいえる人のほうが好感を持たれるということです。

自分の顔や体、性格、不得意なこと、劣等感など、コンプレックスというのは表現しようとしなくても、言葉や行動の節々から匂い出てしまうものです。よって、ブログでも動画でも、様々な自己表現を発信していくなかで、わかる人にはわかってしまいます。

これから自己PRによって、自分を晒していくのですから、事前に「自分のなかのコンプレックス」を洗い出してみましょう。人に隠さずいえるようなことなら、自分のパーソナリティを構成するパーツとして、どんなふうに人に共感してもらえる話し方ができるか考えてみてください。もちろん、他人にいうべきでないことまで無理して晒す必要はありません。

失敗談もコンプレックスと同様です。成功ばかりの人間なんてまずいないのですから、成功談ばかりを伝えているようでは、読者からすると腹を割って話してもらえている気がしません。

逆に、失敗談は人間味を感じ、共感しやすいのです。失敗談をベースに、教訓や役立つ情報を提供されると、読者はスムーズにそれを受け入れることができます。できれば、その失敗談が笑い話になっていると明るい気分で読めるので、なおいいでしょう。

そうはいっても、なんでもかんでも赤裸々に伝えればいいというわけではありません。どこまでなら笑い話にできるか、自分のなかで線引きをすることは大事です。

自己PRにおける情報発信というのは、見てくれる人のために行うものです。ですから、まずあなたができる限り腹を割ることが大切。「好かれる」ためには、完璧な人間を演じる必要などまったくなく、むしろその逆であるべきです。 

そのために、失敗やコンプレックスという共感されやすいネタを、どううまくコントロールして使っていけるかを考えていきましょう。

■「好かれる人」は読む人にとって有益な話を書く

繰り返しますが、自己PRにおける情報発信は、「読む人のための発信」であるべきです。あなたの自己満足や、承認欲求を満たすために書いていると、読者に簡単に見透かされます。つねに、読む人のメリットを意識して情報提供を行ってください。そこで4.の、「好かれる人」は読む人にとって有益な話を書く、というものを考えていきます。

メリットのひとつは「情報価値」です。読む人にあなたの体験を通じて新しい発見や視点を提供したり、悩みを解決できたり、追体験を味わってもらえたりする記事を書きましょう。

副業のために書くブログというのは、あなたの専門分野に関するノウハウをひととおりまとめるような場所であるべきですが、これはまさに、「読者の悩みを解決する」情報価値の提供になります。

あなたがなんらかのスポーツのコーチを副業とするのなら、初心者が押さえるべきテクニックや練習方法をブログで順を追ってまとめていけば、初心者にとってのバイブルとなります。また、営業職のスキルアップ支援を副業とするなら、あなたのノウハウをカテゴリごとにまとめたり、事例別にトークスクリプト(台本)をまとめたりするなど、価値ある情報を提供できます。

もちろんそれだけでなく、最新トレンドの紹介や自分のプレーヤーとしての経験を嚙み砕いて教訓化し、エピソードも語るなど、様々な情報価値の提供の仕方があるはずです。つねに、読み手にとってどんな価値を提供できるかを考えて発信することで、あなたのファンが確実に増えていきます。

また、読者に提供すべきもうひとつのメリットは、「気分を上げる」こと。「読むと元気になれる」「ポジティブな気分になる」という価値です。ときに笑いを入れたり、「ネガティブなことは書かない」「つねに読者を応援することを意識する」などしたりして、読者の気分をポジティブにするブログは、多くの人に愛されます。

いずれにせよ、「読者にとってどんな投稿をすることがよろこばれるか」を考えるサービス精神があってこそ、読者をファン化させることができます。ですから、「○○さん(著名人)の講演に行ってきました! やっぱり○○さんはすごいですね」といって一緒に撮った写真を載せても、それは読者にとってまったくメリットのない自己満足の投稿に過ぎません。

今日の食事の写真をブログでアップしているようでは情報価値の低い投稿です。それこそ、インスタグラムで投稿すればいいでしょう。

また、政治批判や宗教批判など、あなたの考えを述べ、それが示唆に富んだ内容であっても傷つく人がいたり、反感を覚える人がいたりする内容を語るのは、読者のことを考えているとは言い難い。政治であれ、経済や犯罪、社会問題であれ、なにかを非難して終わるようなブログを書くのはおすすめできません。単純に、暗い気分になるからです。

みなさんの自己PRの目的は、あくまでもファンづくりです。自己満足を捨て、自分の言葉一つひとつがつねに「誰かのためになる」「誰かを嫌な気分にさせない」ものになっているかを意識して発信を行ってください。その配慮の積み重ねが、あなたの人徳となります。

■「好かれる人」は「みんな」ではなく「あなた」に呼びかける

最後にお伝えすのは、5.「好かれる人」は「みんな」ではなく「あなた」に呼びかけるです。小手先のテクニックと思われるかもしれませんが、大多数の「みなさん」に語りかけるのか、多数のなかのひとり「あなた」に呼びかけるのか—。この言葉ひとつの使いわけで、メッセージの印象は大きく変わります。

身近な例でいえば、ショッピングモールの専門店の声出しです。店員さんが商品整理をしながら、お客さんを見もしないで「いらっしゃいませー、新作商品入荷中でーす」と声を出している限り、お客さんにとってその声はただの雑音に過ぎません。不特定多数に向けた言葉だからです。

でも、「新作商品入荷しました! ぜひご覧ください!」という掛け声がなんとなく気になって店舗を見ると、その店員さんが自分に向かって声をかけていて、ニコッと微笑んだらどうでしょうか? 「わたしに向かっていっていたんだ」と思ったら、ちょっと見てみようとなりますよね。

誰だって、「大勢のひとり」として扱われるより、自分自身が「個」として扱われるほうが「尊重されている」と感じますし、尊重されると相手に好意を感じるものです。ブログでは、実際に見に来た人それぞれに呼びかけることはできませんが、それでも読者を「個」として扱う意識は大切です。

その一端が、「みなさん」と「あなた」の使いわけです。そして、投稿する記事の内容も回ごとに「どんな人に向けて書くのか」のイメージを深めましょう。

ターゲットのイメージや、悩んでいることのイメージを深めることで、書くべきことが具体的に見えてきますし、「こんなことに悩んでいる人もいるのではないでしょうか?」と例示することで、読者もまた親近感を持って読むことができるはずです。

※今コラムは、『副業は、自己PRがすべて。 「稼ぐ人」が実践する成功戦略』(プレジデント社)より抜粋し構成したものです

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 写真/石塚雅人